1960年代末に注目、米国がんセンターも研究。FDAが使用警告も「チャパラルは安全」とワイル博士
チャパラル(学名=Larrea tridentate)は、アメリカ南西部の砂漠地帯およびメキシコ北部に群生する薬草で、その名は生育する地域の名前に由来しています。
2mあるいはそれ以上の背丈になり、小さな黄色い花をつけます。葉は粘着性のある脂に覆われ、creosote bush、greasewoodなどと呼ばれることもあります。
古くからアメリカの先住民によって、主にお茶の形式で痙攣や関節の痛み緩和、アレルギー疾患、抗炎症など様々な用途に使われてきました。
チャパラルにはガム、エステル、ステロール、プロテイン、食物繊維などのほか、マグネシウム、マンガン、銅などの微量ミネラルも含まれますが、中でも強力な抗酸化剤といわれるリグナンの1種、ジヒドログアヤル酸(NDGA)が含まれ、活性成分として働いています。葉を覆う脂にはNDGAのほか、脂質が16~21%の範囲で含まれています。
民間療法として、チャパラルは長い使用の歴史がありますが、近代医学で注目を浴び始めたのは1960年代末から1970年代初めにかけてで、ユタ州の85歳の男性が首のがんをチャパラルのお茶で治したというのがきっかけでした。
それ以来チャパラルの人気は高まり、米国がんセンター(National Cancer Institute)などが研究を始めました。ただ、主に研究されたのは、ハーブ全体ではなく成分のNDGAでした。
HRF(Herb Research Foundation)が行った調査(1992年)によると、過去20年の間にアメリカでは最低200トンのチャパラルが販売され、チャパラルには血液浄化、抗痙攣、腸内洗浄、抗炎症、肝臓刺激、鎮痛、傷の回復、抗感染などの作用があると報告されています。
また、実験室での研究で、抗菌作用のあることが報告されています。ハムスターを使った別の研究によると、チャパラルのNDGAは虫歯の予防に有効性があることが明らかになっています。
1992年にアメリカで、チャパラルを含有する製品の使用で肝臓を中心とする障害報告が5件出たことから、ハーブ産業およびFDA(米食品医薬品局)は1993年、業界や消費者に対してチャパラルが健康被害を及ぼす可能性があるという警告を発しました。
FDAが同年12月に発行したプレスリリースによると、少なくとも4人のアメリカ人に起った急性の肝臓障害はチャパラル使用との関連性を示す可能性があるとしています。
ただ、チャパラルの肝臓障害を発症する危険性については、以前から各方面で行われています。1960年代後半ユタ州で行われた研究では、がん患者59人にチャパラルティー(240ml入りコップ2~3杯/1日)を与えました。
これらの患者にはまた、NDGAを経口で1日250~3000mgも与えています。経過の観察を行ったところ、明白な肝臓毒性は見られなかったと報告しています。
また、被験者にNDGAの筋肉注射(最大400mg/kg/1日)を5~8ヶ月行ったが、毒性を示す明白な証明は得られなかったといいます。
自然療法の権威、アンドリュー・ワイル博士はチャパラルについて、「チャパラルは安全であり有効性がある」という見方をしており、肝毒性に関しては「さらに研究の必要あり」としながらも、「副作用報告が現実にあったとしても、全体数からするとごく稀で、そうした場合、患者には特発性過敏があったとも考えられる」と述べています。