2020年11月16日~18日、東京ビッグサイトにて「食品開発展2020」が開催された。この中から、長瀬産業㈱の講演「欧米ニュートリション製品の開発トレンドとNagase Food ingredientsのソリューション紹介」を取り上げる。
世界規模で食品開発、原料開発から製造まで展開
長瀬産業㈱、㈱林原、長瀬ケムテックス㈱、米国の食品素材大手Prinovaの4社によって新しく発足したNagase Food ingredientsはこれから世界規模で食品開発、原料開発、受注から製造まで展開していくとした。
4社のグループ化によって誕生したNagase Food ingredientsの発足により、原料供給から受託製造まで提供することができるようになったという。
特に、米国のPrinova社の買収によって日本だけでなく輸出食品向けの食品素材の提案や開発、最新の海外ニュートリション情報やトレンド、これまでに積み重ねてきた知見をまとめて提供できるようになった。
米国のPrinova社は800億円の規模の米国大手食品企業で、従業員は約1000名、アミノ酸やスポーツ飲料に強い企業として米国ではよく知られている。
特に機能性素材については、世界トップクラスのワントップソリューションカンパニーであり、プロテインやフレイバー素材の開発や受託製造を行い、素材数も多岐に渡る。
その取り扱い品数や製造量は日本の比でなく、今後は、Prinova社が得意としている素材を日本に持ってくることも、日本の食品企業が海外進出する際にPrinova社の成分や素材を利用することもできるという。
スポーツニュートリション市場、中国と日本の伸びが予測
では実際の米国スポーツニュートリション市場はどのような現状なのか。
各国のスポーツニュートリションの市場規模を調査(2019年度)すると、日本は単一国としては世界第4位で692億円、第3位がオーストラリアで730億円、第2位がイギリスで1,265億円、そしてアメリカは第1位で1兆1579億円となっている。
圧倒的な市場規模のアメリカは、日本とは6倍の差を誇る。アメリカの市場は重要であり、そのトレンドは世界に影響を与える。
スポーツニュートリション市場が、2025年にどのように変化するかを予測した調査によると、コロナにより多少不安視される声もある。
しかし、市場規模は2倍の5兆5697億円になると予測されており、特に中国と日本の市場が伸びが予測されている。
市場の伸び率を国別でみると、中国が最も成長が見込まれているが、日本においても高齢者対策としてスポーツニュートリションが市場の主要トレンドの一つになるのではいかと予測されている。
一般の人々の「運動習慣」が増加傾向に
現状としてはスポーツニュートリションの利用者はアスリートやボディビルダーなどプロフェッショナルの人が対象となる傾向が強い。
こうした層は人口比でみると多くはないが、スポーツニュートリションの使用頻度が非常に高い層になる。しかし今後は、一般の人にもスポーツニュートリションの使用が広がることが期待されている。
これは日米ともに一般の人々の「運動習慣」が増加傾向にあるため。また、コロナの影響も追い風になるかも知れない。
米国での調査の結果は、一般的には男性の方が、運動習慣が高い傾向にある。そのため米国でスポーツニュートリション商品を開発すると、どうしても男性を意識しがちになる。
一方、日本の場合「男女ともに運動習慣が増加傾向」にあり、「誰と運動するか」で調査すると、米国では「一人で(個人)」が圧倒的に多いが、日本は特に女性において「フィットネスクラブ、サークル」などコミュニティの利用率が高い。
女性の「口コミ」などによって新たなスポーツニュートリションが広まる土壌が十分にある。
高齢女性のスポーツニュートリション
また「いつ運動するか」という調査では、「①平日の朝 ②平日の夕方 ③休日の日中」が多いパターンで、日米ともに高齢になる程午前中に運動する傾向が高いという共通点がある。
これらの調査の結果を踏まえ、日本では「高齢女性の朝食に代わるようなスポーツニュートリション」という提案もできる。
実際、「高タンパク質食品」のニーズや知名度は高まっているが、女性が好む「温かいもの」はまだ多くない。
米国の場合、シリアルなどが人気だが、日本ではあまり好まれず、それよりも「高タンパク質の温かいパン」や「高タンパク質の温かいスープ」などが市場に出てくることが期待されている。
実際、運動前に食事によって体を温めておくことは、運動との相乗効果も期待できるし、そうした成分はいくつもある。
一方、米国では食事の温かさや美味しさよりも利便性を追求した食品やレンジで温めるだけの簡単な食事が相変わらず人気。
特にミレニアム世代に至っては、サプリメントも錠剤タイプではなく、グミタイプのものに人気が集まっており、30代でも「(グミによって)食べるサプリメント」は日常になってきている。
このトレンドは日本の若者にも起こり得るかもしれない。Nagase Food ingredientsでは、このようなさまざまな提案が可能なため、ぜひ活用して欲しいとまとめた。