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2025.5.16花粉症対策のカギは短鎖脂肪酸?! 腸からはじめる花粉症対策医療社団法人こころとからだの元気プラザ主催セミナー

2025年3月17日(月)、医療社団法人こころとからだの元気プラザが主催するオンラインセミナー「花粉症対策のカギは短鎖脂肪酸?! 腸からはじめる花粉症対策」が開催された。腸内環境を整えることで花粉症を軽減する可能性があることがわかってきている。本セミナーでは株式会社サイキンソーの管理栄養士から、腸内フローラと花粉症の改善に関する最新情報が報告された。


日本人の3人に1人は花粉症とされる現代。目のかゆみ、くしゃみ、鼻水、鼻が詰まることにより仕事の効率が低下し、外出が制限されるなど生活の質が著しく低下する。近年は花粉症きっかけの皮膚炎や口腔アレルギーなども報告されている。花粉症とは本来無害な花粉に対して過剰に免疫反応している状態であるが、この免疫を適切に保つことが花粉症の予防にもつながると考えられる。ただ免疫には個人差があり、また体調や年齢、環境などによっても変化し、日々上がったり下がったりしているものだ。免疫は上がりすぎるのも下がりすぎるのも問題でバランスが大切であるが、この免疫は腸内環境と密接に関係していることがわかってきた。腸は食べ物を消化吸収する役割以外に、免疫を司る臓器でもあり、腸には全身の細胞の約7割が集中している。笑うことで活発になるナチュラルキラー細胞や、特に小腸に存在するパイエル板の中では、体内に侵入した細菌などの異物を食べるマクロファージなど、複数の免疫細胞が連携して外部からの攻撃に備えている。そして免疫機能の調整には、腸内細菌が作り出す短鎖脂肪酸が関連していることがわかってきている。短鎖脂肪酸とは腸内細菌が作り出す代謝物の1つで、酢酸、酪酸、プロピオン酸など鎖の短い脂肪酸を総称したものだ。腸活で求められる効果の多くがこの短鎖脂肪酸の効果であり、具体的な短鎖脂肪酸の働きとして、例えば排便を促す、消化吸収を助ける、蠕動運動を亢進させる、消化吸収を促す、腸の炎症を抑える、感染症を予防する、また腸のバリア機能を高めるといった役割があることから「天然の万能薬」という異名を持つ。


さらに、短鎖脂肪酸は免疫細胞の中のT細胞に働きかけることで、免疫の調整を行い、アレルギーを抑える働きがあることも解明されている。花粉症軽減と短鎖脂肪酸の先行研究では、短鎖脂肪酸の一種である酢酸を作り出すビフィズス菌を含む粉末を摂取した群とプラセボを摂取する群の症状比較と血中マーカーの数値比較を実施。ビフィズス菌摂取群は、くしゃみ、鼻水などの症状緩和が報告されている。つまり、ビフィズス菌の摂取により腸内では酢酸や短鎖脂肪酸多く産生され、アレルギーが抑制された可能性があるのだ。

腸は消化器官としてだけでなく、免疫器官としても重要であるが、腸は全身と関与する影響力の大きな臓器だ。そしてその影響力の秘密は、腸内に棲み着いている菌たち=腸内フローラにある。人は常に菌と共存共生している。口腔内には約100億個、皮膚で約1兆個、そして大腸には100兆個もの菌が棲息している。腸内フローラ(腸内細菌)の重さは1.5キロとも推計され、一つの臓器に匹敵しているといっても過言ではない。私たちが食べる食事の一部分、例えば食物繊維やオリゴ糖など、人が消化できないものはそのまま腸まで届き腸内細菌の餌となり、短鎖脂肪酸などの代謝物を作り出す。この代謝物は腸管から吸収されて全身に巡ることも解明され、それぞれの臓器で効果を発揮することが解明されている。

腸内フローラを健全に保つためにできることがいわゆる「腸活」であるが、ビフィズス菌などのプロバイオティクスやオリゴ糖などのプレバイオティクスを摂取するだけでなく、さまざまな食品を摂取することが効果的であることがわかってきている。他にもストレスを減らす、十分な睡眠時間を確保する、適度な運動を継続する、薬は適度に、といったことは腸活として重要だ。近年は自分の腸内フローラの様子を検査で確認することができるが、最も簡単なセルフチェックは日々の便のチェックだ。1日1〜2回程度、表面がなめらかで臭いが強くなくて痛みのない便が出ていれば、腸内フローラは概ね良好と考えて良いだろう。以前は腸内細菌を善玉菌、悪玉菌、日和見菌と菌をカテゴライズし、それぞれ適切な割合があると考えられてきたが、現在は研究が進み、悪い菌も一概には悪いとは言えず、多様性を担うためにはさまざまな菌が棲息している方が良い、多様性のある腸内フローラこそ望ましいと考えられている。万一、ビフィズス菌のような善玉菌しか腸内に棲息していなかった場合、代謝物をリレーすることができず全身に良い影響を与えることができないこともわかってきている。 腸内細菌叢の多様性を増やすために、偏食はやめて多品目の食材を摂取する必要がある。菌は自分で食べ物を探しに行くことができず、それぞれの菌の餌は異なるので、私たち人間がいろいろなものを食べる必要があるのだ。また、外から摂取した菌は体内で定着しないので、継続的に摂取する必要もある。最新の「腸活」とは多様性のある腸内フローラを育てることであり、そのためには食品からだけでなく、生活面からのアプローチも必要で、これらを生涯続けていくことだ。その結果として花粉症などのアレルギー症状の軽減につながる、とまとめた。

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