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2023.6.27口腔機能の維持・改善を目指した機能性食品開発の実際CPCC主催 ウエルネスフード推進協会後援セミナー

2023年6月20日(火)、CPCC主催ウェルネスフード推進協会後援セミナー「口腔機能の維持・改善を目指した機能性食品開発の実際」がオンライン&会場のハイブリット形式で開催された。ドライマウス研究会/抗加齢歯科医学研究会 代表の斎藤 一郎氏による口腔機能の最前線について取り上げる。

ドライマウス研究会/抗加齢歯科医学研究会 代表 斎藤 一郎

兼ねてより「ドライマウス」という言葉を用いてきた斎藤氏であるが、ドライマウスという言葉はなかなか普及せず「ドライアイ」と比べて10年ほど遅れ、ようやく最近になって知られるようになってきたと話す。そもそも「口が乾いたからといって命に関わるわけではなく多くの人が放置している」が、乾きがひどく内科に行ったとしても、医師からは「こまめに水分補給をしてください」で終わってしまうケースがほとんどだという。実際、口の乾きを抑え唾液を分泌するためにどんなアプローチが必要か、その手法がきちんと確立されているわけではない。そこで口腔外科医や歯科医が「ドライマウス」を定義し、口の乾きで悩む方の不快感緩和や予防医学の発展に繋げられるように「ドライマウス研究会」が立ち上がったと説明。

ドライマウスの主な原因は「老化」「糖尿病」「シェーグレン症候群(50万人いる難病指定の病気)」「腎不全」「更年期障害」「ストレス」「筋力の低下」「薬の副作用」などがあることが解明されてきている。しかし原因が一つであることはなく、複合的であるケースがほとんどだ。そして口の乾きを改善するための医薬品は現在のところない。シェーグレン症候群に限り、唾液分泌促進剤が処方されるので多少改善が期待されるがそれ以外が原因で口腔内が乾く場合には薬は適用されない。「口が乾いても死なない」と軽視されがちだが、実は口腔内が乾くだけで美味しく食べられない、うまく喋れない、風邪や虫歯、口臭、歯周病、そして免疫力の低下などのトラブルに見舞われやすくなりQOLは著しく低下する。シューグレン症候群も40〜60代の女性に多く発症するが、更年期女性は「ドライシンドローム」といって髪の毛、肌、膣、口腔内など全てに乾きが生じるため、ドライマウス研究会に所属する医師たちの中には産婦人科の先生とタッグを組んで対策を講じるなど、予防や緩和に多角的なアプローチを模索しているという。

20~60代の男女2万人を対象に「口の中の乾き」について調査をしたところ「口の中が乾いたり粘ついたりすることがある」と回答した割合は49.3%で、年齢が上がるほど乾燥を自覚する人が増えることは明らかで、人口の半分は口の中が乾いているのではないかと斎藤氏。高齢化・長寿化が進むにつれてセルフケア・セルフチェック・セルフメディケーションが求められるが、その一つとしてドライマウスの改善を加えることも重要だと訴える。人生の最後まで残したいのが「口の役割」だ。食べる、話す、笑う、味わう、歌う、飲み込む、噛み砕くなど、口の役割は大きく、感覚器や消化器としての働きだけでなく表情を作る役割としても欠かせない。研究を重ねるほど口と全身の老化度が一致していることもわかってきている。高齢者の歯の本数と認知機能低下には一致が見られるし、握力と噛む力が一致していることもわかってきている。歯周病とアルツハイマー型認知症が密接に関係していることや、歯周病と糖尿病、歯周病と脳梗塞や心筋梗塞の関係も解明されつつある。口腔の専門家としては「人は口から老いる」と考え、オーラルフレイルを周知させることが重要ではないか、オーラルフレイルを改善することで要介護までの時間を延伸することができるのではないかと話した。

噛むことによってストレスが解消されることや、唾液分泌が促されることは知られるようになってきていて、スポーツ選手などがチューイングを取り入れているのもよく見かける。噛むことは口の乾きを解消するために非常に重要で、斎藤氏は現在口腔内の環境を整える機能性食品の開発をしたいと考えているという。高齢になるほど、やわらかいものばかりを選択的に食べるようになるが「歯応えがあって美味しいものを」を食べることでオーラルフレイルは予防できると斎藤氏。機能性表示食品の人気や需要は高い。小児の虫歯は驚くほど減っているが、一方で高齢者の虫歯の割合は増えていて、その要因の一つとして「よく眠れる」などの機能性乳酸菌飲料の摂取後、歯磨きをせずに寝ているケースなどもあるのではないかと指摘。

特に唾液の分泌を促すような機能性表示食品の開発が重要と考えていると話すが、その理由として唾液の分泌によって「口腔内衛生状態の改善」「咬合力の維持」「舌口唇運動機能の維持」「舌圧の維持」「咀嚼力の向上」「嚥下機能の改善」などの効果が得られるからだ。そこで、「唾液分泌現象の諸症状に対して期待できる有効成分を含み」「保湿効果を有し、食品として摂取できる」機能性表示食品の開発が求められていると訴求。現時点で唾液分泌促進効果が期待できる成分として「コエンザイムQ10」「大豆イソフラボン」「ケルセチン」「レスベラトロール」「黒糖ポリフェノール」「シトルリン」「オルニチン」などがあるという。しかしヒト臨床試験で口腔機能の維持が検証されている健康食品は非常に少なく「還元型コエンザイムQ10」と「エリオジクチオール-6-C-グルコシド」などのほか、乳酸菌の一部やラクトフェリンなどがあるが、それを「高齢者の口腔ケアに必要なスペック」に転換していくにはまだまだハードルがあると説明。

基本的には飴やガムやグミの形状で、舌から効率的に機能性成分を吸収できることが望ましい。もしくは咀嚼を促す形状で舌から効果的に機能性成分を吸収するだけでなく嚥下を必要とすることも求められる。抗酸化成分が含まれていて唾液腺が刺激される設計であることも必要だ。さらに口腔内に安全な酸性度、プラークや汚染物を絡めとれる性状、カンジダ菌などへの抗菌効果、口腔内に残遺しても虫歯などの影響がない成分、アルコール等の刺激成分が不使用であることなどが求められる、と口腔ケアに必要な機能性食品のスペックについて解説。現在高齢者向けの「口腔化粧品」が展開されているが、これらは「吐き出す」ことが求められていて飲み込むことができないものがほとんどだという。 口腔機能の低下(オーラルフレイル)と老化や要介護の関係を周知させる活動を続けるとともに、唾液の重要性や唾液分泌を促し口腔機能全体を改善する機能性表示食品の開発に賛同してくれる企業や専門家とチームを組み、口腔内のセルフメディケーションの手法を確立させていきたいと語った。

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