特定非営利活動法人

HOME > 「食」のトピックス > 医食同源~飽食から選食の時代へ

2024.9.30医食同源~飽食から選食の時代へ第23回ダイエット&ビューティーフェア

2024年9月30日(月)〜10月2日(水)、東京ビッグサイトにて第23回ダイエット&ビューティーフェアが開催された。今年は「働く女性の美と健康を応援する」をメインテーマに、美容や健康に関係する企業や関係者2万人以上のプロフェッショナルが国内外から集結した。

順天堂大学泌尿器科 教授 / 日本抗加齢協会 理事長 堀江 重郎

世界では肥満と食品ロスという矛盾する課題を抱えているが、この2つの問題を解消するために「選食」という概念を提唱していきたいと堀江氏。「選食」とは「自分にとって本当に必要な食品の量と質をじっくり吟味して摂取していく」ということで、1食1食「何を食べるか」を真剣に考えていくことだ。

また、健康を考慮するならば「お腹いっぱい」ではなく「腹八分目」を守るのも大切だと堀江氏。近年は食品が持つ機能性も次々と解明されているので特に腸内細菌を意識した「食事」を「選食」するのが望ましい、と話す。人間の腸内細菌は脳と同じくらいの重さがあり、腸内環境の状態が健康を左右することもよく知られるようになっている。糖尿病やうつ病などが腸内環境と関係していることは言うまでもないが、近年はがんの治療において腸内環境の状態が良い人の方が治療効果が高いというデータもあり、病気の予防だけでなく治療にも腸内環境が関係していることが示唆されていると指摘。腸内細菌に良い代表的な食材としては「プレバイオティクス」「プロバイオティクス」「ポリフェノール」などがあり、食品としてはダークチョコレート、玉ねぎ、ブルーベリー、スパイス、ワイン、緑茶、キムチや漬物、納豆などの発酵食品がある。

また、最近の腸内細菌研究では、日本人の腸内細菌はどちらかといえばオーストリアなどのヨーロッパの人と類似傾向にあるが、同じアジア人である中国人の腸内細菌はアメリカ人と類似傾向にあることがわかってきていて、これは食品添加物の摂取量に左右されるのではないか、という研究もあるという。近年は長寿地域を「ブルーゾーン」と呼ぶが、その一つに京丹後市がある。この京丹後市の百寿者の人たちの腸内細菌を調べたところ「酪酸菌(特にファーミキューテス門)」を多く持っていることが特徴であることがわかってきている。酪酸菌は腸内で酪酸菌が水溶性の食物繊維を発酵して作った短鎖脂肪酸であるが、この短鎖脂肪酸が有害物質を作りだす腸内の悪玉菌の増殖を抑え、腸内環境を整え、蠕動運動を促し、肥満の予防や免疫力の向上などにも働いているという。 腸内細菌を整える食事を「選食」することに加えて大切なことが「腹八分目」であることに間違いはなさそうだ、と堀江氏。カロリー制限をしたアカゲザルが、カロリー制限していないサルに比べて老化の進み具合が遅くなる試験についてはよく知られている通りであるが、カロリー制限をさせたサルは老化の速度が遅くなるだけでなくさまざまな疾患のリスクが大幅に下がることにも注目が集まっている。実際、私たち人間も16時間、24時間、48時間、最長で72時間程度の絶食(ファスティング)をすることで腸内では善玉菌が増えて、体内の炎症が低下することがわかってきているという。食事の中でも炭水化物や糖を摂取すると、体内で活性酸素が多く発生してしまうが、ファスティングをすると体内で脂肪が分解されケトン体ができ、これが抗酸化作用を発揮する。また食事を摂るとインスリンが放出されるが、インスリンも老化と関係しており、体内にはインスリンが少ない方が良いことがわかってきている。さらに、ファスティングをすることでテロメアが伸びることもわかってきているという。テロメアとは染色体DMAの両端でファスティングを定期的にすることでテロメアが伸び、体のさまざまな部位でも若返りがみられるという。いずれにせよ、定期的なファスティングによってインスリンを抑制し、ケトン体で活性酸素を除去し、テロメアを保護あるいは伸長させることで、体内のさまざまな炎症が修復・抑制されることは、健康長寿に有効である可能性が高いと堀江氏。

そして今、老化のスピードを計る世界共通の「時計」を作ることに世界的な注目が集まっているという。骨年齢、血管年齢などはすでによく知られているが、これからは遺伝子を使って「老化度」や「老化の速度」を測定する時代になるのではないかと堀江氏は解説。昨年の12月、米国に世界中の老化研究の学者が集まり、「エピジェネティック・クロック(生物学的年齢)」を導き出すための研究報告がなされたという。「エピジェネティック・クロック」とは「DNAのメチル化」を調べることで相関関係にある「生物学的年齢」を予測する指標で、これを世界的に標準化する動きが進んでいるという。DNAのメチル化によって年齢を計算する手法は、精度が非常に高く他の指標を凌駕するとされ、最新の研究で生物学的年齢を測定する最も有望な方法だとされている。腸内細菌を整える食事や機能性成分、ファスティング、運動などさまざまな手法によって若返りや老化の抑制が求められているが、本当に効果があるのか、あるいは自分にはどれが効果的なのかを知るためにも「エピジェネティック・クロック」を使うことができる。またこの「エピジェネティック・クロック」が進化した先には「あと何年生きられるか」の予測もできるようになるだろう。しかし現時点で私たちができるアンチエイジングは「選食」であることに間違いなさそうだ。何を、いつ、どれくらいの量を食べるか、食べないか。一人一人が意識して「選食」することで誰でもアンチエイジングができるはずだとまとめた。

最近の投稿

「食」のトピックス 2024.9.30

糖化は老化!糖化ストレス研究最前線2024〜糖化のトリセツ

「食」のトピックス 2024.9.30

医食同源~飽食から選食の時代へ

「食」のトピックス 2024.9.24

腸から考えるウェルビーイングを実現するための食事

「食」のトピックス 2024.8.19

機能性表示安全性シンポジウム

「食」のトピックス 2024.8.9

希少糖アルロースを利用した楽しさ溢れる食生活

カテゴリー

ページトップへ