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2013.11.11食品の機能及びその役割と意義

(社)日本栄養士会 理事長 花村 満豊 氏

本来、食品には自然治癒力を高め、健康の維持・増進を行なうさまざまな機能性がある。近年こうした食品の働きが注目され、平成5年には食品の機能性が商品に表示された「特定保健用食品」も登場している。健康管理のために、また糖尿病などの生活習慣病予防のために重要な役割を担う機能性食品の役割と意義について(社)日本栄養士会の花村 満豊理事長にうかがった。

花村 満豊(はなむら みつとよ)

(社)日本栄養士会理事長

食品の機能及びその役割と意義

(社)日本栄養士会理事長
花村 満豊 氏

— 食品の三次機能(体調調節)について、お聞かせください

花村: ご存じのように、食品にはさまざまな栄養成分が含まれており、健康維持など、生体にいろいろな働きかけを行なっています。食品の機能については、食品の栄養素による生命維持の機能(一次機能)、また食品の成分が生体感覚に訴える機能(二次機能)、さらに体調調節を行なう機能(三次機能)があります。
これまで、食品の栄養(一次機能)、味覚(二次機能)機能については、十分解明され、認識されていますが、近年、食品の持つ生体防御、体調リズム調節、疾病予防及び回復といった三次機能に光が当たっています。

こうした食品の三次機能の解明は健康を維持・増進していくうえで重要で、今後さまざまな食品が、この三次機能を考慮した上で作られていくものと思われます。
特に、近年糖尿病やがんなど生活習慣病といわれる疾病が増え、医療費の増大が深刻化していますが、こうした疾病の予防のため、日頃から三次機能を有する食品の摂取は重要なことになるかと思います。

— 三次機能を持つ食品の定義は

花村: 機能性食品の定義についていわれていることは、「食品成分のもつ生体防御、体調リズム調節、疾病の防止と回復等に係わる体調調節機能を、生体に対して十分に発現できるように設計し、加工された食品であること」というものです。
現在、厚生労働省が認可している「特定保健用食品」は、日常的に食品として用いられる素材で、形態も摂取方法についてもふだん摂っている食品と同様なものを示しています。

厚生労働省は平成3年度に機能性が認められる食品に対して「特定保健用食品」と呼称し、表示申請を制度化しました。こうした背景には、近年科学的知見に基づいた保健効果をうたう食品の流通が盛んになってきたということがあります。
このような食品を「特定保健用食品」として位置付け、国民が健康管理のために適正な選択が行なえ、かつ栄養改善に役立てたいとしてこうした措置がとられました。

— 昨今、食品による健康管理で生活習慣病の予防が叫ばれるようになりましたが

花村: さまざまな疾病に対して薬剤が治療・改善の役割を果たしていますが、そうした疾病に対して日頃から予防のために食品の持つ栄養価を考慮し、食生活に取り入れていくことが大切です。食品の持つ機能性は食品に含まれる栄養成分がその一つの目安になりますが、今年の4月より食品の栄養成分表示が義務付けられるようになりました。
これはここ数年、店頭で売られている食品で栄養成分を表示したものが増えてきましたが、表示方法が各企業ともさまざまであるといったことや、表示の内容があいまいだったりということがあって、これを是正するために平成7年に栄養改善法が一部改正され、「栄養表示基準」制度が誕生しました。

これにより、たんぱく質、脂質、炭水化物、無機質、ビタミン、熱量の表示が義務付けられることとなりましたが、栄養成分を多く含む、あるいは少なく含むといったことを強調する表示については、それぞれ定められた数値以上の含有量であることが求められるといった規定があります。例えば、カルシウムについて「多い」、「強化」といった表示を行なう場合、100g当たり180mg以上含有されていないとダメと規定しています。
また、「低」、「ひかえめ」、「カット」といった表示についても、熱量が100g当たり40kcal以下でなければ表示できません。こうした表示は食事による健康管理のための一つの目安になりますが、日頃から意識して食習慣に上手に取り入れていくことが大切です。

また、厚生労働省では4月以降、病者用食品の表示に対しても積極的に取り組んでいます。これまでにも低ナトリウム食品など基準を満たした一部の食品に対しては、病者用の表示が認められていましたが、1)糖尿病や腎臓病などの食事療法で用いられる食品で、期待できる効果の根拠が医学・栄養学的に明らかにされている、2)食品又はその成分の安全性が認められている-などの条件を満たせば、病者用の表示を認める方針を固めました。

— 食品(機能性食品)の摂取により疾病予防が期待できるというわけですね

花村: 昨年の4月からビタミンの一部が食品扱いになりましたが、日本では効果・効能を全て薬剤の範疇でとらえるところがあります。食品の栄養成分による疾病の改善ということもありうるわけですから、こうした「食薬区分」についての見直しも早急になされるべきだと思います。
例えば、「滋養、強壮」と銘打った薬剤が販売されていますが、これらは本来食事による栄養の問題であり、食品に関わる問題です。今後、ビタミンだけでなくミネラル類なども栄養士が取り扱えるようにすべきだと思います。機能性が認められている食品を上手に利用し、栄養状態の改善に努め、疾病予防に役立てるようでありたいと思います。

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