2019年2月27日(木)、日本OTC医薬品協会で、「機能性食品表示のこれまでとこれから」をテーマに、薬業健康食品研究会「平成30年度 機能性食品勉強会」が開催された。この中から、鶴岡利市氏(薬事法ドットコム マネージングディレクター)の講演「届出の現場で実際に何が起こっているのか!?~様々な事例とその対応、今後へ」を取り上げる。
訴求力や差別化で「機能性表示取得」が必須
機能性表示食品制度がスタートし丸三年が経過しようとしている。振り返ると「健食関連企業にとって夢のような制度のスタートであったが、その一方で苦労の多い3年であった」と鶴岡氏は総括した。
そして4年目を迎えるにあたり、今までになかった新たなヘルスクレームに挑戦しようとする企業や、すでに市場で人気の高い商品を機能性表示食品にアップデートしようとする企業も増えている。
どの企業も、訴求力があり差別化できる広告を打つために「機能性表示取得」が必須だと考えるようになっている、と鶴岡氏。
薬事法ドットコムでもこの3年間で豊富な経験と実績を積み重ねてきた。実際に、10商品の「日本初」の機能性表示食品をプロデュースできたという。
RCT(ランダム化比較試験)を重視
また制度がスタートした当初は、SR(システマティックレビュー:臨床試験は行わず、論文評価・文献調査で機能性表示を取得する)がメインで、今でも割合的にはSRの方が多い。
しかし、薬事法ドットコムでは費用がかかってもRCT(ランダム化比較試験:臨床試験を行い、機能性表示を取得する)を目指すようアドバイスしたケースも多く、その実績も積み重ねているという。
というのも、この3年に制度そのものがアップデートされているからだ。しかも「効果効能」を打ち出すための「ロジック」や「エビデンス」よりも「政策決定」が優先されることが多くなっている。
「健康増進法」などを見据えると、SRを使い回すより、RCTを行った方が確実に突破できるようなケースが増えている。
「健康維持増進を超える」ものに差し戻し
この1年の「差し戻し案件」については、例えば「GABA」に関しては、「寝つきの改善」や「寝つきの向上」を消費者庁は認めていた。しかし、昨年5月、「健康維持増進を超える」として差し戻している(他の成分でも同じヘルスクレームであれば同様)。
これは、厚労省から「睡眠導入剤の領域を侵している」という指摘があったからだと推測されている。
しかし現在は「睡眠の質の向上」というヘルスクレームでの受理事例があり、消費者庁サイドとしては厚労省からの指摘も無視はしないが、企業からの届出を即撤回することなく、見直すことで折り合いをつけているようだ。
同様に、昨年11月に「歩行能力の改善」について撤回要請を行ったケースがあったが、撤回している事例もあればそうでない事例もある。
「歩行能力の維持」で、打ち出している企業については呼び出しは行っていない、という現状もある。
これについても薬事法ドットコムの独自調査によると、某医薬品メーカーが厚労省に「歩行能力の改善は医薬品的効果であり薬機法違反と指摘したことが発端だと推測されている。そのため「歩行能力の維持」であれば問題ないのではないか、という。
消費者庁、より専門的な差し戻し
他にも、「アフリカンマンゴノキ抽出物エキス」「イチョウ葉エキス」「乳酸菌の死菌」についても呼び出しや差し戻しの事例があった。
最近は消費者庁も、より専門的な差し戻しを行ったり、原料そのものや、SRの論文の中身についてまで指摘するようになってきているのがここ1年ほどの傾向だ。
これは3年前のSRをそのまま使い回しているケースに多く見られる。SRを使いたいとしても、新たに再構築して最新のものにアップデートする必要があると言い換えられる。
消費者庁も制度をブラッシュアップし、厚労省・多数の消費者団体などから不備指摘されないようにしなければ、制度そのものが尻すぼみになってしまうことも考えられるため、真剣に行っている。
3年前に比べ、「受理」に至るまでにはどうしたら良いかをアドバイスし、チェックもきめ細かくより徹底している。
企業から「機能性表示を取得しても商品が売れない」といったネガティブな声があると、消費者庁にもデメリットとなる。
そのため、消費者庁としても企業に寄り添いながら、制度をブラッシュアップしたいのではないか、と鶴岡氏。
諦めなければ糸口は必ず見つかる
機能性表示を取得したからといって、確かにそれが売り上げを保証するものにはならない。しかし、この3年を振り返ると、「新規のヘルスクレーム」または「新成分」であれば必ずヒットしている。
また、例えば薬事法ドットコムでも協力した「プラズマローゲン」は、3年の期間と7回の差し戻しを経ての受理だったが、やはり「諦めなければ糸口は必ず見つかり突破できる」と感じているという。
特に「健康増進法」を考慮したヘルスクレームになっているか考え直し、SRを作り直す、さらに思い切ってRCTに舵を切ると突破できることが多いという。諦めずに引き続き受理を目指し、業界全体で制度を育てていきたいとした。