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2019.11.1腫瘍学における腸内フローラの免疫増強効果~第28回腸内フローラシンポジウム

2019年11月1日(金)、ヤクルトホールにて「第28回腸内フローラシンポジウム」が開催された。この中から、Bertrand Routy博士(モントリオール大学研究センター 血液腫瘍学助教)の講演「腫瘍学における腸内フローラの免疫増強効果」を取り上げる。

免疫細胞ががん細胞を攻撃


Bertrand Routy氏はモントリオール大学研究センターで免疫療法を研究、マイクロバイオーム研究所でディレクターと血液腫瘍学の助教授を務めている。

Bertrand氏によると、免疫チェックポイント阻害剤(ICB)で治療している患者さんに抗生物質の使用は有害な影響を及ぼす。

また、肺癌の中でも非小細胞肺癌、腎臓癌の中でも腎細胞癌の治療にICBによる治療は有効だが、腸内細菌叢の組成が大きな影響を与えていることを立証したという。

免疫チェックポイント阻害剤は、がん細胞から発せられる「免疫を抑制せよ」という偽のシグナルを免疫チェックポイントに結合しないようにする。

これにより、免疫細胞ががん細胞を攻撃し易いように働きかけるが、この治療法がここ数年急速に成果を上げ、特に進行癌の治療で、大躍進を果たしている。

腸内細菌叢がマイナスに変化

2018年に、京都大学の本庶佑氏が免疫チェックポイント阻害薬「オプシーボ」の開発でノーベル医学生理学賞を受賞し、免疫療法がますます話題となっている。

免疫チェックポイント阻害剤による治療は、QOLの観点からも患者に優しく効果的と理解されるようになってきた。

免疫チェックポイント阻害剤が各種のがんに応じた標準治療として進化している。しかし一方で、思ったような効果が現れない患者もかなり多く存在するという問題点が指摘されている。

さらに、一部の患者は、免疫チェックポイント阻害剤による治療で通常予想されるよりもがんが進行する可能性があり、こうした問題点を解消することが急務、とRouty博士。

そこで、Bertrand Routy博士らは、マウス実験モデルや免疫チェックポイント阻害剤にて治療患者の便を研究した。

つまり、「腸内細菌叢は免疫チェックポイント阻害剤が有効かどうかの重要な仲介役(メディエーター)を担っている」のではないか、ということ。

免疫チェックポイント阻害剤を使用する1ヶ月前に抗生剤を使用した人とそうでない人では、免疫チェックポイント阻害剤の効果の現れ方にも差がある。

マウスでもヒトでも、それぞれの便を解析したところ、免疫チェックポイント阻害剤使用前に抗生剤を投与した場合、腸内細菌叢の多様性が極めて低下し、特定の細菌だけが増えるなど腸内細菌叢がマイナスに変化していることが分かった。

腸内細菌叢、がんの新たなバイオマーカーに

また、マウスの試験等でも、抗生剤を免疫チェックポイント阻害剤使用前に利用した場合はガンが再発する可能性や、再発するまでの期間が短いといったケースも見られた。

これらはまだ初期研究だが、免疫チェックポイント阻害剤における治療を進めるにあたり、診断や治療標的として腸内微生物叢がどのようになっているかを知ることが重要となる。

免疫チェックポイント阻害剤を有効にするためには、便移植・プロバイオティクスおよびプレバイオティクスの摂取などによって腸内細菌叢の多様性を高めておく必要がある。特に抗生剤の使用や併用についてはタイミングや相性などを考慮する必要がありそうだ、とRouty博士。

これらの知見を一般化していくまでには道のりが長いが、腸内細菌叢の研究は始まったばかりで、Routy博士が研究を始めた頃とは比較にならないほどメジャーかつ注目度の高いテーマになっているという。

腸内細菌叢は、これからがんの新たなバイオマーカーになる可能性も十分ある。さらに研究や臨床を続けていきたいとした。

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