2019年10月2日(水)~4日(金)、東京ビッグサイトにて「食品開発展2019」が開催された。同展示会セミナーより㈱グローバルニュートリショングループの講演「機能性表示食品最前線」を取り上げる。
4回のガイドライン改正
機能性表示食品制度が施行されて4年が経過する。この制度は「進化する制度」ともいわれ、これまでに4回のガイドライン改正が行われている。
2019年9月末日現在、機能性表示食品はどのような状況になっているのか。
特に今年に入ってから制度そのものの知名度が上がっており、届出の実務について、事業者も消費者庁もかなりスピーディーに対応できるようになっている。
この制度を普及・定着させるために、平成30年度に農林水産省補助事業として「機能性表示食品届出指導員養成講座」が開催された。
現在までに90名の指導員養成が実現し、来年度以降は「機能性表示食品普及推進協議会」が主体となり、同養成講座で人材育成を継続することで、業界と制度の底上げを目指している。
参加企業、トクホの約4倍
現時点(2019年9月30日)で機能性表示食品の届出件数は2025件を突破している。
生鮮食品の受理件数が少ないと指摘されていたが、つい先日福岡県の銘柄鳥「はかた地どり」が生鮮肉類としてはじめて受理され話題となった。
機能性関与成分では「アンセリン」と「カルノシン」が加齢によって衰えがちな認知機能の一部である「記憶をサポートする機能がある」で受理された。
2025件のうち1089件はサプリメント、残り1079件が加工食品、それ以外が生鮮食品などで、制度発足の目的の一つである「加工食品にも強調表示」が達成できているといえそうだ。
さらに、参加企業数について、トクホの153社に対し、機能性は637社と約4倍近い。これも制度発足時の「規制緩和」や「中小企業への配慮」という目的を達成している結果といえる。
また機能性関与成分の数もトクホの88成分に対し、機能性表示制度は116成分となっている。
エビデンスが弱く撤回
特に昨年から今年にかけては原料メーカーが自らヒト臨床試験でエビデンスを確立することに力を入れている傾向がある。
新規成分や新規機能でチャレンジすることで受理されているケースが増えてきている。
ただ一方で、現時点で既に207件の「届出撤回」も生じている。 届出撤回の主な理由としては、
「届出に使用した論文(SR)の根拠が弱い」
「機能性成分の名称変更に伴う」
「SRの見直しを行う」
「商品の販売目処が立たない」
「商品のリニューアルに伴い」
「商品化の取り止め」
「届出文言の変更に伴い」
「商品の製造終了」
「社名変更」などの理由がある。
必ずしもエビデンスに関わる撤回が多いとはいえないが、それでも207件のうち40件程度はエビデンスが弱く撤回せざるを得なかったようだ。
届出書類作成は、多くの事業者がアウトソーシングに頼る傾向がある。
しかし、最終的な窓口や届出書類の責任説明は販売者(届出事業者)にある。
そのため、アウトソーシングしたとしても丸投げせず、自社で確実に納得できた状態で自社主体となって届出や商品化、プロモーションをするべきである。
「改善」の文言、薬機法違法の恐れ
また、2018年の11月に厚生労働省の麻薬対策化が「歩行能力の改善」を謳う機能性表示食品について薬機法違法の恐れがあることを消費者庁に通達した。
これにより、「HMB(3-ヒドロキシ-3メチルブチレート)」を機能性関与成分とする届出商品が相次いで届出撤回したことがニュースとなった。
「歩行能力の維持」や「向上」であれば問題なかったことが明らかになり、その後の届け出では「維持」という文言が多用されるようになっている。
機能性表示食品制度は常にブラッシュアップされているため、検証事業が頻繁に行われるが、その後、必ず審査がより厳しくなる傾向があり、「届出を出して受理されたら終わり」ではない。
担当者はその都度変更となったガイドラインだけでなく、質疑応答集など公開されている資料は全て精読し分析し続けることが、届出撤回を避け、次回の早期受理につながる。
これまでも検証事業の後に臨床試験方法が厳しくなったり、買い上げ調査が強化されたり、安全性の分析方法への要求が厳しくなるなどしている。
消費者ニーズに合った商品開発を
機能性表示食品として受理されたからといって、必ず商品が「売れる」とは限らない。
やはりサイエンス(機能性やそのエビデンス)とマーケティング(ニーズ、プロモーション、広告宣伝、表示)、コンプライアンスの3つの柱が合致する範囲で、消費者ニーズにあった商品開発、プロモーションを行わなければヒットには繋がりにくい現状がある。
しかし、機能性表示食品は消費者にとってわかりやすく、特に対象者にとっては選びやすいものとなっている。
今後も業界全体で制度を発展させていけるよう、関連事業者はどんどん届出にチャレンジしてほしいと話した。