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2021.5.25新型コロナによるヘルスケア市場の変化~DSMオンラインセミナー

2021年5月25日(火)、web配信にて「第3回DSMサスティナビリティ経営フォーラム 持続可能な食料システムと栄養、健康な暮らし」が開催された。この中からMr. Peter Wennstrom(Healthy Marketing Team  Founder & Senior Strategy Consultant)の講演「パンデミックがもたらしたヘルスケア市場の変化」を取り上げる。

新型コロナで、人々の「食」意識に変化


新型コロナウイルスの終息が見えない中、食品におけるトレンドが大きく変わりつつある。

消費者はこれまで以上に「賢く選ぶ」姿勢へと変わりつつある。企業側は「消費者がその商品を本当に必要としているのか」「消費者がその商品のメリットを理解しているのか」といった、購買につながるモチベーションを高める必要がある、とPeter氏。

さらに「原料や材料の透明性や自然環境・社会貢献」「ブランドへの信頼」なども今まで以上に高めていく必要がある。

また、これまでは「食」と「薬」は全く別のものと考える消費者が多かった。

しかし、ここにきて多くの人が「病気の原因のほとんどが間違った食生活や生活習慣にある」ことを理解しはじめている。

消費者は健康における食品の役割について日々情報を得ようとしているだけでなく、病気を食品によって予防しよう、あるいは健康を増進する食品や食生活を得よう、と意識を変えてきている、とPeter氏。

世界的にサプリメントの売り上げが急増

また、栄養学の発展によって、食品・食生活・ライフスタイルを調整することや正しく選択することで、病気が予防できるだけでなく、治療や回復までカバーできるという考えも深まりつつある。

新型コロナウイルスには特効薬もなければ、完璧な予防法もなく、個々人が「免疫」を高めることや精神的な健康度合いを高めていくことが必要だと一人ひとりが理解を進め、調べ、行動変容を起こすようになっている。

世界各国でサプリメントの売り上げが大いに伸びているが、日本でも「サプリメントをよく摂取する」と答えた人はコロナ前は11%だったのが45%まで増加している(楽天インサイト)。

こうした現状を踏まえ、これからのトレンドとして食品または健康食品には次の6つの戦略を意識して取り組むことが、ヒットや差別化の鍵になるのではないか、とPeter氏。

食事は未来への投資

その6つとは
①アクティブニュートリション
②サスティナブルニュートリション
③ターゲットニュートリション
④ライフステージニュートリション
⑤ナチュラルニュートリションン
⑥テクノロジーニュートリション

詳細は以下の通り。

① アクティブニュートリション

食品がただのエネルギーや楽しみではなく、あくまで体の構成要素で、しかも積み上げていくことで疾病予防になるということを消費者に積極的に伝えていく力のある食品のこと。

食事は未来への投資であるという意識づけを商品によって行うことが大切で、それはサプリメントでも健康食品でも同様ではないか。

実際、日本だけでなく韓国、中国などアジアの他国でもサプリメントの売り上げは大幅に伸びており、食事によって健康を維持しよう、高めようというニーズが非常に高くなっている。

② サスティナブルニュートリション

日本でもサスティナブルな商品が増え、人気も高まってきている。プラスティック等の廃棄物の削減、企業としてより社会的責任を果たす姿勢が求められている。

消費者はよりサスティナブルな製品を購入することで自分たちが健康になるだけでなく、社会に貢献したいと考えるようになっている。SDGsなどを考慮した購買をすることが正しい消費だと理解しつつある。

戦略的に食品を摂取


③ ターゲットニュートリション

これまで製薬や医学に独占されていた栄養素が食品の分野に降りてきている。例えば睡眠の問題を解決する成分やストレスを緩和する成分が食品中に含まれている。

それらの成分が医療品としてではなく私たち消費者が個人の判断で選び摂ることができるようになっている。それぞれの悩みなどにターゲットを絞り解決策を提案するような商品設計が求められているのではないか。

④ ライフステージニュートリション

高齢化は日本だけでなく世界各国で進んでいるが、その分、個人の人生は多様化している。アクティブなシニア世代もいれば、余暇を楽しんでいるシニアもいる。

ストレスフルな世代は現役世代だけでなく、若者も同様だ。このように多様化する世代のニーズに寄りそう食品が求められている。

例えばシニアにターゲットを絞ったスポーツニュートリションや、若者をターゲットにしたブレインフードなど、戦略的に食品を摂取することを提案することが重要だ。

消費者の視線で商品やサービスを開発

⑤ ナチュラルニュートリション

自然界や生態を守る食品が求められており、企業の透明性やクリーンな製造プロセスを開示することが何よりも重要になってきている。

ナチュラルな原料同士の組み合わせ、ナチュラルな原料にサスティナブルなパッケージなどを加えることで、消費者は自然界への配慮を購入している気持ちになれるのではないか。

⑥ テクノロジーニュートリション

今私たちはスマホを中心に動いていると言っても過言ではない。スマホを活用し、健康診断と連動したり、個別栄養相談、個別ダイエット相談など、消費者の健康管理をよりパーソナライズして解決することが求められている。

いずれにせよ、これまでのようにいかに魅力的な商品を作るかという商品ありきの話ではなく、あくまで消費者主体、消費者の視線で商品やサービスを開発すること。

そして医薬や制約ではなく栄養で解決することが求められており、その実現の成功が他者との差別化や新たなトレンドにつながるのではないか、とまとめた。

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