
2025年2月26日(水)〜28日(金)、東京ビッグサイトにて「健康博覧会2025」が開催された。今年で43年目を迎える国内のヘルスケア展示会で最長の歴史を誇る「健康博覧会」。今年も健康食品やサプリメントに加え、ウェルネス、リカバリー、フェムテックだけでなくメンテックといった新たなカテゴリーも登場し、約500社の出展と約4万人の来場者で賑わいを見せた。ここでは出展社プレゼンテーションから「健康食品市場の動向」を取り上げる。
健康産業新聞編集部 記者 長谷川光司
昨年の健康食品業界のビックニュースとして「紅麹問題」やそれに伴う「機能性表示食品制度の改正」、そして「市場規模の5%減少」「大量の機能性表示食品の撤回」が挙げられる。昨年(2024年)、健康食品市場規模は1兆2500億円(前年比5%減)となり、基本的にはこれまで右肩上がりだった健康食品市場(2006年のアガリクスショックを除く)が、コロナの収束や紅麹問題の影響を受けて、売り上げを減少させた、と分析される。販売チャネル別に分析すると訪問販売や通信販売が減少した一方、ドラッグストアでの売上は好調でこちらは初めて3000億円を突破した。これはドラッグストアの店舗数増加やインバウンド需要復活による恩恵だと言える。法務省の家計調査でも健康食品の支出は伸び悩んでおり、全世帯で減少傾向が見られ、一人当たりの月間支出は995円となっており、この10年は1000円を超えていたことを考えると大きく下がっている。国内の健康食品人気成分としては「乳酸菌、NMN、プロテイン」が挙げられる。他にも植物発酵エキス、青汁、アミノ酸、ビタミン、プラセンタが人気を集めており、このトレンドは今年も維持されるのではないかと予測。昨年は424品の新商品が発売され、そのうち4割が機能性表示食品として認定された。しかし2023年と比較する50%以上減少しており、これは紅麹問題によって開発や製造が業界全体で鈍化したためだと考えられる。
行政動向
2024年8月に行われた制度改正は、紅麹問題を受けて機能性表示食品の信頼性を高めることを目的としたものであった。改正により機能性表示食品の届出ハードルは高くなり、企業の負担増加が見込まれる。改正によって健康被害情報の提供が義務化され、因果関係を否定できないものや不明なものも含めて、健康被害に関する情報は即報告が求められるようになった。特に被害が重篤な場合は1例でも、重篤には至らなくても同じ所見の症例が2件発生した場合には30日以内に、速やかな情報提供が義務付けられた。
サプリメント形状に関するGMP要件も2026年8月までに義務化され、サプリメント剤型の機能性表示食品はGMPに基づく製造管理が必要になる。包装・パッケージについても、新指針に従った対応が求められ、特に紅麹問題で話題となった微生物原料に関する指針も含まれているため、関係業者は対応に追われている。また、届出後の自己点検と評価も求められるようになった。新規成分の届出については「120日ルール」が適用される可能性があり、これまでに届出がない新規成分や新たな組み合わせの届出には、医薬品との相互作用や関与成分同士の相互作用などの審査が必要であり、受理までの時間を要すると発表された。今回の改正とは別に、昨年はステルスマーケティング(ステマ)規制に基づく措置命令が複数件あり、広告に関する規制も強化された。特に「No.1表示」については、明確な合理的根拠が必要となった。
海外動向
米国ではキノコサプリが人気上昇中で、日本ではキノコ類の食経験が豊富なため、キノコを利用した日本食やキノコ原料の健康食品の海外需要が高まりそうだと解説。特にキノコサプリメントやキノコのドライフードは、若い世代の間で「ムードフード(感情に寄り添う食品)」として人気があるという。また、タイやベトナムでも日本企業の存在感が増している。ただし、ベトナムでは肥満者が極端に少ないため、メタボ関連の需要はほとんどなく、プロテインやコラーゲン、乳酸菌関連の人気が高いという。世界的にはマルチビタミンや海藻の人気が安定しており、日本企業が海藻市場で躍進する可能性も十分にあるとした。また、米国の健康関連展示会「ナチュラルプロダクツエキスポウエスト」では、2019年には140社以上あったCBD企業が、今回は数えるほどになり、トレンドの変化が見られた。CBDの人気が今後さらに拡大するかは不透明だ。米国ではサプリメントのグミ化が定着しており、カプセルタイプよりもグミタイプの方が嗜好性が高いのがトレンドになっている。ただし、日本のグミほど美味しくはないため、この点が日本企業の成長の鍵となる可能性がある。
その他
紅麹問題や制度改正の影響を受け、機能性表示食品の受理数は停滞している一方で、撤回は増加している。昨年の届出総数は9216件、撤回は2543件であった。届出のヘルスクレームは相変わらず脂肪系表示(中性脂肪、内臓脂肪、BMIなど)が人気で、GABAが最も人気の成分であることに変わりはない。特にGABAは「睡眠と肌」「血圧と睡眠」などダブルクレームが可能である点が魅力と説明。企業がこぞって取りに行きたいと考えていた「免疫系」については現在4社によって受理が成立していて、それぞれ堅調に売り上げを伸ばしているため、やはり「免疫系」は今後も注目して欲しいという。 世界のサプリメント市場では、日本は米国・中国・西ヨーロッパ・ラテンアメリカ・インドに続く第6位で、サプリメントの輸出額も2年連続マイナスになっている。サプリメントの個人消費(国内)も減少しているが、これは野菜や果物の消費減少と同様で、サプリメントの需要が低下というよりは、消費者の節約思考や物価上昇による家計の圧迫が原因ではないか、と分析された。