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2014.11.25セント・ジョンズ・ワート

抗鬱、鎮静、抗ウィルス、抗菌、抗真菌性作用など報告。ストレス社会の対応素材、天然の抗鬱ハーブとして人気

セント・ジョンズ・ワート(以下、SJW)は和名をオトギリソウ(弟切草)といいます。セント・ジョンズは洗礼者ヨハネ(ジョン)が由来、ワート(=Wort)は「植物」を意味します。

SJWの植物の葉面の赤黒い点は、ヨハネが首を刎ねられた時の血痕にみたてられています。日本では、平安時代、ある鷹匠が鷹の傷を癒す秘薬を他言した弟を斬り殺したという伝説から「弟切草」と名付けており、同様に葉面の黒点を血痕にみたてています。

SJWの開花時期は6月~8月で、セント・ジョンズ祭が開催される7月中旬頃が開花のピークとなります。SJWの品種は約370種に及び、花冠は黄色い5枚花弁で、30~90センチほどに成長します。

SJWはヨーロッパ、西アジア、北アフリカに自然分布する野草ですが、その後、オーストラリア、北アメリカ太平洋岸北西部などに移植、野生しています。野生のSJWを放し飼いの羊などが食べて死ぬこともあり、オーストラリアやコロラド州など、毒草として敬遠されている地域もあります。

SJWはすでに2400年前から薬草として使用されています。「薬の父」ヒポクラテスは、葉面の黒点に有効成分が含まれていると考え、病人に多く処方したといわれています。

SJWの有用性については、これまでに鎮静、抗鬱、抗ウィルス活性、抗菌性、抗真菌性作用などが報告されています。一般に、切傷、打撲傷、火傷、止血などでも使用されています。

SWJの研究や使用は、欧州で早くから行われています。ドイツ、イギリス、フランス、スイス、チェコ、ポーランド、ルーマニア、旧ソ連などでは、政府承認の薬局方で、しっかりした基準が設けられています。じん麻疹、虫刺され、荒肌、火傷、擦り傷などの塗薬としても利用されています。

とくにドイツでは1980年代半ばから盛んにSJWの研究を進め、塗薬のほか、胃腸調整や下痢止め用の油薬、精神安定剤、睡眠剤、閉経後の神経鎮静剤の内服薬などで承認されています。副作用が少ないことから、ドイツではSJWが医師の処方する最も多い抗欝剤となっています。

ドイツのGiessen大学の3250人を対象とした、LI 160と呼ばれるSJWアルコール抽出エキスを服用した研究では、被験者の80%に抗鬱病剤、精神安定剤、鎮静剤としての効果が見られ、軽い副作用が起きた被験者は2.4%であった。また同Bonn大学の研究において季節の影響による鬱病にも効果が見られたことが報告されています(Psychiatry Neurol誌1994年10月号)。

SJWはこうした抗鬱効果から、米国でも90年代後半に天然の抗鬱ハーブとして、国民的な人気を博します。しかし、その後、抗HIV薬(インジナビル)や強心薬(ジゴキシン)、免疫抑制薬、血液凝固防止薬、経口避妊薬などがSJWとの併用で効果が減少するといったことが報告。

その後、市場は一時鎮静化しますが、SJWは重度の鬱症には難しいものの、軽度の鬱症には有用性が認められるとされ、根強い人気を誇っています。

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