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2022.1.21特定保健用食品への期待と展望~特定保健用食品制度30周年記念講演会

2022年1月21日(金)、web配信にて「特定保健用食品制度30周年記念講演会」が開催された。この中から、伊藤 明子氏(消費者庁長官)の講演「特定保健用食品への期待と展望」を取り上げる。

2040年、50歳以上が全人口の半分以上に


伊藤氏はこの制度が無事に30周年を迎えることができたことについて、運用側だけでなく業界団体や各事業者、そして消費者一人一人の活用や理解があったからと感謝を述べた。

その後、この制度を振り返り、今後どのように展開していくのが望ましいのかについて講演を行なった。

制度が施行された1991年はジュリアナ東京がオープンしSMAPがデビューした時期で社会的に華やかな時代であったと振り返る。

しかし30年後の現在、人口は下り坂、出生率は減少、経済成長率も大きくマイナスになっている。さらに2040年は50歳以上が全人口の半分以上になることが予測されている。

いわゆる「人生100年時代」は「マルチステージの時代」といわれ、「教育」も「チャレンジ」も「企業勤め」でさえ何度でもトライできる時代とされるが、そのためにも健康な心身が維持する必要があることは言うまでもないと伊藤氏は話す。

特定保健用食品のメリット

さらに平均寿命もどんどん伸びている。2019年の時点で、90歳まで生存している割合は女性で62%、男性で36%だが、2040年には90歳まで生存する割合が女性68%、男性42%となる。

女性の場合、さらに100歳以上で寿命を迎える割合は20%以上と推測され、90歳や100歳まで生きることは特別ではない時代へとすでに突入している。

健康寿命の全うに必要なのは「健康」であり、それに貢献できるアイテムとして「特定保健用食品」や「機能性表示食品」といった健康食品が存在する。

機能性表示食品が登場した2015年からは、特定保健用食品の商品数に大きな変化はなく1000品程度で安定しており、機能性表示食品制度のような伸び方はしていない。

それでもそれぞれの制度と製品には異なる良さがあり、特に特定保健用食品のメリットには「許可性」「最終製品を用いたヒト試験の実施」「認証マーク」という大きな信頼がある。

「食習慣を改善するつもりがない」が国民の4人に1人

特定保健用食品については2020年から「公正競争規約」も始まり、信頼の点では機能性表示食品を上回っていると伊藤氏は話す。

ちなみに「公正競争規約」とは牛乳から旅行業まで多種多様な業界団体が、より具体的で適切な表示方法のルールを自主的に制定したもの。

こうした自主的なルールが策定できるのは、業界全体としての横の繋がりや製造・供給の安定があるからであり、健康食品という大枠の中でも「特定保健用食品」については業界としても制度としても成熟期に入っていると言える。

機能性表示食品制度など、他の健康食品でも「公正競争規約」はぜひ目指して欲しい。また、特定保健食品の課題としては、やはり「認知度」だ、と伊藤氏。

国の医療費の1/3は生活習慣病の医療診療に当てられているが、生活習慣病は個人の努力によって予防できるため、未病の段階で特定保健用食品などをフル活用することが望ましい。

しかしながら、令和3年に発表された「厚生労働省白書」によると、生活習慣病の予防のために食習慣を改善することに関心はあるが、「食習慣を改善するつもりがない」と答えた人は国民の4人に1人いる状態であることが報告されている。

この「食習慣を改善するつもりがない」人たちこそが特定保健用食品や機能性表示食品制度の大きなターゲットになるのではないか、と伊藤氏。

健康食品、昨年は前年度比18%増


国民の30%が特定保健用食品を認知しており、その内の20%は実際に活用・利用しているという報告もある。

この制度を国民が理解すれば特定保健用食品はもっと利用される可能性がある。そのため、認知度を現状の30%からさらに拡大する必要があるのではないか、と伊藤氏。

コロナウイルスの感染拡大に伴う新しい生活様式には大きな課題がある。特に高齢者や社会的弱者の「孤独」「孤立」については今後政府としても力を入れていくことを打ちだしているが、すでに多くの国民の心身の健康にダメージを与えている。

その一方で、健康食品全体は特需とも言える状態で、特に通販は売上を大きく伸ばし、昨年は前年度比18%増とも報告されている。

健康食品と化粧品の定期購入に関する消費者生活相談が増加

ただ、その売上増に比例して消費者生活相談は増加している。その中身は健康食品と化粧品の定期購入に関する相談がほとんど。

そのため令和4年6月には「定期購入に関わる特定商取引法改正」が行われ、これに違反した場合は行政処分のみならず直罰の対象になることも決まっている。誤認して申し込みをした消費者は取り消しが可能といった救済措置もスタートする。

健康食品は商品の特徴として「継続使用」は必要であるにもかかわらず、相談件数がこれ以上増え法改正が繰り返されるようなことがあっては業界にとって自分たちの首を絞めるようなことになりかねない。

具体的な表示方法については現在ガイドラインを策定中だが、販売側はこの法改正についても頭に入れてほしい、と伊藤氏。

「時代に合わせた特保」が検討

今後の特定保健用食品のあり方として、例えば「虫歯のリスクを低減」など、新たなヘルスクレームの追加などに関する検討会は随時開かれている。

また、機能性表示食品制度の普及を受け、特定保健用食品の方も今後審査手続きの簡素化や運用の改善などが検討されており、業界と消費者ニーズの変化へ対応した「時代に合わせた特保」が話し合われている。

特定保健用食品は制度が厳格であるが、それゆえ国の健康栄養政策に対応できる制度であり、国民の健康に役立つ信頼できる制度であることに間違いない。今後も国民の幸せに役立つ制度として運営したいとまとめた。

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