ATPの再合成で、効率的に運動エネルギーを発生。筋力、瞬発力アップで、プロスポーツ選手が多く愛用
クレアチンは肉や魚などに含まれる栄養素です。成人(体重70kg)で1日約2gのクレアチンが必要で、その半分は肝臓で体内合成されます。
生肉、生魚の500g当たりに約3gのクレアチンが含まれますが、調理などの熱処理で破壊されるため、実質摂取量は60~80%になります。食品500g中のクレアチンの含有は、鰊(3.3g)、豚肉(2.5g)、牛肉(2.2g)、鮭(2.2g)、鮪(2.0g)、鱈(1.5g)です。
クレアチンは窒素性有機物で、通常、成人(体重70kg)では約120gのクレアチンを体内に貯蔵しています。骨格筋や心筋、網膜、精子、脳、免疫系の細胞といった筋肉活動で酷使される部位に主に存在し、特に骨格筋には体内のクレアチンの95%が貯蔵されています。
クレアチンは短距離競走や重量挙げなど瞬発力が必要な運動の際、必要なエネルギーを作り出します。俗に「肉食で瞬発力が高まる」といわれますが、これはクレアチンによりもたらされるものです。
クレアチンの発見は1832年と意外に早く、東欧共産圏諸国では1960年代から既に競技選手が使用していました。クレアチンはアマチュア競技で使用禁止のドラッグとは区別されており、米国では多くのプロおよびアマチュアスポーツ選手がクレアチンを使用しているといわれています。
クレアチンがどのように筋力や瞬発力を高めるかですが、運動の際に必要な筋収縮のエネルギー源は筋肉中のアデノシン三リン酸(ATP)になります。ATPが無機リン酸を放出して、アデノシン二リン酸(ADP)が生じる際に瞬発エネルギーが生じます。通常ATPは筋肉に僅かしか含まれず、筋収縮をATPだけで賄おうとすれば約1~2秒しか持たないため、直ちに次ぎのATPの補給が必要となります。
筋収縮によりATPが分解されアデノシン二リン酸が生じると、クレアチキナーゼという酵素が働き、クレアチンリン酸とアデノシン二リン酸から素早くATPが再合成されます。激しい運動中はこの再合成が数十回繰り返されますが、クレアチンリン酸が多ければ多いほどATPの再合成が促進されます。
クレアチンの摂取により筋線維中のクレアチンリン酸濃度が約20~30%増加するため、ATP再合成の継続が可能になると考えられています。エネルギー源のATPが減少しても、クレアチンで素早くATPの合成、再合成がなされるため、短距離ダッシュ、円盤投げ、ジャンプ、重量挙げなどで必要な瞬発力が作り出されるものと考えられています。
クレアチンは食事からの摂取が望ましく、サプリメントの長期服用は避ける方が良いといわれています。長期のクレアチンの過剰摂取で、弊害が認められたという報告もあります。クレアチンを多量に摂取すると、分解産物であるクレアチニン(老廃物)の血漿中濃度が増大し、尿量が増加して腎臓や心臓に負担となるとみられています。過剰に摂っても老廃物となって腎臓で濾過され、再吸収されずに尿中に排泄されるため、無駄になるといわれます。