日本発、ヨーロッパで研究・治療が盛ん。高齢者増加に伴い、ブレインハーブとしての役割に期待
超高齢化社会の到来で懸念されているのがアルツハイマー症などの脳機能疾患の増加。現代人はフリーラジカル(活性酸素)などによる脳損傷でこうした疾病から逃れられない状況にあるともいわれています。そうした中、対応素材としてイチョウ葉の役割に注目が集まっています。
イチョウ葉は日本でも馴染み深いハーブですが、有用性についてはむしろハーブ研究・治療の先進国であるヨーロッパのほうがよく知られています。
ドイツでは政府系のハーブ研究機関、コミッションEがハーブ全般を管理し、イチョウ葉に関しては、特に脳内での低酸素血症耐性の向上、記憶力や学習能力の向上、有害酸化ラジカルの不活性化、血小板凝集要因(PAF)との拮抗作用などが報告されています。
イチョウ葉の研究についてはヨーロッパが一歩抜きん出ていますが、もともと日本が先駆けで、1932年にイチョウ葉成分のギンコライドを単離しています。その後、ヨーロッパで医療関係者がイチョウ葉に注目し、医療現場へ導入、ドイツやフランスで脳機能の対応素材として使用され始めました。
1974年にはフランスのIpsen社がイチョウ葉エキス製剤『タナカン』を発売し、イチョウ葉の効用が広く知られるようになりました。ちなみに、ヨーロッパで用いられているイチョウ葉原料はその大半を日本から輸入しており、『タナカン』の名称は田中角栄元首相に由来しているともいわれています。
イチョウ葉の働きの主要成分は、ginkgo flavonglycosidesとterpene lactonesで、血小板の凝集を抑え(PAF)血管の弾力性を調節し、脳などへの血流を増加させるといわれています。また、老化による記憶機能の向上、性的機能障害、卒中患者の長期的治療、視聴覚障害、高齢者の鬱症状――などへの有用性が挙げられています。
全米6ケ所の医療センターで軽度の認知症患者309人の半数にイチョウ葉エキス40mg錠剤を1日3回与え、後の半数に偽薬を与えたところ、約1年でイチョウ葉グループの27%にわずかながらも記憶力の強化や社会行動での向上が見られたといいます。一方、偽薬グループは14%であったということが報告されています。