2024年5月22日(水)〜24日(金)、東京ビッグサイトにて食品素材や食品添加物に関する情報が一堂に集結する「ifia JAPAN2024国際食品素材/添加物展」が開催された。食品加工において不可欠な素材や添加物について、安全性や美味しさは常に研究改良されているが、その最前線についてさまざまな情報が発信される場となった。ここでは「植物性たん白食品」について取り上げる。
一般社団法人日本植物蛋白食品協会 専務理事 松本 隆平
日本植物蛋白食品協会はまもなく創立約50周年を迎える業界団体だ。昭和50年、資源制約の厳しい日本において、植物性たん白の食品利用が求められ、農林水産大臣からの許可を受けて発足。2013年に一般社団法人に変わり、国内の植物性たん白のあり方を研究サポート、牽引し続けている団体だ。現在は主に植物性たん白の普及啓発、消費、企画、技術開発、国内外の情報の収集を行なっているという。
現在さまざまな植物性たん白が知られているが、協会では主に「大豆」と「小麦由来」のものを扱っている。また、JAS(日本農林規格)では「大豆や小麦を加工して、たん白質の含有量を50%以上に高めたものを植物性たん白質」と定義しているという。つまり国内の植物性たん白は、大豆や小麦などの食用植物種子に含まれるたん白質を、近代的な製法により濃縮ないし分離、あるいは抽出して作られているものを指す。製造された植物性たん白質は、主に食品の素材として使われる。現在「製品」として流通している植物性たん白質には「大豆系」も「小麦系」も「粉末、粒状、繊維状、小麦系は粉末、粒状・ペースト状(冷凍品)」がある。この植物性たん白にはさまざまな機能があり、食品加工に利用することで、主に「栄養強化」「脂肪分離防止」「結着・離水防止」「保型性向上」「食感改良」「噛みごたえ」「焼き縮み防止」などの効果が得られる。いずれにせよ植物性たん白は「幅広い食品に流用できる」「成分が明確であるため栄養計算が容易」「安全かつ衛生的で保存が簡単」というメリットがある、と解説した。
国内の主な植物性たん白質の利用について、粉末状の大豆たん白質は「ハンバーグ、ミートボール、ソーセージ、ハム、水産練製品、健康食品」などに使用されることが多く、粒状の大豆たん白質は「そぼろ、肉まん、餃子、フライ食品、惣菜、菓子類等」に使われることが多い。また、粉末の小麦たん白質は「麺、餃子やシュウマイの皮、パン屋中華まん、菓子類」に多く使われ、ペースト状の小麦たん白質は「水産練製品、生麩、食肉加工品」などに使われているという。
大豆たん白も小麦たん白も健康に寄与する素材で、コスト面から考えても、最近課題となっている食糧事情から考えても、これからますます重要な食糧資源と考えられ、世界からもその活用が期待されている。また、栄養バランスの良い食事と健康を維持するために植物性たん白質を動物性食品の代替として活用する、両者を組み合わせる、といったことが必要と考えられるようになっている。特に、植物性たん白質は優れたたん白源であるため、動物性たん白質と組み合わせることで理想的なアミノ酸バランスを達成することが可能だ。植物性たん白質は油脂をほとんど含まないので、食品の油脂分を低くすることにも役立ち、結果、低脂肪、低カロリーの献立を実現することもできる。
さらに植物性たん白質にはさまざまな生理機能が報告されている。主に大豆たん白質に期待されているのが「コレステロール調整作用」「肥満改善」「血圧降下」「免疫増強」「筋肉増強」などで、大豆たん白質の中でもイソフラボンには「骨密度の低下抑制」「更年期障害の軽減」「循環器系疾患の予防」などの機能が報告されている。また小麦たん白質には「血清コレステロール調整作用」「食後血糖値上昇の抑制作用」「胃・腸機能の調整作用」などが報告されており、超高齢社会にも貢献する働きが多くある。 国内の植物性たん白の市場規模は生産量が4万8000tで、内訳は大豆が4万2000t、小麦が5600tとなっており、常時5万t程度の国内生産量がコンスタントにある。一方、輸入の植物性たん白も5万2000tあるので、合計すると10万tぐらいの市場規模があり、そのうち大豆が6〜7割程度、小麦が3割程度になっているという。あらゆる場面で価格が高騰しているが、畜産物の高騰も著しく、ここは植物性たん白で代替できる部分もあるのではないか、と話す。健康面、価格面、機能面など、さまざまなメリットがある植物性たん白をぜひ有効活用してほしいとまとめた。