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2025.10.62024年健康食品市場の動向と展望Diet & Beauty Fair 2025

2025年9月16日(火)〜18日(木)、東京ビッグサイトにて「Diet & BEAUTY Fair 2025」が開催された。ここでは健康産業新聞が調査している健康食品の2024年市場規模調査結果について、チャネル別の動向を含めて紹介する「健康食品市場の最新動向」を取り上げる。

健康産業新聞 編集部 記者 長谷川 光司

2024年の健康食品市場は、大きな変化を伴う一年であった。市場規模は1988年以降一貫して拡大を続けていたが、その後、増減を繰り返しながらも、2023年には市場規模が初めて1.3兆円を突破。しかし2024年は紅麹問題の影響で、市場は4.7%の大幅な落ち込みとなり、これは過去2番目の下げ幅であったと報告。

チャネル別の動向にも大きな変化がある。かつて健康食品の主要チャネルは訪問販売やネットワーク販売であったが、近年は通販が主流だった。ところが昨年の紅麹問題により、通販の離脱が相次ぎ、シェアトップを維持しつつも売上は5142億円と減少。一方で台頭したのはドラッグストアで初めて売上が3000億円を超え、チャネル別で2位に浮上した。

総務省の家計調査データを見ても2024年のサプリメント支出額は1世帯あたり月平均995円と、久々に1,000円を割り込んでいる。これは前年比11.3%減と大幅な落ち込みであり、紅麹問題の影響は無視できない。世帯主の年齢別に見ると、すべての年齢層で支出額が減少しているが、世帯類型別では、勤労者世帯が大幅な苦戦を強いられたのに対し、年金受給世帯などの無職世帯は比較的堅調に推移し支出額も多かった。全体の市場が縮小する中でも、特定の層は継続して健康食品を利用していることを示しているのではないか、と分析。

海外動向と日本の市場縮小

財務省の貿易統計によると、日本のサプリメント輸出額は2021年の230億円から2022年には330億円に伸長したものの、2023年には処理水報道の影響で主要輸出先である中国向けが落ち込み281億円に減少。2024年も14%減と回復には至っていない。中国の消費冷え込みも影響しているという可能性も高い。一方ベトナムは徐々に輸出額を増やしていて、今後の成長が期待できるという。

米国で開催された展示会「ナチュラルプロダクツEXPO」の様子からは、世界のトレンドを読み取れるが、昨年から引き続きマッシュルームが大きなブームとなっていた他、日本と同様にウーマンズヘルスやプロバイオティクスが注目を集めていたという。プロバイオティクスは世界の共通トレンドであり、単なるプロバイオだけでなく、シンバイオティクスやポストバイオティクスの提案も増加。その他、コラーゲンはアメリカでは関節系での利用が主流だったが、現在は美容系の市場が拡大している。また、アメリカではサプリメントのグミ化が定着しており、多くのグミタイプの商品が提案されている、と報告。

機能性表示食品制度の改正と課題

国内の動向としては、紅麹問題を受け、機能性表示食品制度に改正が加えられた。昨年9月には健康被害情報の提供が義務化され、実際に報告事例が上がってきている。また、サプリメント形状の機能性表示食品には、2026年8月末までにGMP(適正製造規範)要件を満たすことが義務付けられた。消費者庁は、すでにGMP工場の現地確認作業を開始している。その他、容器包装の表示ルールも変更された。パッケージ上部に「機能性表示食品」と記載し、その近接した場所に届出番号を表示することなどが義務付けられた。また、研究レビュー(SR)で評価した場合は、どの成分の機能性なのかを明確に表示する必要がある。さらに、届出後の自己点検の仕組みも導入され、届出企業には定期的な報告が求められるようになった。新規成分や新規の組み合わせの場合には、「120日ルール」が適用され、受理までの時間が長期化する傾向にある。これらの制度改正により、機能性表示食品の届出ペースは鈍化。2023年度は過去最高の1584品が届け出られたが、2024年4月からの新様式への対応に手間取る企業も多く、届出数は大幅に減少している。

2025年に入ってからの市場動向は非常に不安定だ。家計調査の支出額は月によって大きく変動しており、全体では前年同期比で5.1%増となっているものの、好調とは言い難い。一方で、経済産業省の商業動態統計では、ドラッグストアにおける健康食品販売額は比較的堅調に推移しており、7月には過去最高額を記録した。これはインバウンド需要(NMN、ナットウキナーゼなど)や、国内でのダイエット系・ベースサプリメント(ビタミン、プロテインなど)の需要が高まったことが要因と推測される、と長谷川氏。他にコラーゲン、ヒアルロン酸といった定番素材にNMNやリポソームビタミンCといった新しい素材を加える新提案素材も伸びているという。サプリメントの世界市場は拡大を続けており、2024年の市場規模は1947.7億ドルと推計されている。トップはアメリカ、2位は中国だ。日本は主要22カ国の中で唯一市場規模が縮小しているが、世界的に見ればサプリメント市場は成長産業であることに変わりはないと報告した。

市場を取り巻く環境と新たな動き

今後の展望としては、食品表示基準の一部改正により、栄養素の表示基準値が10年ぶりに見直され、表示の変更が必要となる可能性がある。また、パッケージ前面に栄養情報を分かりやすく表示する「日本版フロントオブパック栄養表示」の導入も検討が進められている。業界団体としては、健康食品の受託企業に特化した業界団体が立ち上がった。何より日本の高齢化はさらに進行している。2024年における65歳以上の人口は3619万人で、総人口に占める割合は29.4%と過去最高を記録した。高齢者世帯は全世帯の半数を占め、健康食品の支出額も勤労者世帯より多いというデータがあるので、この層は大切にすべきだろう。一方で、若年層に向けたAIの活用も重要な課題だ。欧米の若い世代ではすでにAIを使って製品情報を得るのが主流になっている。 2024年の健康食品市場は外部要因による大きな混乱を経験し、市場は縮小し、チャネルの勢力図も変化した。しかし、高齢化社会の進展や特定の分野の活況など、今後の成長につながる兆しも見られるのでそこは期待できるのではないか、とまとめた。

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