2019年12月17日(火)、日本OTC医薬品協会にて「令和元年度 機能性食品勉強会」が開催された。この中から、宗林さおり氏(独立行政法人 国民生活センター 理事)の講演「錠剤・カプセル状健康食品の品質等実態調査と健康被害について」を取り上げる。
健康食品の相談件数、年間3500件以上
国民生活センターが運営する情報ネットワークのPIO -NET(パイオネット)は、全国の消費生活センターとオンラインネットワークで繋がっている。
消費生活に関する情報の収集や消費生活相談のデータベースの構築など、消費生活者被害の拡大防止を行っている。
このPIO -NETに寄せられる相談件数は、2013年以降、約100万件前後で推移している。
このうち健康食品に関する相談件数は、2015年以前は年間2000件前後であったが、2016年を境に急増、以降年間3500件以上で推移している。
これは機能性表示食品制度のスタートやネット通販の拡大と関係しているのではないか、と宗林氏は推測する。
相談件数に対し、実際に危害があった件数もその内の半数ほどあり、国民生活センターも対応しているという。
「健康食品の商品選択に自信」が3割強
この約3500件の健康食品に関する相談案件の中で最も多いのが「お試し購入から定期購入に移り解約できない」というもの。次いで、「摂取による体調不良」。
そこで国民生活センターでは全国の消費者を対象に、健康食品の利用実態に関するアンケート調査を実施した。
調査はインターネット上にて、2018年8月~10月に実施。対象者は「過去1年以内に錠剤またはカプセル状の健康食品を摂取している人」で、対象者年齢は20歳~78歳(平均44.7歳)、有効回答者数は10,168人(男性5,137人、女性5,031人)であった。
調査結果は、「健康食品の商品選択に自信がある」と答えた人が36.5%で、商品選択に自信がない人の方が多いことが分かった。
また、商品選択に自信がない人ほど商品を購入するきっかけが「謳い文句」「売上実績No.1などの実績」「期間限定」といった、違法になりやすい商品を購入していることも分かった。
分析機関や分析手法でデータにばらつき
また、健康食品の購入目的について、「病院で治療していない諸症状を改善するため」「病院で治療中の諸症状を改善するため」が合計で14.1%、健康食品に過度な期待を寄せて購入している人も少なからずいることが分かった。
アンケートでは他にも、多くの消費者が摂取すると考えられた機能性成分10カテゴリー100銘柄を選定し、崩壊試験や含有量調査を行った。
ちなみに10カテゴリーとは「マルチビタミン」「ギャバ」「黒酢・香醋」「コエンザイムQ10」「HMB」「ルテイン」「乳酸菌」「グルコサミン」「DHA・EPA」。
すると規定時間以内に崩壊しなかった商品や含有量も分析機関や分析手法でデータにばらつきがあることが判明した。
また100銘柄の中には消費者に誤解を与える広告表示をしている商品も少なからずあった。
救済制度の確立が必要
健康食品で健康被害があった場合、「ADR(裁判外紛争解決手続き)」にて、和解金の支払いや返金等の対応を行うケースもある。
また、健康食品では多くはないが、肝臓の機能障害が起こる薬物性肝障害が健康食品でも発症することがあり、稀に重症化した事例もある。
薬物性肝障害等の健康被害が医薬品で起こった場合は「医薬品副作用被害救済制度」というものがある。
適切に医薬品を使用したにも関わらず入院加療が必要となった場合に給付金が支払われる。
平成30年度の支給決定件数は1263件(83.1%)、不支給決定件数は250件(16.5%)、取り下げ件数は6件、総支給額は24億円であった。健康食品でもこのような救済制度を確立させる時期に来ているのではないか、と宗林氏は指摘する。
事業者と消費者のリテラシーが求められる
また、「消費者安全法」というものがある。消費者庁は、当該消費事故による消費者被害の発生や拡大の防止を図るため消費者に注意が必要と認められた場合、情報を公表したり注意喚起をすることが定められている。
これは行政処分ではなく、最終的な対応は事業者や消費者の個別の判断によるため、消費者事故が起こらないよう、事業者も消費者もリテラシーを高め安全が担保された商品の販売や購入を行うしかない。
特に健康食品については、さまざまなガイドラインに沿って安全性や有効性を確保するための自主的な取り組みが求められる。事業者と消費者の双方がリテラシーを高めて欲しいとした。