2019年9月14日(土)、有楽町朝日ホールにて「第21回ダノン健康栄養フォーラム」が開催された。この中から、清野 富久江氏(厚生労働省 健康局健康課栄養指導室 室長)の講演「これからの管理栄養士への期待~日本人の食事摂取基準(2020版)を踏まえて」を取り上げる。
2025年、団塊の世代が75歳以上に
少子高齢化が進む中、健康寿命の延伸に向け、疾病の予防、身体機能や生活の質(QOL)の維持のために、日々の食生活や栄養をどうするかが重要、と清野氏。
2025年には、団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となる。2042年には、団塊ジュニア世代が高齢者となり、国の働き手が激減する。
このあたりが日本のターニングポイントとなることが推測される。また、世界からも日本がこの問題にどう対応していくかが注目されている。
2025年に起こると予測されている課題の一つが、在宅医療と在宅介護を受ける人の増加。在宅医療は現在の1.7倍、在宅介護を受ける人は1.4倍に増える。
高齢者のフレイルと低栄養対策を推進
どのような介護を受けるにしても、誰もが「自分らしい暮らし」を最後まで望む。その実現は、国や自治体、医療や介護の専門家、家族のサポートによって叶う。
特に栄養や食生活の視点から寄り添い支えることが、管理栄養士に求められる。国も「高齢者のフレイル対策」と「低栄養対策」の推進をはじめている。
こうした中、昨年4月より「2020年版の食事摂取基準」の検討が策定検討会により行われている。
ナトリウムやタンパク質の量の見直し
「食事摂取基準」は日本人の1日に必要なエネルギーや栄養素量を示した基準であり、5年に1度改訂される。2020年版は2024年まで使用される。
2020年版は、前回の2015年版をベースに、「社会生活を営むために必要な機能の維持及び向上」を策定方針とし、これまでの生活習慣病の予防・重症化の予防に加え、高齢者の低栄養やフレイル防止を視野に検討がなされている。
例えば、生活習慣病の予防や重症化予防を目的にナトリウム量を引き下げ、コレステロール量を新たに記載、フレイル予防では高齢者のタンパク質の目標量を見直している。
高齢者を「65~74歳」「75歳以上」に2区分
改訂版の検討で重視した3つの点が以下。
- 高齢化社会の進展を踏まえ、高齢者の低栄養改善、フレイル予防の目標量を設定。より細かな年齢区分で、高齢者を「65~74歳」「75歳以上」に2区分する。
- 科学的根拠に基づいた作成をさらに強化、記載の透明化、エビデンスレベルの記載(目標量)を行う。
- 栄養サミットの開催にあわせて日本の政策を海外に積極的に発信する。
2020年、国際的な栄養学会が相次ぐ
来年は東京オリンピックが開催されるが、その直後に「栄養サミット」「国際栄養学会議」「アジア栄養士会」など国際的な栄養学会の開催が予定されている。
そこで日本の栄養と食糧に対する取り組みが国際的にも注目されることが予測される。2020年版の食事摂取基準も、各国際会議で活用できるようなものにしたい、と清野氏。
2018年には診療報酬・介護報酬が改定、「地域包括エアシステム」の構築・推進を目標としている。
栄養の専門職である管理栄養士にはこのプログラムに協力し、医療・介護の現場だけでなく、保育所・公立学校などあらゆる現場で、個人の生活の視点を踏まえたきめ細かな栄養指導や対応を行うことが求められている。
これからの栄養士には、異業種との連携能力、栄養の専門職としてエビデンスを基に、より論理的かつ効率的に栄養課題を解決するスキルがより一層強く求められる、と清野氏はまとめた。