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2020.10.6健康食素材、期待される成長分野~第5回ウエルネスライフジャパン

2020年10月6日(火)、パシフィコ横浜にて「第5回ウエルネスライフジャパン」が開催された。この中から西沢 邦浩氏(日経BP総研メディカル・ヘルスラボ)の講演「SDGs時代のウェルネス市場における成長分野」を取り上げる。

高まる感染対策の予防ニーズ

COVID-19の世界的流行により、機能性食品分野で最も話題となっているのが「免疫表示」についてであろう。

また「健康志向」の高まりや「環境への配慮」の潮流の中、世界で「植物性食品」の行方が注目されている。

持続可能な社会という観点から、元気な子供が生まれ続ける社会のために「若年世代の栄養状態の改善」について特に日本で課題意識が高まっている、と西沢氏。

2020年の冬はインフルエンザとCOVID-19の同時流行の恐れがあると現時点で予測され、感染対策に対する予防ニーズはますます高まると考えられている。

そうした中、今年8月7日にキリンより乳酸菌が機能性表示食品初の免疫表示が許可された。これまで免疫に関する機能性表示の取得は難しいとされてきた。

しかし、今回は「体調」に関する自覚症状への有効性を研究レビューのアウトカムと設定したことや、プラズマサイトイド樹状細胞示を免疫指標として用いた事が受理に大きく貢献した。

今後、他社が「免疫」評価を行うのであれば、キリンの事例と同様「体調」をデータとして取得しておくのが望ましいのではないか、と西沢氏。

全粒穀物の摂取、世界的に注目

感染症のリスクを減らすために、世界では食物繊維を多く含む全粒穀物の摂取に注目が集まっている。

全粒穀物や食物繊維を多く含む複合炭水化物の摂取は、腸内細菌を活性しフラボノイド代謝物を上昇させることで、インフルエンザのダメージを減らすという研究報告もある。

特にインフルエンザは、体の中でも上気道で起こる可能性が高く、上気道は腸に比較して免疫が弱い場所であるため、ウィルスが上気道の細胞に侵入するのを阻害する機能性素材に期待がかかっている。

中でも日本のクロモジという植物などに含まれているポリフェノールや、茶カテキンに注目が集まっている。

ビタミンD、COVID-19の重篤化リスクを低下

また、COVID-19については、ビタミンDの血中濃度が低いと感染リスクや重症化リスクが高くなるという報告が世界各国から上がっている。ビタミンDの摂取でCOVID-19の重篤化のリスクが下げられるという報告も出てきている。

そもそもビタミンDが不足すると高血圧、鬱、肥満、リスク因子が上がる事はよく知られている。日本人は世界と比較してもビタミン Dの摂取量が非常に低く、特に米国に比べるとかなり低い。

2020年版の食事摂取基準改定版では摂取目安量が大きく増加したが、それでも現在日本人のほとんどの世代で血中ビタミンDの濃度は低い。

ちなみに、先日COVID-19に罹患したトランプ大統領も、レムデシビルとビタミンDに亜鉛のカクテルを治療に用いたことが報告されている。米国で現在一番売れているサプリメントはビタミンDだ、と西沢氏。

タンパク質の摂取の仕方に注意

また、現在「健康志向の高まり」「環境への配慮」の潮流の中で「植物性食品」の人気が高まっている。特に「植物性由来のタンパク質」に注目が集まっている。

一方でタンパク質の摂取の仕方には注意必要という情報もあり、中高年期の高タンパク食は、がんの死亡リスクを4杯に、総死亡リスクが1.74倍になるという報告もある。

また中年期のタンパク質摂取量が多いほど心不全リスクが高まるというフィンランドの研究もある。

ただ、ここで示されているタンパク質というのは主に赤身肉と赤身加工肉で、植物性のたんぱく質や魚ではそのような有意差を示さない。

植物性タンパク質、死亡リスクが低下

国内ではニッスイがカニかまやちくわ、白身魚フライに使われるスケトウダラのタンパク質で筋肉の中でも筋トレタイプの運動でないと増やしにくい白筋が増えるという研究成果を発表している。

青汁で有名なキューサイは動物性タンパク質と植物性タンパク質を同時に取ることで効率的に筋肉が作られるという研究を発表している。

欧米では植物由来へのニーズが高まり「プランドプロテイン商品」や「ビヨンドミート」などの分野が急成長している。

それに伴い、植物性タンパク質の摂取量を増やすとその死亡リスクが低下するという研究報告も出てきている。

そもそも日本には多彩な大豆食品や植物食材を使った精進料理の文化があり、このような伝統的な和食の価値が再発見される可能性も十分あるだろう、と西沢氏。

未精製の穀物食が推奨

世界では全粒穀物の摂取目安量がガイドラインに示されているが、日本では示されていない。

食物繊維やビタミンミネラルを多く含む植物性食品を多く摂取している人は糖尿病のリスクが減ることが報告されている。

しかし、それ以外にも世界では「全粒粉穀物の不足」「食塩の摂り過ぎ」「フルーツの不足」が健康的な生活を阻害する重大因子であるとされている。2017年に「全粒穀物不足」が原因で死亡したと考えられる人は世界で3,000,000人と報告されている。

日本では大麦市場が緩やかに伸びてはいるが、米国をはじめカナダ・イギリスを含めたEU諸国、オーストラリア、シンガポールなどは未精製の穀物食を積極的に推奨している。

一方で日本では今現在ではそのような兆候がないのが非常に危惧されている、と西沢氏。

日本で低体重児が増加

また日本では少子化が問題となっているが、日本は世界的に見て低体重赤ちゃんの割合が増えていることも問題視されている。

1979年と2014年生まれの赤ちゃんでは平均身長が短縮しており、その背景には女性の圧倒的な「痩せ思考」が関係しているのではないかと考えられている。

20代女性の栄養不足は著しく、終戦直後よりも栄養不良状態にあることも報告されている。

また母体のビタミン D不足は子供の自閉症関連形質に影響することや乳がんリスクの上昇とも関係することが報告されており、日本人の若い世代への栄養教育も必要ではないか、と西沢氏。

日本人は「間食」についてネガティブなイメージを持っている人が多いが、欧米では「ヘルシースナック」という観点からギルトフリーなおやつを取り入れることが望ましいと考えられている。

ヘルシースナックのポイントとしては「食物繊維やタンパク質が多く」「糖質の消化吸収がゆっくりであり」「噛みたえがあり腹持ちが良いこと」「300キロカロリー以内」であることで、上手に間食を取り入れることで健康を維持していこうという考えは日本でも浸透するのではないか。

一人一人が栄養リテラシーを身に付け「食べながら学べる食品」の開発が必要だ、と西沢氏。

各世代における健康課題を克服し未来のライフステージに向け、あらかじめ準備するための科学的エビデンスを創出する必要があるとまとめた。

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