2026年2月25日(水)〜2月27日(金)、東京ビッグサイトにて「健康博覧会2026」が開催された。44年以上にわたり健康・美容産業のハブとして進化を続けてきた「健康博覧会」であるが、昨年の2025年は約3万人以上が来場し、今年も約460社の出展社と約3万6000人の来場が報告された。国内外の大手からスタートアップ、異業種まで多数の来場者が訪れる健康・美容・ウェルネス分野の国内最大級BtoB展示会。ここで行われた出展社セミナーの一部を取り上げる。
白鳥製薬(株)郷間 宏 氏
ここ数年美容業界で高い注目を集めている成分の一つである「CICA(シカ)」。その正体である植物「ツボクサ」が、今美容のみならず「健康寿命の延伸」を支える素材として大きな注目を集めているという。2000年以上前から「奇跡の薬草」と称されてきたこの植物に一体どのような力が秘められているのか。白鳥製薬(株)はツボクサとして初の機能性表示食品の届出の受理を達成。ツボクサの歴史、成分、そして最新の臨床データからツボクサの可能性について報告が行われた。
2000年以上の歴史ある植物「ツボクサ」
ツボクサ(学名:Centella asiatica)は、セリ科に属する多年生植物である。アジア、オーストラリア、アフリカなどの熱帯・亜熱帯地域に広く分布し、日本でも関東以西の道端で目にすることができる。一見するとどこにでもある雑草のように思えるが、その歴史は極めて深く、食用や薬用などで多くの人々に長く利用されてきた背景がある。インドの伝統医学アーユルヴェーダや、中国最古の薬物学書『神農本草経』においてもツボクサは古くから重用されてきたことが記されている。特に中国では「奇跡の薬草」と呼ばれ、不老不死の妙薬に近い扱いを受けてきたことが知られている。現代では韓国発のスキンケア「CICA」として日本でもあらゆる世代で再評価されているが、人類との関わりは紀元前にまで遡る。
日本におけるツボクサ流行の火付け役は、間違いなく韓国コスメだ。1970年に韓国で発売された傷軟膏「マデカソル」にツボクサ成分が配合されていたことが始まりとなり、2015年頃から「シカケア」という名称で化粧品が展開され始め、肌荒れの鎮静効果などを目的にシートマスクや美容クリームの成分として活用されている。「シカ(CICA)」という名前の由来には諸説あるが、最も有力なのはフランス語で傷跡の修復を意味する「Cicatrization(シカトリゼーション)」で、かつてフランスで販売されていた傷跡ケア製品をルーツに、韓国で独自の進化を遂げ、現在の世界的ブームへと繋がったと考えられる。
ツボクサ特異的な成分「センテロシド」
ツボクサが他の植物と一線を画す理由は、その「成分」にある。代表的な機能性成分として、以下の4つが挙げられる。その4つとは「アシアチン酸」「アシアチコシド」「マデカシン酸」「マデカッソシド」で、これらは総称して「センテロシド」と呼ばれる。興味深いのは、なぜツボクサだけにこれらの成分が含まれるのかという点だ。植物の進化系統を辿ると、ツボクサは恐竜が絶滅に瀕していた白亜紀末期(約6500万〜7000万年前)に、他のセリ科植物から分岐したことが分かっている。この極めて早い段階での分岐により、ツボクサは他の植物が持たない独自の合成酵素を保持し続け、現代にその特殊な成分を伝えていると考えられている。他の植物エキスとの比較においても、ツボクサの優位性は際立っている。例えば、アロエやマリーゴールドも抗炎症作用で知られるが、それらの多くは肌の表面(表皮)の改善に留まる。対してツボクサは、肌の深層部である「真皮」に存在する繊維芽細胞に直接作用する。これにより、コラーゲンの合成を劇的に促進させるのだ。この「真皮へのアプローチ」こそが、単なる保湿を超えたアンチエイジングや、修復が難しいとされるストレッチマーク(肉割れ)の改善に効果を発揮する理由だと解説。
抗老化成分としての期待、「筋肉維持」への効果も確認
ツボクサのポテンシャルは肌の修復だけに留まらない。最新の研究では、高齢者の身体機能維持、特に「下肢筋力の維持」に対する有効性が明らかになってきた。
白鳥製薬で実施された臨床試験(RCT)によれば、ツボクサエキスを摂取したグループ(65歳の男女に250mg/dayを3ヶ月間摂取)は、30秒間で何度椅子から立ち上がれるかを測定するテストにおいて、非摂取群と比較して明らかな有意差を示し、筋肉の断面を解析したモデル試験でも、萎縮した筋繊維が回復し、筋重量や握力が向上するデータが得られている、と報告。一方で「6分間歩行テスト」では有意な差が見られなかった。しかしこれには理由があると説明。歩行には筋力だけでなく、バランス感覚や神経伝達の協調が必要だ。今回の結果において、逆にツボクサがまず「筋肉の維持」という身体機能の根幹に寄与することを示唆しているのではないか、と説明。加齢に伴って活動・栄養の不良から筋肉量が減少し、身体機能が低下するサルコペニアが知られているが、ツボクサの摂取によって筋力の維持に貢献できる可能性があるというのは新たな知見だ。そのメカニズムについてはまだ解明されていない部分も多いとのことだが、マウスを用いた解析では、その詳細な働きが明らかになっている。筋萎縮モデルにおいて、アシアチン酸の投与によりスカスカだった筋肉の断面が回復し、筋重量や握力が向上。また同じくマウスであるが、ツボクサの摂取により炎症性サイトカインが減少し、筋肉の分解に関わる遺伝子の発現が抑制されたという。同時に、細胞のエネルギー源であるミトコンドリアの変性を防ぎ、細胞死(アポトーシス)を抑制する働きも確認されている。これらの作用により、高齢者の身体機能低下の主因であるサルコペニア(加齢性筋肉減少症)の要因を多角的に抑え込んでいると考えられる、と説明。
認知機能へのアプローチやストレスに対する不安の改善作用も
さらにツボクサの成分は「血液脳関門」を通過できるという希少な特性を持つ。これにより、脳内での抗酸化・抗炎症作用を発揮し、認知機能の改善に寄与することが多くの論文で報告されている。臨床試験では、健康な65歳以上の男女にツボクサ500mg/dayを2日間摂取してもらったところ、認知機能の選択反応時間、ワーキングメモリ、言語認知機能が、プラセボ群と比較して有意に改善することが確認され、また、1ヶ月、2ヶ月、と摂取を続けるほど、その有意さは大きくなったことが報告された。さらに成人男女に1000mg/dayを2ヶ月摂取してもらったところ、ストレス・不安・うつ・適応障害・注意散漫といった症状が有意に改善したことも確認されたと報告。ツボクサは、美容はもちろん、筋肉、そして脳、メンタルと多岐に渡りエビデンスを持つ素材といえよう。 安全性においては古くから食経験が豊富であり、適正な摂取量において高い安全性が確保されていることは言うまでもない。もちろん機能性表示を取得するために安全性の確認はさらに厳格に行われ担保されている。ツボクサは、今後単なる「流行のコスメ成分」という枠を超え、筋肉の維持や認知機能のサポートといった、超高齢社会における健康課題を解決する鍵としての期待がかかる注目成分といえるのではないか、とまとめた。

