2019年7月22日(月)~24日(水)、東京ビッグサイト青海展示場にて「栄養食品素材展」が開催された。同展示会セミナーより 竹中 玄氏((公財)日本健康・栄養食品協会 機能性食品部 副部長)の講演「機能性表示食品の現状とこれから」を取り上げる。
機能性表示食品の対象は健常者
保健機能食品には特定保健用食品・栄養機能食品・機能性表示食品があるが、今多くの人々が機能性表示食品に注目している。
機能性表示食品は2015年からスタートした新制度で、他の保健機能食品より圧倒的に市場が成長している。
機能性表示食品の基本的な考え方は、「安全性が担保され、エビデンスがあり、消費者が選択しやすい」こと。生鮮食品も対象となり、トクホを中心とした他の保健機能食品と大きく異なる。
ただ、機能性表示食品の対象者はあくまで健常者であり、健常者の健康の維持増進が目的とされる。そのため、提供する事業者も消費者も過度に期待しないことがトラブルを避ける基本的な考え方となる。
機能性表示食品市場、昨年は2400億円を突破
機能性表示食品として消費者庁に受理されるのは、制度スタート当初は容易でないとされていた。
しかし、現在は資料をオンラインで提出する仕組みも整い、指摘された不備事項の内容が理解できない場合、消費者庁に問い合わせることも可能だ。
そうした経験が蓄積され届出もスムーズになってきている。また、最初の届出資料提出から1回目の返答まで、当初は時間がかかりすぎるという声が各事業者から上がっていたが、現在はきちんと50日ルールで動いている。
市場規模は年々拡大し、昨年は2400億円を突破、前年比23.4%の成長率となっている。届出受理された機能性表示食品はすでに累計で2000商品を突破している。
機能性表示で競合商品と差別化
機能性表示食品制度では、事業者が事業者の責任において消費者庁に届出し、それが受理されることで機能性表示食品として認められる。
そのため、特定保健用食品(トクホ)よりもハードルが低く、大企業だけでなく中小企業からも支持される制度であることがこの成長率の背景にある、と竹中氏。
また、機能性がしっかりと商品に記載されていることで、他の競合商品との差別化に繋がっており、消費者は自分のニーズにあった商品を選択しやすいという消費者からの声も増えているという。
実際「機能性表示食品を利用したことがある」または「これから使用したい」という声は年々増加しており、機能性表示食品そのものの知名度が制度スタートから4年でかなり高くなっている。
機能性表示食品の2000件以上の届出商品については、サプリメントが49%と約半数を占める。
また、加工食品も49%を占め、「あきらか食品」でも健康増進に貢献できるということが、しっかり定着してきている。
ちなみに残りの2%は生鮮食品。アイテム数は多くないが、生鮮食品の割合が増えると、消費者に「日々の食事による健康増進」がより意識づけられるのではないか、と竹中氏。
毎年ガイドラインがアップデート
制度スタート時から、毎年ガイドラインが改正され、事業者にも消費者にもより使いやすいものへとアップデートされている 。
最新のガイドラインの改正事項としては、「軽症者データの取り扱い範囲の拡大」が話題になっている。
「鼻や目のアレルギー反応関係」と「血清尿酸値関係」については取り扱い範囲が拡大されている。ただし検討されていた「加齢に伴う認知機能関係」については今回拡大されなかった。
また少し前、対象成分に「糖質・糖類」が追加されたことで、キシリトールやオリゴ糖、L―アラビノースなどが追加され、高機能甘味料の市場活性や糖質オフ、ロカボ商品の活性に貢献している。
2018年より「広告審査会」を設立
2017年から、機能性表示食品の広告審査がより厳しく行われるようになり、日本健康・栄養食品協会では「広告部会」を設置。
広告実務担当を有する協会会員のうち約20社により設立され、「広告宣伝の適正化に関する調査や研究」「機能性表示食品広告審査会への協力」などを自主的に行なっている、と竹中氏。
また、2018年から「広告審査会」も設置、業界自らが広告の適正化をはかるため、審査の指針(自主基準)設立や、第三者である広告の専門家や消費者団体の代表などにも審査を依頼しているという。
現状、機能性表示食品制度については制度の改善がこまめに行われ、届出件数や市場規模が拡大している。
この勢いを止めないよう、また制度を利用する事業者をさらに拡大するため、協会としては届出の代理業務により力を入れたい、と竹中氏。
また消費者への適切な情報提供や制度そのものの啓発を進めることで、さらに多くの人々が制度や商品を正しく活用できるよう貢献していきたいとした。