2020年9月30日(水)、日経SDGsフォーラム【WEB配信】「トクホで考える健康新時代~トクホ公正競争規約がスタート~」(主催:日本経済新聞社、共催:消費者庁)が開催された。この中から、福島 靖正氏(厚生労働省 医務技監)の講演「健康21(第二次)の推進と栄養・食生活に係る課題について」を取り上げる。
2065年、約2.6人に一人が65歳以上
現在の日本の総人口は減少傾向にある。その一方で、65歳以上の高齢者の割合は上昇し、2065年には約2.6人に一人が65歳以上、約4人に一人が75歳以上になると推計されている。
さらに、2040年~2060年頃には高齢者の割合が増加することが予測され、平均寿命と健康寿命の間の約10年の差を縮めることが何より重要と考えられている。
政策として「健康」への取り組みがさまざまな形で行われているが、特に平成12年から「第三次国民健康づくり運動」、いわゆる「健康日本21」がスタートした。
健康寿命の延伸に健康格差の縮小を目標
また平成25年からは第四次国民健康づくり運動」として「健康日本21~第二次~」が行われ、「受動喫煙対策強化」などが成果をあげた。「健康日本21~第二次~」の基本的な方向性には大きく以下の5つの項目がある。
- 健康寿命の延伸と健康格差の縮小
- 生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底(NCD=非感染性疾患の予防)
- 社会生活を営むために必要な機能の維持及び向上
- 健康を支え、守るための社会環境の整備
- 栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒、喫煙、歯・口腔の健康に関する生活習慣の改善及び社会環境の改善
上記を実行し、「全ての国民が共に支い合い、健やかで心豊かに生活できる活力ある社会の実現」を目標、と福島氏。
この5つの項目がどれくらい実行できているか中間評価も行われており、①については100%、②は50%、③は58.3%、④は80.0%、⑤は59.1%と全体での達成率は60.4%となっている。
例えば、健康寿命については策定時、男性は70.42歳だったが、直近値では72.14歳。女性は73.62歳だったが、直近値は74.79歳と若干延伸している。
一方、メタボリックシンドロームの該当者や予備数の数が目標より減少していないこと。また、肥満傾向にある子どもの割合が増えていること、介護サービス利用者の増加抑制などが抑えられていないなど、改善が不十分な項目もある。
成人男女、この10年肥満の増加は見られない
平成30年の国民健康・栄養調査の結果では、日本人の成人男女ともにこの10年肥満者の増加は見られない。また、血圧(最高血圧)についても男女ともに有意に減少している。
特に新型コロナウイルスの流行によって外出自粛や在宅ワークなどライフスタイルが大きく変わった。これから特に必要なのが「栄養バランスの取れた食事を入手しやすい環境づくり」の推進、と福島氏。
それを推進する取り組みの1つに「スマートライフプロジェクト」がある。
これはコロナの流行とは関係なく「健康日本21~第二次~」の目標達成に向けて、毎年9月に実施している食生活改善普及運動の一つでもある。
今年は新型コロナウイルスの影響を受け、より「家庭での食生活改善の重要性を普及・啓発」に焦点を置き、チラシやウェブなどでの推進運動を行っている、と福島氏。
家庭でバランスの取れた食事を
これまでの推進運動で使用していた広告は全て「家の形」に変更した。「おうちごはんにバランスをプラス」「おうちご飯に野菜をプラス1皿」「1日マイナス2g おうちご飯にで美味しく減塩」「おうち時間にwithミルク」といったキャッチコピーで、家庭でバランスの取れた食事を意識できるようアピールしていく。
健康寿命の延伸と健康格差の縮小には、生活の質と社会環境の質の両方の向上が必要となる。栄養や食環境のベースは一人ひとりの食の選択や家庭にある。
日々の食事をいかに大切にするか、といった地道な取り組みを重ねていくことで成果を上げていけるのではないか、とまとめた。