日本で依然、死亡原因のトップに立つがん。その一次予防や治療の際に機能性食品、サプリメントの効能が期待されている。現代医療の最前線でがん治療に取り組んできたメディカルスクエア赤坂院長の小渋雅亮氏にがん治療における機能性食品、サプリメントの役割をうかがった。
小澁 雅亮(こしぶ まさあき)
<略歴>
昭和5年生まれ。28年千葉医科大学(現千葉 大学医学部)卒業。36年(財)中山がん研究所所 長、千葉大学第2外科講師に就任。37年(財)日本 がん知識普及協会を設立。43年赤坂病院を開設。 現在日本外科学会、日本消化器病学会・日本胸部 外科学会、日本臨床外科学会などの会員。メディカルスクエア 赤坂院長、(財)日本がん知識普及協会会長。医学博士。主な著書「知っておきたいガンの知識」 「知っておきたいガンの予防食」「大丈夫ですかあなたの健康」など。
サプリメントはがん治療の三種の神器に続く重要なもの
メディカルスクエア赤坂
院長 小澁 雅亮 氏
— 先生のがん治療への取り組みの経緯と治療における理念をお聞かせください
小澁:私は昭和28年に大学を卒業し、がんの外科医になろうと決意しました。その頃、日本は結核王国といわれるような状況で、私の仲間は全て、胸部外科へ進み、胸部外科医にあらざれば外科医にあらずともいわれていました。
当時、大学に中山先生という食道がん手術の権威がいらして、がんという治らないものを何とか治そうといった中山先生の熱意が講義の端々から伝わり、感銘受けたものです。がん治療はこれから切り開いていかなければいけない新しい分野で、勉強のしがいもあるだろうと私は思いました。
がん治療についていうと、がんは転移・再発します。中山先生はそれがなければ治るはずとおっしゃっていいました。それで、それなら治る時期と治らない時期とあるだろう、と私は考えました。治る時期になんとかすれば治るのではないか、というのが私の最初のポリシーでした。ところが、当時、実際にやってみるとみんなダメで、中山先生からはアフターケアーが悪いと指摘を受けたものです。
— 具体的にがん患者さんにどのように接していますか
小澁:患者に知らしむべからず、寄らしむべしという言葉がありますが、それが外科医としての鉄則でした。 私は古いタイプの医者で、患者さんにあなたはがんだからもう死ぬぞとは言えません。もともとがんを教えないのが普通ですが、私は治る状態の患者さんにはあなたはがんだと伝えます。ですが、もうちょっと遅れると再発する、治らないなと思う人には教えないというのが私の接し方です。治る自信がある時は、本当の事を積極的に教えます。
今は、これまで治らないといわれていた患者さんでも手術でがん細胞数を減らし、抗がん剤を使い、サプリメントを使ったりで、治る確率が高くなっています。ですから、手術をしましょうと説明をしています。がん治療の三種の神器である手術、抗がん剤、放射線療法、次にサプリメントということでやっています。
自分は治ると確信する患者さんの治りは良いが、精神論だけでもダメ
小澁:患者さんとの信頼関係もありますが、自分は治るんだ、がんなんかで死ぬものかと思っている患者さんはやはり治りが良いようです。ですが、ただ精神論だけではだめです。 病気はというのは全て自然治癒です。自然治癒には二通りあります。積極的自然治癒と消極的自然治癒です。
がんで言いますと、積極的自然治癒というのはがんが出来た時に切り取ることです。消極的自然治癒というのは抗がん剤や放射線、そしてサプリメントを用いたりすることです。 サプリメントについては、がん治療の三種の神器の後に来る非常に重要なもので、これから脚光を浴びてくると思います。
— 機能性食品に期待することは
サプリメントはできる限り天然物に近いものが望ましい
小澁:大学の医学部で学生に教えられるような学問として体系づけられることです。 サプリメントについては天然物を合成したものであったとしても、できる限り天然物に近いものができるような研究体制が望ましいです。機能性食品ということではなく、学会で医者が議論するような、薬、がん治療薬としての将来に期待しています。
最近の雑誌をみるとキノコも同じ物を長く使っていると効かなくなると書いてあるものもあります。 私は、米ぬかアラビノキシランはキノコとは絶対違うものだと思っています。ゴーナム先生にこれは食品だと言ったら笑われました。アメリカではアンチキャンサーメディスンとして知られていて、食品だなんて誰も思っていないということです。
— がんはサプリメント単独でも十分とお考えですか
小澁:いえ、がんは大敵ですから、まず手術をしてがん細胞数を減らし、血管の中に入っている可能性もあれば抗がん剤を静脈の中に入れ、リンパ腺に残っているものは放射線で消します。そして、最後にサプリメントということではなく、同時に併せてサプリメントを摂らないとダメだと私は思っています。
— 予防医療についてはどのようにお考えですか
機能性食品、サプリメントの効能を生理学者や臨床解剖学者がともに研究していけば将来はすごく明るい
小澁:がんであれば転移しないうちに、治る時期にみつけること。早期発見が大事です。 予防医療ということで言いますと、トマトやにんじんやキノコを食べるとか、日頃から機能性食品を摂ることが一次予防になります。私もキノコを盛んに食べています。がんにならないようにするために、機能性食品をたくさん食べるといいです。
がんというのは、まずイニシエーターとプロモーターがあって、イニシエーターは仕掛け人で、がん遺伝子 を目覚めさせますが、それだけではがんにはなりません。それにプロモーターという促進する物質が来て、はじめて発がんします。
がんの一生はセミの一生にも例えられます。セミはある夏の朝、パッと地上に出てきて、10日とか2週間で死んでしまいます。がんも同じで、ずっと潜んでいて臨床医が気がつかない間にどんどん大きくなって、気がついた時にはもう手がつけられないような状態になっています。重量でいうと1g、がん細胞数でいうと10億個くらいになると、レントゲンや内視鏡でみてがんの疑いのある大きさになります。
今は、医療機器が進歩していて、PETという検査機器では1ミリくらいのがんも判るといいます。 がん細胞数で10億個というと、大きさは7ミリぐらいです。ふつう、免疫だけで治すというのはだいたいがん細胞数が 2千万個くらいでケシ粒大のところです。それくらいでしたら、自分のもっている免疫力に機能性食品といわれるもの、サプリメントを 足せばがん細胞を殺すことができる可能性があります。そうしたことを、がんの生理学者、臨床解剖学者と一緒になって勉強していけば将来はすごく明るいと思います。