特定非営利活動法人

HOME > 「食」のトピックス > 発酵食品、腸内環境整え免疫力をアップ

2020.7.22発酵食品、腸内環境整え免疫力をアップ~夏のWeb公開シンポジウム

2020年7月22日(水)、「夏のWeb公開シンポジウム~健康食品新時代の幕開け 免疫への可能性」(三生医薬㈱主催)が開催された。この中から、辻典子氏(産業技術総合研究所)による講演「免疫機能・腸管免疫の基礎と食品成分の重要性」を取り上げる。

免疫と腸内環境との関係

ここ数年、日々の食事内容と腸内細菌、腸内フローラ、免疫との関係がよく知られるようになっている。

私たちの食事は腸内細菌の餌になる。そのため、「何を食べるか」で、腸内フローラは変わり、免疫も相互作用する、と辻氏。

つまり、免疫を強くするには何を食べるか、食べ物の内容を考えることが大切。免疫機能は体調に密接に関係しており、腸の状態(便秘や下痢)だけでなく肌の状態や睡眠の質、精神状態や気分にまで影響を及ぼすことが分かっている。

コロナウイルスが感染拡大しているが、ウイルスから身を守るためにも体力をつけ免疫力を高める必要がある。私たち一人ひとりができる対策として「食べ物選び、腸内の環境を整える」ということがある、と辻氏。

免疫を下げる要因に、ストレスや睡眠不足

認知症、糖尿病、アトピー、皮膚炎、炎症性腸疾患などの疾患も、すべて腸内環境と関係していることが明らかになってきている。

腸内環境は、食事、生活だけでなく、遺伝、年齢、環境などにも影響され、一人ひとり全く異なる。

そのため、それぞれが「自分に必要な腸内環境を整える食事」を実践していくことが本当の意味でのセルフメディケーションの実現となる、と辻氏。

私たちの「免疫」は、生まれてから右肩上がりに高まり20歳ごろをピークに低下が始まる。しかしこの低下の速度にも個人差がある。

免疫が低下するリスクファクター(要因)として、加齢・ストレス・不規則な生活・激しい運動・睡眠不足・感染症、海外渡航などがある。

例えばサッカー選手やマラソン選手などは試合の前後で免疫の状態が大きく異なる。つまり免疫は行動の影響も受け、日によって変動する。

そのため、免疫が低下することがないように、行動に応じた食べ物を選ぶ知恵が必要となる。

免疫、「抗炎症」と「感染抵抗性」の役割

免疫には大きく「抗炎症」と「感染抵抗性」の2つの役割がある。「抗炎症」の機能が低下すると、リウマチ、腸炎、アレルギー、認知症などが起こりやすくなり、「感染抵抗性」が低下すると風邪や感染症になりやすくなる。

ここ数年、腸内環境の研究が進み、腸内にどんな菌が棲息しているか可視化できるようになってきている。

また、免疫の中でも自然免疫について分子メカニズムまで理解されるようになっている。この2つの成果によりフードメディシン(食医)をより正確なエビデンスを持って実践することを後押ししてくれている。

特に食品に含まれる微生物は腸内環境を高めることに非常に役立つ。納豆や味噌、醤油、みりん、日本酒、酒粕、焼酎、粕漬け、漬物、など日本食は発酵食品の宝庫で、こうした発酵食品を日々の食事にぜひ積極的に取り入れて欲しい、と辻氏。

自然免疫、腸管で活性化

免疫研究の中でも、自然免疫は獲得免疫を構築していく上で大切で、自然免疫がしっかり働いていないと、獲得免疫は働かないということもわかってきている。

そのため自然免疫をどのように高めていくかにも注目が集まっているが、自然免疫は腸管で活性することも解明されている。

これは2011年のノーベル賞で「自然免疫の活性化に関わる発見」が大きなきっかけとなりわかってきた。

発酵食品に含まれるさまざまな菌が腸内に存在する菌に有効であるが乳酸菌も腸内を活性する代表的な菌なのでぜひ取り入れて欲しい、と辻氏。

大腸にはさまざまな種類の菌が存在するが、口から免疫が最も活性される小腸までの常在菌で主要なものは乳酸菌である。

近い将来、「免疫の見える化」が進む

また乳酸菌は体内で生成される抗菌物質αデイフェンシンにも殺されず、生存するメカニズムを備えている。

乳酸菌はインターフェロンβの産生を高誘導するという特別なメカニズムも持つ。インターフェロンβは腸炎の炎症を抑えるなど、抗炎症作用を担っている。

一人ひとりがどんな発酵食品や乳酸菌をどれくらいの量を摂取すべきか、まだ未知の部分もあるが、近い将来「免疫の見える化」が進むことで、個別に提示できるようなるだろう、と辻氏。

漬物は「シンバイオティクス」

一人ひとりの腸内環境が見える化できるようになると、食品やサプリメント、ワクチンの個別の処方や効果予測も可能となる。

自然免疫を活性させるプロバイオティクス、腸内環境を整えるプレバイオティクス。この2つが合わさったものを「シンバイオティクス」と呼ぶが、これはまさに漬物である。

免疫は年齢や環境、食事によって腸内環境が影響されることによってダイナミックに変動するが、日々の食事で自らデザインできるものなので、ぜひ「何を食べるか」を意識し、上手に免疫を高めて欲しいと辻氏はまとめた。

最近の投稿

「食」のトピックス 2024.11.18

栄養・機能性飲料のグローバルトレンド

「食」のトピックス 2024.11.11

食による免疫調節と腸内細菌

「食」のトピックス 2024.11.5

地域住民におけるDHA・EPA、アラキドン酸摂取量と認知機能の関連

「食」のトピックス 2024.10.21

大豆のはたらき〜人と地球を健康に〜

「食」のトピックス 2024.10.15

ゲノム編集食品最前線

カテゴリー

ページトップへ