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2024.3.27「あなたの健康を左右する食の選択~日本の農産物を活用した食品機能研究」健康博覧会2024

2024年2月19日(月)〜3月4日(月)オンラインにて、食品開発展プレゼンフォートナイト2024冬が開催された。ここでは(一財)生産開発科学研究所による「アスタキサンチンその研究史、自然界での機能、注目される生理活性」を取り上げる。

国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構
食品研究部門 食品健康機能研究領域 研究領域長 小堀 真珠子 氏

全国に研究機関を展開する国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(以下、農研)であるが、中長期計画に基づき5年ごとにさまざまな研究を行っている。2015年に機能性表示食品制度がスタート。生鮮食品も機能性表示が可能となり、農研では農産物の機能性表示に関する研究を令和2年まで手がけたという。令和3からは「機能性食品をより有効に活用するためにも基盤となる日々の食事に関する研究」もスタート。さらに現在進行形の研究として「健康と疾病の間にある軽度不調の評価と軽微な部分で健康を維持するための食品開発の研究」、「おいしさを評価する評価方法の開発」などがあると話す。最終的にはこれら全ての研究成果をまとめ、食によるウェルビーイングな社会実装を目指しているという。

農産物の研究成果について

農研が手がけたいくつかの研究実績を報告。まずは「みかん」の研究からスタートし、生鮮食品の機能性表示第一号になった。これに続く農産物を作るのには苦労が多かったが2018年に機能性表示のりんご開発に成功。りんごポリフェノールのプロシアニジンには内臓脂肪を減らす働きが確認されており、1日の摂取目安量も110mgと設定できた。当初この摂取目安量をカバーするために大玉のりんごを個包装し「1日1個」とすることで販売をスタート。ところが大玉のりんごではなかなか全国に広がらなかったという。現在は大玉に限らず、中玉・小玉のりんごでも共通する規格と共通する摂取目安量が設定さ、本年度より機能性表示りんごの継続的な普及を目的に、弘前市の2つのJAと農研が連携し地域ブランド化の強化促進を推進している。他にも沖縄野菜の代表である「ヘチマ」を紹介。ヘチマにはGABAが含まれるが、含有量のばらつきが課題だった。しかし農研独自の研究で、ヘチマを真空パック保存することで酵素活性が起こり、GABAの含有量が増え「GABAヘチマ」として沖縄では機能性農産物として販売することに成功。高めの血圧を抑えるGABAヘチマとして付加価値をつけて販売しているという。ヘチマについては品種や栽培地域が限定されるため他地域への普及には至っていないが、同様のかたちで全国各地の地域野菜の機能性表示普及や拡大を支援したいと話した。

納豆の健康機能についての研究

納豆の健康効果はよく知られるが、より深い科学的根拠を獲得するために、国立がんセンターが実施しているコホート研究と連携した研究を紹介。納豆の摂取量が多いほど循環器疾患の死亡リスクが少なくなることや、納豆と味噌を合わせた摂取量が多いと総死亡リスクが少なくなることがコホート研究で明らかになりつつある。そこで、納豆の機能性表示食品研究に向けた研究も平成28年よりスタート。現在は納豆の粘り成分であるポリ-γ-グルタミン酸が、食後血糖値の上昇を抑制することや、炭水化物の吸収を抑制することを解明し、ポリ-γ-グルタミン酸を高含有させる納豆の製法も確立。すでに機能性表示の届出書類も完成していて、あとは届出を行うところまで来ているという。

ケルセチン玉ねぎの機能性表示の実現

ケルセチンが心血管疾患のリスクを下げることは示唆されているが、研究グループではケルセチンが認知機能の維持に役立つことを動物モデルで確認し、ヒト介入試験を実施。ケルセチンを豊富に含む玉ねぎ「さらさらゴールド」とケルセチンフリーの白玉ねぎの粉末を24週間摂取してもらう試験を行ったところ、12週目あたりから有意差が現れ、認知機能検査MMSEの結果も改善。さらにうつ状態も改善したことが示された、と解説。ケルセチンは水溶性成分であるが、どのような調理をしても含有量が変わらず、スープにした場合はスープにケルセチンが移行するという。ケルセチンの摂取目安量(日)は25mgで、表示は「本品にはケルセチンが含まれています。ケルセチンには健常な高齢者の加齢によって低下しがちな積極的な気分を維持するのに役立つ機能があることが報告されています。本品を可食部150g食べると、機能性が報告されている1日当たりの50%の機能性関与成分量が摂取できます。」とされていると解説。このように、農研ではさまざまな機能性農産物の開発を手掛けているが、一番関心を持っているのが「免疫調整機能」を持つ農産物を開発することであるという。

機能性はあくまでバランスの良い食事にプラスするもの

日本型の食生活についても循環器系疾患と死亡リスクを低減するコホート研究について説明。日本型食事バターンの中でも野菜、果物、緑茶、植物性タンパク質、食物繊維が死亡リスクを低下させるファクターとなっているが、現在の日本人の食事のパターンは日本型の食生活とは言えない実態があり、実際バランスの良い食事をとっている人は5割を下回っているという報告もあるそうだ。最新の日本人の食事パターンのコホート研究の結果が待たれるし、今後は尿検査など簡便な手法で、個人の食事摂取状況やバランスが評価できる簡単なシステムを構築し、食事内容を提案できるシステムを開発することも視野に入れているという。また、農研では「おいしさの数値化」研究にも取り組んでいるという。食事のおいしさについて、これまでは主観に基づく判断が主流であったが、味・におい・食感から生まれる複雑さを数値化することで、今後はわかりにくいおいしさを数値化、可視化することで、食品設計に活かすことなどに活用していきたいと話した。

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