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2024.8.19機能性表示安全性シンポジウムウェルネスフードジャパン2024

2024年7月16日(火)〜18日(木)、東京ビッグサイトにてウェルネスフードジャパン2024が開催された。国内外の健康食品・機能性食品素材産業の業界関係者が4万人以上足を運び、活発に情報交換が行われた。

東京大学名誉教授 食の信頼向上を目指す会代表 唐木英明

小林製薬の紅麹問題で、食の信頼が揺らいでいる。しかしこのような問題は起こるべくして起こったと言っても過言ではない。「国の審査がない機能性表示食品はそもそも問題」という一方的な報道が多いが、そもそも日本の健康食品に関する制度は「極めて複雑」で、また「健康食品全般」が食品衛生法では対応できない部分がある、と唐木氏は指摘。機能性表示食品による事故は今回の紅麹が初めてであるが、これまでも健康食品による健康被害は度々起こっている。そして大部分の健康被害は「いわゆる健康食品」で起こってきた。これは健康食品に関する法律で「安全」が守られるように作られていないからではないか、と唐木氏。健康食品の表示に関する法律はここまでトラブルが起こるたびに強化されてきた。そもそも世の中に「いわゆる健康食品」しかない時代があり、そこから食品衛生法、JAS法、特定保健用食品、機能性表示食品と制度が次々に立ち上がり、健康食品の歴史は「いわゆる健康食品」をなくすために試行錯誤してきた歴史だとも言える。そして現時点でさまざまなルールがあるが、いずれも「表示をするにはどのような決まりを守ればいいのか」というもので、「安全性」について担保されているわけではない。これでは「食の安全」は本当の意味では守れないのではないか、と唐木氏。

紅麹問題は機能性表示制度の問題なのか。今回の「紅麹」は安全性が高いものであることがわかっていて、小林製薬の商品以外で紅麹による健康被害の報告はない。被害報告の原料から検出された青かびが作る「プベルル酸」が原因ではないかと調査が進んでいるが、原因が特定されたわけでもない。しかしこれまでの報告や報道から製造された紅麹が「粉砕」「保管」「混合」「加熱」「包装」のどこかのプロセスで汚染されたのではないか、と考えられる。おそらくHACCAPを遵守しなかったことによる青かび混入が原因であり、今回の問題は食品制度の欠陥ではなく、製造工程でのヒューマンエラーだと推測される。製造工程のルールがきちんと守られていなかった可能性があるのではないか。今回トラブルを起こしてしまった小林製薬の大阪工場はGMP(製造管理及び品質管理の基準)を取得しておらず、安全第一の姿勢とは言えない。GMPを取得して守っていれば防げた事件だったのではないか、と唐木氏は悔しがった。この事件によって機能性表示食品そのものが「悪」とみなされてしまうのは非常に残念であるが、死者が200人を超えている以上、食品あるいはサプリメントに対する消費者の不信感を取り除き、信頼回復するには相当の時間が必要だろうと唐木氏は話す。

一方で、今回の一件だけで機能性表示食品を廃止すべきではないと唐木氏。この事件で「トクホは信用できるけれど、機能性表示は信用できない」というネガティブな報道が目立ったが、トクホと機能性表示の大きな違いに「資料の公開」という点がある。機能性表示が受理されるには、ヒト試験も論文の査読もハードルは相当高く、そしてその受理された資料は、消費者はもちろん誰でも閲覧できるように公開されている。しかしトクホは資料公開されていない。「国のお墨付き」、とされるが、機能性表示は資料が公開されているからこそ、さまざまな角度から議論が起こり常に制度がアップデートされ続け、この意義は大きいという。現在機能性表示食品市場は拡大しているし、多くの人に愛用されている。

これまで機能性表示は「成分の安全性」にばかり目が向き「製造工程の安全性」が語られることは少なかったが、この2つの問題は別にして考えなければならないだろう。そしてサプリメントはそもそも「有効成分を濃縮して継続して飲む」という形態なので、やはり「食品」とは区別する法律を作り、一般食品よりも製造過程を厳しくする、医薬品レベルに管理することが必要ではないか、とした。 今回この「機能性食品安全性シンポジウム」に参加した健康食品産業協議会の田口智康氏は「サプリメントについてまだまだ消費者リテラシーを高めていく必要があるし、安全性や表示についても消費者が理解できるレベルまで落とし込んでいく必要がある」とした。また早稲田大学の矢澤一良氏は「今回の問題はやはりヒューマンエラーではないか。そして真剣に取り組んでいる業界につけた傷はあまりに大きく、業界団体として賠償金を請求するレベル。しかし、団体としてどう信頼回復していくかが大事」と話す。そして唐木氏は「錠剤カプセル、パウダータイプのサプリメントについては、食品とは切り離し例えばサプリメント法のようなものを作る必要がある。そして、そもそもサプリメントが私たちのセルフメディケーションや健康維持に効果があると、明確に定義することからはじめる必要がある。健康の役に立つのか立たないのかわからない、といった曖昧な定義や食品としての位置付けは限界だ」とした。

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