2024年9月30日(月)〜10月2日(水)、東京ビッグサイトにて第23回ダイエット&ビューティーフェアが開催された。今年は「働く女性の美と健康を応援する」をメインテーマに、美容や健康に関係する企業や関係者2万人以上のプロフェッショナルが国内外から集結した。
同志社大学生命医科学部 糖化ストレス研究センター 客員教授 八木 雅之
毎年ダイエット&ビューティフェアで糖化に関する最新情報を解説してくれている八木氏であるが、今年も新しい情報があると話す。
そもそも「糖化」や「糖化ストレス」という概念は、2011年に八木氏らが同志社大学で糖化ストレス研究センターを立ち上げた時に誕生したものであり、当時は「グリケーションストレス」という名前からスタートした。そこから13年が経過し「糖化」という言葉自体がかなり浸透し、多くの人が「糖化」について「何となく知っている」状態にまでなっている。しかし研究は日々進んでいるので「糖化」についていくつか見直しが必要な点も出てきていて、知識を一人でも多くの人に正しくアップデートしてほしいと八木氏は話す。まず「抗糖化」という言葉はあまり使わない現状があるという点。ここについてはあくまで表現の問題に過ぎないが、テレビなどのメディアで「抗(アンチ)」の言葉を使うのが望ましくないという理由から「抗糖化」ではなく「糖化ケア」という言葉を使うように意識しているという。また、糖化の概念を語る際に、食品が茶色く変化するメイラード反応を使って語られることが多いため、「茶色い食品が健康に良くない」という誤解をしている人がいるようだが、ここについてもそうではない、ということを伝えていく必要があると指摘した。また、最も見直してほしい点が「糖化とは何か」ということだと八木氏。これまで糖化とは「糖」と「タンパク質」が結合することで「AGEs」ができる現象が糖化でメイラード反応だと説明されてきて、それは間違いではないが、実はAGEsが作られるのには「糖」と「タンパク質」に加え「アルデヒト」が必要であることがわかってきていて、この3つの結合により「AGEs」が作られるのが「糖化」だとわかってきている、と説明。つまり、「糖」だけが悪者ではなくむしろ「アルデヒト」の量で「AGEs」合成量も変わってくるというのだ。この「アルデヒト」とは一般的にはアルコール類が体内で酸化することで生成される化合物で、これが原因で二日酔いが起こるなど、人体にとっては有害な物質であるのだが、アルデヒトは飲酒にかかわらず、食後高血糖が起こっているときに体内に多く生じる物質であることがわかっていて、とにかく「血糖値を急激にあげ過ぎない」食事方法を心がけるのがアルデヒトを増加させないポイントだと解説。もちろん、糖化が起こって「AGEs」が作られ、これが皮膚老化や骨粗鬆症、糖尿病合併症、認知症、不妊などに影響を与えているという部分には変化がない。糖化は老化、は間違いなく、しかし糖化の原因は必ずしも糖だけでなく、アルデヒトでもあることを知識としてアップデートしてほしいということだ。また、アルデヒトは食後血糖値の上昇時だけでなく、飲酒はもちろん喫煙、脂質の摂り過ぎなどによっても起こるので、今後は糖の摂り方、摂取量だけでなく、体内でいかにアルデヒトを増やさないかについても対策していくことが「糖化ケア」になると説明した。また、現在アルデヒトを減らす食品や機能性成分の研究も始まっているので注目してほしいという。もう一つアップデートしてほしい知識として「人間にとって良いAGEsがある」ということだと八木氏。食品のメイラードから茶色い食べ物がNGという誤解が一部あるようだが、例えば「メラノイジン」というAGEsは体に良いAGEsで、醤油はその代表だと説明。
糖化ストレスの最前線については、体に悪いAGEsを発生させないように「食後の血糖値の急激な上昇を防ぐ」ということで変わりがないが、ベジタブルファースト(野菜を最初に食べる)よりも、米(炭水化物)以外のおかずを先に食べることで血糖値の上昇が抑制できる、と八木氏。例えば、キャベツの千切りをそのまま食べるより、ドレッシング(オイル、酢など)をかけたキャベツサラダの方が血糖値上昇抑制効果は高いという。ベジタブルファーストから一歩進んで、サラダファースト、おかずファーストであれば、例えば餃子(酢醤油)や唐揚げ(レモン汁)でも先に米から食べた時に比べて血糖値の上昇は穏やかになると解説。つまり、さまざまな栄養素を先に摂取しておくことが重要なのだ。実際、ノンオイルドレッシングよりもオリーブオイルを使ったドレッシングの方が血糖値上昇抑制効果は高いこともわかってきていると八木氏。ドレッシングや調味料を上手に使って美味しくいただくことで血糖値上昇抑制は十分可能だということだ。また、スイーツを食べるときにも緑茶と合わせることで血糖値上昇抑制が可能だという。例えば「羊羹」も緑茶とあわせると血糖値の上昇はそこまで起こらない。ただし、お茶を急須から入れたお茶、トクホのお茶や、ペットボトルのお茶と比較した場合、その効果が最も高いのは何と急須から入れたお茶で、この理由はまだわかっていないという。特に「餡子(あんこ)」については「餡粒子」という細胞壁が作られていて、これが食物繊維状態になって澱粉を包んでいる構造になっているので砂糖が加えられていても血糖値が上がりにくい甘味なのではないかと推測していると説明。また、フルーツに含まれる「果糖」も悪者扱いされがちだが、実はフルーツに多く含まれている糖は「ショ糖」で、他にもビタミン、クエン酸、ポリフェノール、食物繊維などが多く含まれているため、結果として週に2食分のフルーツを摂っている人の方が糖尿病リスクが低いというデータにつながっているのではないかと説明。 糖化ケアは必要だが、必ずしも制限したり美味しくないものを食べる必要はなく、やはり重要なのは「食べ方」ではないかと八木氏。「おかずファースト」という食べる順番、調味料を多様に使って血糖値対策、味噌汁や緑茶などと一緒にいただくといった工夫こそ糖化ケアの最前線と言えるとまとめた。