2020年9月30日(水)、日経SDGsフォーラム【WEB配信】「トクホで考える健康新時代~トクホ公正競争規約がスタート~」(主催:日本経済新聞社、共催:消費者庁)が開催された。この中から、伊藤 明子氏(消費者庁長官)の講演「トクホ新時代への期待」を取り上げる。
健康食品、公正競争規約が初めて導入
2020年8月21日、消費者庁により「特定保健用食品の表示に関する公正競争規約及び同施行規則」が施行された。これにより、国(消費者庁)の審査を受けていた特定保健用食品(トクホ)に公正競争規約が適用となった。
公正競争規約とは、表示または景品類に関する事項について、事業者団体などが定める業界の自主的ルールである。
現在までに78団体102件の公正競争規約が認定されているが、健康食品分野では初めての導入となる。
公正競争規約には主に以下の4つのルールがある。
1、社会的信頼の向上
2、コンプライアンスの強化
3、自主的なルールの運用
4、規約に基づく行為の独占禁止法の適用除外
公正競争規約は自主規制として公正取引協議会等が運用し、調査・検査、公正マークの発行などが行われる。
トクホに「公正マーク」が表示
トクホはこれまで消費者庁の許可を得て、特定の効果が表示でき、マークの表示ができた。
しかし、今後は「特定保健用食品公正取引協議会」により、パッケージや広告などが調査され、適切であることが認められた場合に、新たな「公正マーク」の表示が許可されるようになる。
超高齢化社会を迎え、医療診療費の全体の1/3を占める生活習慣病にかかる医療費の削減、一人ひとりの健康寿命と平均寿命の差を縮めることが今後の重要課題となる。
そのためには国民一人ひとりがセルフメディケーションを意識し、健康的な生活を営むだけでなく、健康の維持・増進に役立つ食品を選ぶことが大切となる。
トクホ、認知度30%・利用率17.6%
食品には健康の維持・増進に繋がる成分が存在する。そうしたものを消費者が賢く選択できるよう、日本では特定保健用食品(トクホ)、栄養機能食品、機能性表示食品の3つの保健機能食品が認められている。
この3つの中で、機能性表示はトクホが先がけだが、制度スタートから30年近くが経過するものの国民の認知度は30%程度、利用率は17.6%と低く、ここ数年は機能性表示食品の勢いに押されている。
トクホの許可・認証件数は2007年が年間143件でピークだったが、2018年は39件、2019年は22件と減少傾向にある。
しかしながら市場は2005年以降、約6,500億円規模で安定的に推移している。機能性表示食品との棲み分けや相乗効果が発揮できれば、トクホも今後さらに認知度や市場規模の拡大が十分期待できる。
トクホ商品、まだまだ期待
今回のフォーラムの大きなテーマであるSDGsでは、17の大目標が掲げられている。このうちの3つ目の目標が「すべての人に健康と福祉を」。この実現のために事業者・消費者・行政が連携し合うことが不可欠である。
特に「消費」については関係省庁、事業者、業界団体が連携を強化し、より柔軟で多様な政策を進めていくことが求められる。もちろん消費者にも「選ぶ責任」「使う責任」を意識した正しい消費行動を心がけることが求められている。
機能性表示食品制度が盛り上がる中で、特定保健用食品の成長や発展については若干トーンダウンしているような印象があるかもしれない。が、それでもトクホにはまだまだ期待が持たれている。
消費者がより適切な選択ができるように
今回、公正競規約や公正取引協議会の設立で、消費者により商品力や健康の維持・増進効果を訴求することができるようになった。
また現在のカルシウムや葉酸のように「疾病リスク低減表示」における対象成分や表示の拡大、さらに制度の運用の見直しや向上も検討されている。
機能性表示食品のデータが順調に蓄積していることは、トクホへの申請数の増大といった相乗効果につながる可能性もまだまだ十分ある、と伊藤氏。
消費者が、「トクホ」「機能性表示食品」「いわゆる健康食品」の違いを明確に理解し使い分けることができるようになるまでまだ時間がかかるかも知れない。
適切な選択ができ、「使う責任・作る責任」を意識したより良い消費社会の構築を目指したい、とした。