2019年12月17日(火)、日本OTC医薬品協会にて「令和元年度 機能性食品勉強会」が開催された。この中から、蒲生恵美氏(公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会専門委員会)の講演「トクホ・機能性表示食品の広告について~消費者生活者視点から」を取り上げる。
機能性表示食品の広告のあり方
蒲生氏はさまざまな広告審議会に参加しており、消費者にとって望ましい広告のあり方について検討を重ねる立場にある。
機能性表示食品に求められる役割の一つに、健康と疾病の境界域にいる人が機能性表示食品をきっかけに、日々の生活を質の高い「食事・運動・休養サイクル」に戻していく、ということがある。そのため、商品と運動を絡めたキャンペーン広告などは良い広告。
また、機能性表示食品の最大のポイントは「根拠(エビデンス)」があること。そのため、「ある限定的な人に効果が期待できる」ことをもっと浸透させるべきで、そうした広告も良いと解説。
消費者が「商品を正しく理解」でき、必要な量を、必要な期間摂取できるようにするのが一番望ましい機能性表示食品の広告のあり方だと述べた。
機能性表示食品の事後チェック指針
機能性表示食品の広告に関わる最新動向では、今年6月21日の「規制改革実施計画」に基づき「機能性表示食品の事後チェック指針」が成立する方向で動いている。
これは制度を利用する事業者や広告審議委員会が、制度の運用改善に向けて景表法の執行方針の明確化、広告が適法か否かの予見性や規制の透明性を高めるためのガイドラインの作成、公表などを消費者庁に求めたことが背景にある。
特に広告が違法となった場合、景表法が執行されると企業ダメージが大きい。そのため、法を執行する際のガイドラインを明確化することがここ数年強く求められてきた。
消費者視点の不在が問題
また、消費者庁食品表示企画課と同庁標示対策課が連携強化を進めることで「事後チェックの透明性向上に関わるガイドライン」が実現する。
しかし、現在検討されている「事後チェック指針」は消費者視点が不在であることが問題で、これについては引き続き検討が必要だと蒲生氏は指摘。
今後は特に健康食品の広告に関する消費者庁・事業者・消費者の「共同研究会」が立ち上がることが望ましいとした。
「機能性表示食品の事後チェック指針」が運用されると、機能性表示食品の広告の違反で注意すべきガイドラインは「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」と「健康食品に関する景表法、健康増進法、薬機法の留意事項」に「事後チェック」が加わる。
そのため、広告表現が今より難解にならないよう工夫と努力とスキルが事業者側に求められる。
トクホと機能性表示食品の違い
健康食品全般の広告審議については「トクホ・機能性表示食品の広告審査会」として、現在、(公財)日本健康・栄養食品協会が行っている。
トクホと機能性表示食品では審査の範囲や表現範囲など幾つか違いがあり、消費者目線で考えると、双方のすり合わせを行うことが必要となる。
というのも、一般的にトクホと機能性表示食品の制度の違いを理解して活用している消費者はいない。
関与成分が同じで訴求する保健用途や機能性が同じなら、適正広告のガイドラインも揃えなければ広告表現がバラバラになり、消費者には分かりにくいものになってしまう、と蒲生氏は指摘。
例えば、トクホでは「ヒト試験」という言葉を使うのに対し、機能性表示食品では「臨床試験」という言葉を使用している。
しかし言葉のインパクトは「臨床試験」の方が一般的には大きい。どちらがよりエビデンスが高いのか、誤解を招く原因になる、と蒲生氏。
広告ガイドラインのすり合わせが必要
またトクホでは15秒や30秒という短いTVCMでグラフを使用した表現は控えるようにガイドラインで示されている。
しかし、機能性表示食品ではそれがないため、短いTVCMでも実際はほぼ読むことができないのにグラフが使用されていたりする。
さらに機能性表示食品では審査の対象にWEBが含まれているが、トクホはTVCMまででWEBは含まれていない。この辺りは、特に同一成分の場合、広告のガイドラインをすり合わせていく必要があるのではないか、と蒲生氏。
消費者目線で考えると、機能性表示食品の広告に多い「○○が気になる方へ」という表現は病者も含まれ、適切とは言えないのではないか、という声も増えている。
消費者が正しく理解できる適正広告を
また、届け出内容は伝えるべきだが、情報伝達の観点から考えると「全文掲載」をする方が不親切・不適切になる場合が多い。届け出内容をどう「切り出す」かについても検討が必要となる。
機能性表示食品の広告はトクホに比べると緩い部分もあるが「どのような人が」「どのように使えば」「どの程度の機能が期待できるのか」がはっきりわかるような広告にしていくことが望ましい。届け出内容の全文掲載や曖昧表現の方に走っていくのは望ましくない。
いずれにせよ健康食品だからこそイメージで訴求するのではなく根拠に基づいた広告が必要である。
適正広告を通じて消費者が正しく商品を理解できるように消費者教育までできるような広告を消費者と事業者協同で作っていけるのが望ましい、とした。