2020年1月28日~29日、東京ビックサイト青海会場にて「Care Show Japan2020」が開催された。この中から、中野 貴章氏(厚生労働省医薬・生活衛生局総務課課長補佐)の講演「薬機法改正案の最新動向について」を取り上げる。
昨年11月、薬機法が7年ぶりに改正
昨年11月27日、国会で「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」が7年ぶりに改正された。
前回2013年に改正された時点で5年後に検討することがすでに定められており、2018年4月から改正に向けた議論が進められていた。今回大きく改定された点は以下の通り。
これは早期の治験段階であっても著明な有効性が認められる医薬品や機器は承認取得までの期間を短縮することで、1日でも早く患者に治療薬や機器を提供できるようにするためである。
この背景には、日本が諸外国と比較して治療薬を実用化するまでの時間がかかりすぎていることがこれまで随分と指摘されてきたことがある。
添付文書の電子的方法による提供
具体的には厚生労働大臣が「先駆的医薬品、先駆的医療機器又は先駆的再生医療等製品に指定」をした後、要件を満たすものについて薬事・食品衛生審議会の意見を聴き、「特定用途医薬品、特定用途医療機器又は特定用途再生医療等製品」に指定される流れとなる。
他にも臨床試験の実施が困難であったり、試験に長期間かかる医薬品や医療機器等について、早期の実用化を目指すために「条件付き早期承認制度」についても法制化された。
さらに「医療機器の特性に応じた承認制度の導入」や「医薬品等の製造方法等の変更についての届出制への見直し」「添付文書の電子的方法による提供の原則化」などが主な変更点。
特に「添付文書の電子的方法による提供の原則化」とは、医薬品や医療機器などに添付される文章については今後電子的な方法での提供を基本とし、添付文章はインターネット等で公表されていることとし、それを閲覧するためのQRコードを容器等に記載しなければならないとした。
また、トレーサビリティー確保のためにバーコード表示も義務化される。しかし一般用の医薬品など消費者が直接購入する場合は、現行のまま紙媒体を同梱することとしている。
遠隔の服薬指導が一部解禁
高齢化社会に伴い、国としても地域医療を重要視しているが、在宅で患者を支えていく薬剤師と薬局の育成や機能強化に力を入れる必要がある。
実際、平成の30年間で薬局数は1.6倍、薬剤師数は3.7倍、薬剤師総数は2.1倍にも増えている。
今回の法改正に伴い、薬局・薬剤師は特に「対人業務」に力を入れることが求められ、これまでの調剤業務に加えて、服薬指導や継続的な服薬状況等の把握も義務として規定される。
「服薬指導の義務の法制化」に加え、「地域連携薬局」と「専門医療機関連携薬局」の認定制度のスタート(現行の「健康サポート薬局制度」は引き続き推進されるという)、「オンライン服薬指導」の許可も改定ポイントになっている。
オンラインの服薬指導はテレビ電話等であっても適切な服薬指導ができるのであれば対面服薬指導の例外として認められることになった。そのため、適切な場合に限るが遠隔の服薬指導が一部解禁になったと理解して良い。
虚偽・誇大広告により課せられる課徴金制度
薬機法では虚偽・誇大広告を禁止している。違反した場合の罰金は法人・個人ともに200万円以下としてきたが、新たな課徴金制度では該当する製品の売り上げの4.5%を課徴金として徴収することを定めている。
ただし、自主的に申告した場合や業務改善命令や業務停止命令を行なった場合は課徴金の納付を命じないこともある。
それぞれの施行の時期は項目によって公不から1年以内、2年以内、3年以内とされている。早いもので2020年の秋頃に施行となる、とした。