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2020.11.16機能性表示食品、現状と今後の展望~食品開発展2020セミナー

2020年11月16日~18日、東京ビッグサイトにて「食品開発展2020」が開催された。この中から、武田猛氏(㈱グローバルニュートリショングループ)の講演「機能性表示食品の現状と今後の展望」を取り上げる。

機能性表示食品、「売れている」商品とは


機能性表示食品における問題点として「苦労して機能性表示を取得したのに、売り上げが思ったほど伸びていない」というものがある。

また、「取得しても結局広告の制限があり、思ったような機能性表示ができない」という声も多く寄せられている。

そうした中でも「売れている」「快進撃」の商品はあり、それらには以下の特徴がある。

1、商品の露出が多い(広告宣伝費の問題がある)
2、消費者から見て新しい発見がある
3、利便性が高い(いかに継続性を高められるか、簡便であるかなどの工夫がなされている)。

11月10日現在、3508商品(275成分)の機能性表示食品の登録があるが、275という成分数からみて、同じ機能性関与成分に偏っている傾向がある。

これは原料メーカーから素材を購入する形で機能性表示に挑戦している企業が多いことを意味している。

しかし、やはり機能性関与成分が同じである以上、SR(システマティック・レビュー)も同じになってしまうため、ヘルスクレームだけでなくパッケージも含む販売戦略において差別化が難しくなる。

「逆算式商品開発」の必要性

すでにSRが認められている成分で機能性表示を取得することを考えるのは悪くないが、やはり商品のアプリケーション(錠剤サプリメントなのか、ドリンクなのか、など)で工夫する。

また、同じ機能性であっても訴求の文言に一手間かけるなどしなければ、機能性表示を取得しただけでは売り上げを期待するのは難しい、と武田氏。

これから機能性表示食品に挑戦するのであれば、最初にどの成分でどの訴求で勝負をかけるのか最初から計算する「逆算式商品開発」を行う必要があるのではないか。

機能性表示食品の成功の土台には「サイエンス」としてエビデンスや試験が適正が求められるし、法規制の遵守を条件絶対とし、その上でビジネスとしての機会を最大化する必要がある。

特に、届出についてこれまで「受理」という言葉が使用されてきたが、正確には「到達」に過ぎない。受理後も表示に関する責任を企業は負わなければならない。

たとえ原料会社から原料の提供を受けていても責任は届出企業にあるため、制度について今一度理解を深める必要がある。

「EFSAのヘルスクレーム」を徹底的に研究すべき

機能性表示食品の最近のトピックスはキリンの「プラズマ乳酸菌」の5品目。これまで取得が難しいとされてきた「免疫機能」で認められたことが話題になっている。

受理の背景には欧州食品安全機関が発行しているEFSAの免疫系のヘルスクレームを参考にしたことが強かったのではないか、と武田氏。

というのも消費者庁のホームページで公開されている届出書類に「アウトカムの設定にあたっては、欧州食品安全機関(EFSA)が発行しているガイダンスを参考にした」と記載がある。

コロナを意識しこれから「免疫」で機能性表示を目指すのであれば他社も「EFSAのヘルスクレーム」を徹底的に研究するべき。

EFSAでは腸の健康・抗酸化・体重管理・身体能力などについても科学的根拠に関するガイドラインを出している。これらも大いに参考になる。

機能性表示食品制度は年々進化している。特に検証事業の報告書が制度や受理に大きな影響を与えているため、ガイドラインだけでなく、検証事業報告書も必ず精読した上で申請すると、新成分・新機能であってもまだまだ伸び代がある、と武田氏。

消費者庁「事後チェック指針」を踏まえた留意点


また、柿野賢一氏(健康栄養評価センター)は「新たなヘルスクレームの科学的根拠をまとめる際に、消費者庁「事後チェック指針」を踏まえた留意点とは?」について以下のようにまとめた。

トクホでは「測定可能な体調の指標」「身体の生理機能、組織機能」が取り扱い範囲のメインであったが、機能性表示食品では「身体の状態を本人が自覚でき、一時的であって継続的、慢性的出ない体調の変化の改善に役立つ旨」というものがある。

そのためトクホにはなかった「一時的なストレス」「疲労感」「睡眠サポート」などが機能性表示には多く認められていることが特徴といえる。

一方で「身体の状態を本人が自覚でき、一時的であって継続的、慢性的出ない体調の変化の改善に役立つ」案件については、消費者庁によって今年の4月1日から運用が開始されている「機能性表示食品に対する食品表示等関係法令に基づく事後的規制の透明性の確保等に関する指針(事後チェック指針)」を今まで以上に精読すべきである。

常にエビデンスチェックが必要

例えば、この「事後チェック」には「主要アウトカム評価項目は、通常1つに設定する」ということが明記されているが、主要アウトカムは一つであるべきで、表示する機能性について有意な結果が得られていないものはだめ。

表示する機能について主要アウトカムが複数設定されている場合に、いずれかのアウトカム指標が有意な結果でないといった混在がある場合はそれを説明しないといけない。

他にもヒト試験における群間有意差の条件について、消費者庁が出しているガイドラインの条件を全てクリアしているかなどについても、一度受理されたものについても再確認する必要がある。

ここに来て届出撤回の件数が増えているため、届出企業はやはり「受理」されたと安心することなく、常にエビデンスのチェックやアップデートされる制度の情報を注視する必要がある、とした。

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