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2013.11.11微生物との合理的な共存が健康作りのカギ

(財)日本食品分析センター 常任顧問 斉藤 実 氏

戦後、日本人は生活の向上(クオリティ・オブ・ライフ)を求め、特に食品においては”美味しさ”を追求してきた。近年、食品全般に”味覚 ”に力点をおいた加工処理をほどこしてきたが、ここ数年、高齢化社会の到来、健康志向の高まりに伴い、加えて“ 質 ”を重視する傾向が強まっている。日本人の戦後からの「食の変遷」と長寿体質を作ってきた発酵食品にかかわる微生物の役割など(財)日本食品分析センターの斎藤 実常任顧問にうかがった。

斎藤 実(さいとう みのる)

(財)日本食品分析センター 常任顧問

微生物との合理的な共存が健康作りのカギ

(財)日本食品分析センター
常任顧問 斎藤 実 氏

— 戦後からの日本の食文化の流れをお聞かせください

斎藤:1945年に太平洋戦争が終わり、食生活に直接関係する食品加工業も、この当時にゼロからの出発をしたといえます。日本人の食生活について栄養学的な視点でとらえ、栄養状態の根本的な改善をはかるようになりました。その後日本の食文化は今日まで幾多の変遷をたどりますが、年代別にこうした区分けができるかと思います。

まず、1950年代は日本の食料事情が貧しく、どんなものでも口にしましたが、その後インスタント食品が登場し、食を「口で味わう」時代が到来しました。そして、次第に食品香料の産業基盤も充実し、「鼻でとらえる」時代へと移っていきました。1970年頃までの20年間はそうした変遷をたどります。

そして1975年ころから、日本は高度経済成長へと向かいますが、これに即して、市場には多くの食品が氾濫するようになります。この時期は食品を視覚でとらえた「目で食べる」時代といっていいかもしれません。この頃から食品添加物の使用や食品汚染などの影響による食べ物の安全性についても注視されるようになりました。 さらに1980年代に入ると、科学的加工法による食品の製造により、食品を「頭で食べる」時代へと移り、栄養成分の種類や量まで考えるようになりました。そして現在では飽食の時代を反映してか、低糖、低脂、低カロリー食品に関心が集まっています。

斎藤:食べ物は一面において、我々の欲望を満たすものでありますが、それらの評価には多くの要因が伴います。本来、価値ある食品の姿というのは産地や加工処理、外観や嗜好、さらに経済性および商品性などによっての評価ではなく、食べ物の基本に根ざした”質 ”の程度によって判断されるものであろうと思います。
安全性を基調に、栄養に関連する常在成分の種類と量の保全の度合、加えて衛生的な配慮の程度によって真の食品の価値をとらえることができると思います。

— 現代はまさに食品の機能性、安全性など”食品の質”が問われる時代に突入したともいえますが

最近では食べ物の多くが見栄えよく包装され、店頭を飾っています。今日の豊かな食生活は、これらの包装食品によって支えられていますが、多くの場合、消費者はこうした見かけで食品を選択しがちです。ですが、その食べ物が身体にとって充分に安全であるとはいえません。食べ物を視覚的、経済的ポイントで評価すべきではないと思います。健康な身体は健全な栄養食品によって培われるものであり、健全な精神を持ち続けることへもつながります。

— 食品の機能性、栄養補助食品の役割についてはいかがですか

斎藤:厚生省で健康維持のために、30品目の食材を摂ることを薦めていますが、どういう成分がどれほどあるか消費者にはわかりずらいのではと思います。健康な身体を維持するために、日本人が伝統的に摂ってきた穀類、あわ、ひえ、きびといった五穀や納豆などがよろしいかと思います。こうした食材は健康作りに欠かせないものといえます。

といっても、一方で私たちには生活の質をあげていこうという欲求が常にあります。食べ物においてもしかりです。常に“美味しい”ものを食べたいという欲求があります。それで、美味しさ、口あたりのよさの追求に走りがちです。そうなると、そこでどうしても食品加工上、栄養面で欠落するものがでてきます。その欠落した栄養素を補う食品が必要になってきます。米国ではそうした栄養素を補う食品をニュートラシューティカルズといった呼び方をします。

また日本は本格的な高齢化社会を迎えつつありますが、高齢者にとっては食事の絶対量が足りないということもあり、そうしたもので十分な栄養素を補う必要があるといえます。

— 食品と医薬品との役割分担については

斎藤:目的によって使い分ければよろしいかと思います。医薬品は単一成分を抽出したもので、ごく微量で用を成します。食品はというと、膨大な栄養成分を含み、有用な微生物と共存し、我々の身体を健康体へと導いてくれます。O-157以来、抗菌ということばがよく使われるようになり、消費者は菌に過剰反応しがちで、除菌思想が強くなっていますが、どんな食品にでも、あるいは人間の身体にも真菌やバクテリアのような常存菌がいて、人類はこうしたものと長い間共存してしてきました。
日本人の長寿体質を作ってきた味噌や納豆などの発酵食品は微生物が作り出した賜物といえますが、健康作りのためにこうした微生物といかに合理的に共存してくかということを我々は考える必要があると思います。

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