古代エジプトでは血液や肝臓の浄化に使用。根抽出物に、抗バクテリア、抗炎症、抗菌性などの働き
チコリ(Cichorium intybus)はキク科の多年草植物で、別名、Blue Sailors、 Garden Endive、Succory、Wild Succoryなどと呼ばれています。
もともと山岳地帯に野生していましたが、現在は、ヨーロッパ、南北アフリカ、オーストラリア、ニュージーランド、北米アメリカと広く分布し、一般の庭でも栽培されています。青い花をつけ、白い根が長くしっかりとはり、なかなか抜けないという特徴を持っています。育つと1mくらいになります。
古くは紀元1世紀頃から、食用、薬用として栽培されてきましたが、古代エジプト人は血液や肝臓の浄化として、かなりの量を食したといいます。中世の修道士はチコリを栽培し、1600年代にヨーロッパへ紹介しています。
乾燥させ荒引きしたチコリの根を炒ると コーヒーの香りを放つところから、フランスやベルギーでは、コーヒーの中に入れ、かなり使われたといわれます。第二次世界大戦中、物資の流通が減った時、アメリカではコーヒーの代用として、チコリ製“コーヒー”がかなり出回ったといいます。また、葉はサラダなどに使われています。
チコリには様々な化学物質が含まれ、イヌリンが11~15%(栽培ものでは最大 58%)、果糖10~22%、苦味質のlactucin、lactucopicrin、タンニン、揮発油といったものが主で、中でも多糖類のイヌリンが注目されます。
チコリを炒ると、このイヌリンがoxymethylfurfurolに転換し、コーヒーの香りを放ちます。Lactucinおよびlactucopicrinは中枢神経で鎮静作用を行うことが指摘されています。また、根から抽出されたフェノール物質、esculetinはマウスを使った実験で、肝臓を保護することが報告されています。
チコリは、黄疸、脾臓障害、通風、リウマチ、月経前症候群などの様々な症状緩和、治療への有効性が指摘されています。また、外用として皮膚の炎症、腫れを防ぎます。
Journal of Nutritionに掲載された研究では、チコリはコレステロール値を低下させ、LDL値(「悪玉」コレステロール)に対するHDL(「善玉」コレステロー ル)値の割合を増大すると報告されています。
また、ヨーロッパの最大チコリ製造会社、Lerouxが行った研究によると、チコリの根抽出物には、抗バクテリア、抗炎症、抗菌性があり、血糖値を下げる働きがあります。1984年発表された研究では、糖尿病患者にチコリ成分である、オリゴ糖とイヌリンを多量に与えたところ、血中のグルコースを下げ、またHDL値に影響を与えずにLDLを低下させたことが分かったといいます。
さらに、カルシウムの吸収をよくする有効性も明らかにされ、骨や歯の強化にも薦められます。 また、免疫システムを刺激し、直接的ではないが、ビタミンB群の生成を促進することも示されています。
チコリの根を定期的に摂取すると、ホルモンバランスが正しく維持されることが報告され、女性の月経前症候群(PMS)の症状緩和に薦められています。その他、食欲を抑える働きがあることから、ダイエットプログラムにも 取り入れられたり、子どもの下剤としても使用されています。
チコリの使用に際しては、重大な副作用は報告されていません。ただ、過敏症のある場合、皮膚にかゆみや炎症が起こる可能性があるとされています。