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2021.10.6超高齢社会、フレイル予防で機能性表示食品の開発を~食品開発展2021セミナー

2021年10月6日(水)~8日(金)、東京ビッグサイトにおいて「食品開発展2021」が開催された。同展示会セミナーより、矢澤一良氏(早稲田大学部門長)の講演「超高齢社会の日本!アクティブシニアに向けた機能性表示食品の開発」を取り上げる。

健康寿命を延ばす鍵が「アクティブシニア」


現在の日本において「健康寿命の延伸」は重要政策とされている。健康寿命を長くするために人々の健康意識は高まっており、健康食品や機能性表示食品へのニーズも拡大している。

こうした中、今本当に求められる機能性表示食品とはどのようなものか? 今日本に求められている「食品機能」や「健康寿命の延伸につながる機能性表示食品」の届け等における最前線について解説が行われた。

近年の研究で、健康寿命を延ばす鍵になるのが「アクティブシニア」なのではないか、と話題となっている。

アクティブシニアの正確な定義は存在しないが、概ね65歳から75歳の世代を指していると考えられ(現時点のいわゆる団塊の世代)。

このアクティブシニアの時期をいかに健康に過ごせるかが、その後の健康寿命に大きく関係している可能性が非常に高い。

「健康寿命」と「平均寿命」の間に大きな隔たり

超高齢化社会の日本において「健康寿命」と「平均寿命」の間に大きな隔たりがあり、人生の最晩年の約10年を要支援・要介護状態で過ごす人が多いことが知られている(男性では約9年、女性でも約12年)。

しかし、アクティブシニアの期間を健康的に過ごすことができれば、要支援・要介護状態を免がれ、自立したまま晩年を過ごせる可能性は高い。

そのための具体策が、アクティブシニア期に起こりやすい「プレフレイル」をいかに予防するかである。

フレイル(脆弱)についても明確な定義はないが、一般的には健康と要介護の中間とされる。

フレイルにも様々なレベルがある。明らかなフレイルに陥る前の「プレフレイル」のところ で気づきと適切な介入があれば、十分に「健康」に戻れる。

そのためプレフレイルの発見とプレフレイルの時期にいかに予防(セルフメディケーション)意識を高くして過ごすか、が重要となる。

「コロナフレイル」が新たな問題に

アクティブシニアの中でも特に後半の70~75歳においては、機能性表示食品なども活用しながらセルフメディケーションを実践することでプレフレイルの早期発見、早期改善につながる。

この2年、コロナウイルスの感染拡大により「コロナフレイル」が新たな問題になっている。

そもそも私たちは活動量が落ちることによりフレイルに陥りやすくなる。特に人の場合、社会的・精神的なフレイルがきっかけとなって身体的・認知的フレイルへと進んでいく。

アクティブシニアの世代がプレフレイル・フレイルに陥る最初のきっかけは「定年退職」により社会とのつながりが弱くなることである。

コロナによってそれが早まったり突然起こったりする人も多く、突如社会との繋がりを断たれた人たちに「コロナフレイル」が起こっている。

メタボよりもフレイル予防の方が重要


すでに退職をしていた人たちであっても、自粛生活を余儀なくされたことで、コロナフレイルに陥っている人は多い。

ある調査によると、シニア世代の外出の割合は平均で週1回程度にまで減少していることが報告されている。

コロナにより社会とのつながりが弱くなることで、栄養面、身体面、認知面とフレイルが進むことが懸念されている。

さらに問題なのは、コロナによるフレイルや健康状態の悪化は、加齢によるものよりスピードが早いことである。

これまで、健康寿命を短くする要因として生活習慣病の中でもメタボリックシンドロームが問題視されていた。

しかし、フレイルがみられる人が自立した生活を損失するリスクはメタボの2.4倍とも試算され、メタボよりもフレイル予防の方が重要ではないかと考えられはじめている。

多くの商品が実はフレイルに関与

現在、機能性表示食品において「フレイル」をキーワードにして販売されているものはないが、多くの商品が実はフレイルに関与している。

例えばオーラル系、メンタル系、歩行系、認知系はフレイルに関与しているものが多い。さまざまなメディアで「フレイル」や「コロナフレイル」というキーワードが取り上げられている。

しかし、まだまだメジャーなキーワードではないため、アクティブシニアに向けての商品開発は、具体的なサポート内容を示した方が効果的である。

例えば「オーラルフレイル」ともいわれるが、口腔機能の低下は全身のフレイルリスクを高める。

「オーラルフレイル」という表示ではなく、「口腔環境を良好に保つ」「歯茎を丈夫に保つ」など、具体的な表示の機能性表示食品が市場を拡大しつつある。

若い人にもフレイルが増えている

フレイルをターゲットにした商品開発は治療や治癒の境目になりがちで、商品開発や届出チャレンジをためらう企業も多い。

しかし、エビデンスと学術的なコンセンサスが揃っていれば必ずしも受理されないという事はない。

例えば「頻尿」では問題があるが「排尿に行く煩わしさ」という言い方で届け出が可能になった事例は知られている。

自覚症状のアウトカムでこれまでできなかった届け出がこのように可能になっている。

現在高齢者の機能性表示食品に注目が集まっているが、実は若い人にもフレイルが増えている。

ストレスフルな生活を強いられているのは全世代共通の問題であり、免疫力の低下、内分泌系の低下、運動量の低下など全ての人がフレイル状態に陥る可能性がある。そのため、高齢者にとどまらない商品開発をするのも良いのではないかと話した。

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