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2022.9.9機能性表示食品の領域拡大に向けて~日本抗加齢学会×東洋新薬オンラインセミナー

2022年9月9日(金)、web配信にて日本抗加齢学会×東洋新薬オンラインセミナー「拡大する機能性表示のヘルスクレーム・健康寿命100年に向けて」が開催された。この中から、細山浩氏(特定非営利活動法人 日本抗加齢協会 事務局長)の講演「健康長寿に向けて機能性表示食品の領域拡大」を取り上げる。

平成15年に抗加齢の普及を目指し発足

日本抗加齢協会は、抗加齢医学(アンチエイジング医学)に携わる医師が中心になり、平成15年4月に発足。

(一社)日本抗加齢医学会と連携しながら、人々の抗加齢および健康と生きがいの増進に関する普及や啓発活動を行なっている。

抗加齢医学会には約8000人の医師などが所属、また抗加齢協会には賛助会員として関連企業142社が参画し、共に抗加齢の普及を目指している。

その主な取り組みの一つにコンサルティング業務があり、近年は特に機能性表示食品制度の支援事業に関する依頼が殺到しているという。

具体的には、消費者庁からの指摘事項の解説や、研究レビューの作成協力などのニーズが高いという。

求められる「表示範囲の拡大」

ここ数年、機能性表示食品について届出側の企業だけでなく消費者から求められていることは「表示範囲の拡大」である。

特保食品よりもそのハードルは下がっていて自由度は高いが、それでもこれまで受理されていない表示に挑戦する場合は、研究レビュー作成のハードルが高く、被験者の境界域判定が難しくなる。

そのあたりの諸問題を解決すべく、抗加齢協会としてもコンサルやサポートに力を入れていると話す。

一方、消費者庁との連携にも力を入れており、以前は提出書類のケアレスミスを中心とする書類不備が多く、差し戻しに時間がかかっていたが、現在は消費者庁から業務委託される形で、「届出事前点検業務」を抗加齢協会が行なっているという。

作業軽減や迅速化を目指す

現時点では、届出に不備がない場合、消費者庁に資料が提出されてから50日を超えない期間に申請の受理または不受理について公表することを目標としている。

抗加齢協会を含む消費者庁と連携をしている団体により事前確認を受けた届出の場合は30日で回答するという方針で、回答までの作業軽減や迅速化を目指している。

さらに今後は、消費者庁が認定した認定団体の確認を経た届出については、消費者庁での確認に要する期間を最終的に0日にすることが目標とされている。

認定団体である健康食品産業協議会、日本健康・栄養食品協会、日本通信販売協会、日本抗加齢協会で「連絡協議会」を設置し、今後どのように事前確認を進めていくか、新制度の要綱作成を進めており、来年には本格化できる予定だという。

機能性表示食品の領域拡大へ

こうした中で、抗加齢協会としては消費者庁がオブザーバーを務める検討会や軽症域の取り扱いや領域拡大に関する検討会の実施など、さまざまな勉強会や情報交換会の活動を行なっている。

特に機能性表示に取り組みたい企業の多くが「風邪の予防」「免疫の正常化」「抗酸化」「アンチエイジング」に関する表示に挑戦したいと考えており、医療受診の機会を損失せずに、機能性表示食品などを用いたセルフメディケーションで対応できる領域について明確にガイドラインを作成していくことが重要だと考えているという。

「健康維持」や「健康増進」さらに「アンチエイジング」の定義は極めて曖昧である。しかし市場ニーズは高まるばかりで、法規制との兼ね合いを見据えながら、領域拡大に業界団体が取り組んでいくことが、機能性表示食品の領域を広げることに役立つのではないかと話す。

受理件数が増えず差し戻しが増えている

また、すでに届出が受理されている領域についても、軽症者のデータが使えるものはそれを使ってエビデンスや研究レビューを再構築することで、エビデンスの確度が上がり、届出表示の範囲の拡大を目指すことも可能になる。

今後は、抗加齢協会など団体で連携し、各事業者に表示拡大したい領域の希望を募り、その領域での表示の可能性を団体が主導して調査を行う。

さらに、消費者庁をオブザーバーに迎え、有識者による検討会を開催するなどして、ガイドラインに反映させる流れが実現することを目指しているという。

すでに受理がなされている「免疫機能」の届出については、多くの事業者がチャレンジしているが、受理件数が増えず差し戻しが増えている現状だ。

機能性表示における免疫のエビデンス

日本抗加齢協会では、免疫を専門とするアカデミアの先生方で消費者庁をオブザーバーにした検討会を実施し、機能性表示における免疫のエビデンスについてどのように考えるべきか、ガイドラインに近い指標を公表している。

その指標によると、

  1. すでに受理されている樹状細胞の活性化に加え、食細胞活性、NK細胞活性、T細胞(CD4T細胞)増殖性・活性化、分泌方IgA抗体濃度なども免疫指標として有用である。
  2. 他にも科学的根拠が説明できる指標を用いてかまわないが、これらの免疫指標が複数動くことが望ましい。
  3. 単一の指標でも、さらに下流に応答した免疫指標に類似した指標(サイトカインなど)が動き、局所および、体全体のクリニカルアウトカムが合理的に説明できれば、免疫全体を調整していることの根拠となり得る。
  4. 用いた指標が免疫全体を調整することを科学的に説明できることが重要であり、科学的に免疫全体を調整する作用機序を記載することが必要である。
  5. 作用機序とする免疫指標に関して、その指標の欠損症の臨床症状やノックアウトマウス等のデータがあれば記載することが望ましい。

とし、ぜひ参考にしてほしいと話す。

免疫以外にも、更年期症状や認知機能に関する指標が求められている。

そのあたりも同様に、指標を提示できるような活動をしていくことで、今後も機能性表示食品制度の認知度をあげ、機能性表示食品の普及、抗加齢による健康増進の普及に役立ちたいと話した。

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