民間療法でインフルエンザ症状の回復に有用。LDL(善玉)コレステロールの酸化抑制で心疾患予防も
エルダーベリー(Sambucus canadensis)としてその名が知れ渡っているアメリカン・エルダーは北米を原産地とする低木です。
この植物は、“the medicine chest of the common people(あらゆる人々の薬箱)”とも呼ばれ、古くから民間療法の中心に置かれてきた人気のハーブです。
登場は石器時代とも言われますが、古代エジプト人はこのハーブがやけどの治療などに有効性を発揮することを発見しました。
また、ロシア人やイギリス人はこの木が悪魔を退散させると信じ、家の近くにあると幸福になれると考えていました。17世紀のイギリスではこの植物を原料にホームメードのワインを楽しんだといいます。
エルダーベリーは花、葉、実、樹皮、根など使えないところがないほど、全体をあますところなく利用でき、実にはビタミンC、A、B、フラボノイド、糖分、タンニン、カロチノイド、アミノ酸が相当量含まれると考えられています。
特にビタミンCは、ローズヒップやブラックカラントなどより濃度が高いといわれています。また葉には、ケラセチン、ルテインなどのフラボノイドやビタミンC、サンブニグリンといったグリコシドが含まれます。
花にも、ビタミンA、C、フラボノイド、さらにカリウムやviburnic acidが豊富に含まれます。花のジャムには多くのビタミン類やミネラル、特にビタミンB17が含まれると考えられています。また、アントシアニンも含まれています。
健康効果の高いことで評判のグレープと栄養素の含有量を比べると、ビタミンAはグレープで80IU/100g。エルダーベリーは600IUとかなりの差があります。
ビタミンBはチアミンがそれぞれ0.06mg/0.07mg、リボフラビン:0.04mg/0.06mg、ナイアシン:0.2mg/0.5mg、ビタミンC:4mg/36mg、プロテイン:1.4g/2.6g、カルシウム:17g/38gなどとなっています。
エルダーベリーの薬効はやけどや傷の回復からインフルエンザの治療まで多岐にわたると考えられています。
イスラエルの研究グループは1992年、エルダーベリーのインフルエンザに対する有効性を調べました。
インフルエンザの蔓延中、患者の半数にエルダーベリーのシロップを、残り半数にはプラセボを与えました。結果、24時間のうちに、エルダーベリーグループの20%が回復。2日目に75%、3日目には90%が回復したといいます。
一方、プラセボグループでは、24時間以内が8%で、90%の回復までには6日かかったといいます。
J Int Med Resに2004年掲載された研究では、インフルエンザA型、B型に対する有効性を調べました。ノルウェーの研究グループは1999~2000年、18歳から54歳のインフルエンザ患者60人にエルダーベリーシロップ15mgか、プラセボシロップのどちらかを1日4回与え、経過を観察しました。
結果、エルダーベリーグループはプラセボグループに比べ、症状の回復が平均4日早いことが分かったといいます。
また、エルダーベリーの抗酸化作用、抗菌作用、免疫システム促進にも注目が集まっています。肝臓へのダメージを防ぐことで肝炎や肝硬変、免疫を増進することでHIV感染への治療にも有効性が期待されています。
オーストリアのGraz大学研究グループによると、エルダーベリーエキスは、LDL(善玉)コレステロールの酸化を減少するため、LDL酸化ストレスが原因の心臓病予防に期待できるとしています。