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2026.1.30利用の少ない雑豆を新規食素材として発掘

2025年11月26日(水)〜28日(金)、東京ビッグサイトにてウェルネスフードジャパン2025が開催された。ウェルネスフードジャパンは、健康食品・機能性食品・サステナブルフード・サプリメントなど健康食品・素材を持つ企業が世界中より出展する日本最大級の展示会で、健康食品や機能性食品素材業界関係者などが全国より3日間で4万人以上来場し、熱心な商談や意見交換、最新動向の調査などが行われた。ここでは「利用の少ない雑豆を新規食素材として発掘」することをテーマに研究を重ねる龍谷大学の西澤果穂氏の講演を取り上げる。

龍谷大学農学部食品栄養学科 講師 西澤果穂

植物性食品へのニーズが世界的に高まっている。特に豆であれば食物繊維が豊富で、ビタミンやミネラルの含有量が多く、穀類の中でもタンパク質含有量が多いなど、利点が多い。しかし豆類の中でも大豆のみに食料供給が偏るリスクが増大している。大豆や落花生を除く豆類の総称を「雑豆(ざっとう)」というが、これらは大豆に比べて研究実績が少なく、加工方法も不明な部分が多いため、加工特性に優れた食品素材として使われない現状がある。植物性食品、特に大豆であれば生活習慣病や発がんリスクの低下などの報告もなされており、植物性食品の積極的な摂取の重要性が再認識されているが、それゆえ植物性食品の供給源が大豆ばかりになっている。現在、大豆は植物性食品として非常に多く利用されているが、近年の異常気象や気候変動により生産量が不安定化し、さらにバイオ燃料など油としての利用も増加。このため、将来的に大豆製品が品薄になったり、価格が高騰したりする可能性が懸念されており、新たな植物性食品素材、すなわち雑豆の活用が急務となっている、と西澤氏。

未利用資源「ナタマメ」の可能性と課題

数ある雑豆の中から、西澤氏が特に研究を進めているのがナタマメである。ナタマメはアジア原産のマメ科植物であり、栄養学的にはタンパク質を25.5%、脂質を3.3%、炭水化物を61.8%含む。豆類は植物性食品の中でも比較的タンパク質が豊富な点が特徴である。農業的にも高温地域での作付けが良好であり、害虫や病害に強く、単位面積あたりの収穫量も大豆に匹敵する利点がある。ナタマメの現在の利用例としては、古くから漢方薬として用いられてきた背景もあり、花粉症対策としてのナタマメ茶や、口臭予防・抗菌作用を活かした歯磨き粉、そして若いサヤが福神漬けの具材として利用されている。しかし、ナタマメの肝心な種子(豆の部分)は、加工食品に利用された例がほとんどないのが現状である。これは、ナタマメに関する研究報告が乏しく、どのように加工すれば良いのか、また加工によってどのような特性が現れるのかが不明確であったためであるという。

そこで西澤氏はナタマメを食品素材として活用するため、種子から食素材となりうる成分を抽出し、その物理化学的特性の解明に取り組んだことを報告。ナタマメの乾燥豆を水戻しし、破砕液を作成し、加熱のタイミングを変えた抽出液を作成して分析した。まず、タンパク質を多く含む抽出液を用いて、その加工特性を調べた。加熱処理の実験では、90℃以上の加熱によってタンパク質のほとんどが凝集し、沈殿するという特性が確認された。さらに、豆腐作りに用いられる塩化マグネシウム(苦汁)を加えた実験では、特定のタンパク質が凝集・沈殿することが判明した。そのタンパク質の解析を行った結果、それはナタマメの主要な貯蔵タンパク質であるカナバリンであることが特定された。さらに、このカナバリンの構成をアミノ酸配列から調べたところ、筋肉量の維持・増進に役立つロイシンが多量に含まれていることが計算上明らかになった。そのロイシン含量は、大豆タンパク質と比較して約1.5倍も高く、高付加価値の機能性素材として期待される。そして、このカナバリンが、塩化マグネシウムの濃度の違いによって、水に溶けなくなる不溶化(沈殿)と、再び溶け出す可溶化(溶解)を繰り返す特異な性質を持つこともわかったという。この性質を応用することで、安全性の高い塩化マグネシウムのみを用い、複雑な溶媒を必要とせず、簡易かつ安価な方法で、高純度のカナバリンを精製できる可能性が示された。この特性は筋力増進などの素材の実用化に大きく貢献する可能性がある、と西澤氏。

次に、抽出液を冷蔵保存した際に白濁してゲル化するという現象が確認された。このゲル化物質の温度特性を調べたところ、10℃以下に冷却することでゲル化が起こり、一度固まったゲルは、65℃以上に加熱しない限り溶けないという特性を持つことが明らかになった。この特性は、ゼラチンや寒天などと同様の機能を示すものであり、このナタマメ由来の物質は植物性であるため、植物性ゲル化剤として加工食品への利用が可能であると西澤氏。ゲル化物質の主成分はデンプンであることも判明しているが、市販のデンプンだけではこのような特有の温度特性を示さないことから、デンプンとナタマメ由来の他の成分との複雑な相互作用によってこの特性が発現していると考えられている。

現在、これらの基礎研究で明らかになったナタマメの特性、すなわちタンパク質の熱凝集性、ロイシンが豊富なカナバリンの簡易精製法、そして植物性ゲル化剤としての可能性を活かし、ナタマメを用いた新たな植物性食品素材の開発と実用化を目指しているという。また、ナタマメそのものの実用化に向けたその他の取り組みとして、大豆以外の雑豆を用いた味噌や醤油の製造試験も実施。小豆、いんげん豆、レンズ豆など様々な豆で味噌を試作した結果、大豆以外の豆でも味噌は製造可能であるという可能性は示された。しかし、特にナタマメを用いた味噌は、発酵を経ても青臭さが非常に強く残ってしまい「美味しくない」という結果に至ったそうである。

この強い青臭さの除去こそが、ナタマメを食品として広く普及させる上での最大の課題であると同氏は認識している。西澤氏は、この課題を乗り越え、健康に良く、そして美味しい食品の開発を目指していると話す。ナタマメ研究で得られた知見を、将来的な食料危機への対策や、健康志向の高まりに対応する新たな植物性食品素材開発に役立てたいとまとめた。

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