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2024.6.24最新の栄養疫学研究から読み解く日本人の食生活日本人の食事と食習慣〜現状と動向

2024年6月20日(木)、ビューローベリタスエフイーエージー(株)主催、食品科学新聞社共催によるオンラインにてセミナー「日本人の食事と食習慣〜現状と動向」が開催された。ここでは多角的視点から日本人の食生活を考えることをテーマにした東京大学大学院 医学系研究科 社会予防疫学分野 助手の篠崎 奈々氏による「最新の栄養疫学研究から読み解く日本人の食生活」を取り上げる。

東京大学大学院 医学系研究科 社会予防疫学分野 助手 篠崎 奈々

世界195カ国を対象とした「食事リスクの健康影響」の研究によれば、全死亡リスクの22%が食事因子によるもので、食事が健康に与える影響は喫煙のリスクより大きいという。食事による影響で特に重大な課題は「ナトリウムが多いこと」と「全粒穀物と果物が少ないこと」が挙げられている。食事の仕方や内容が死亡や慢性疾患のリスクになることは明白で、「健康的な食事」は人類の課題だ、と篠崎氏。

このような研究を行うに際し、いくつかの食事調査法を用いて調査する必要がある。食事調査には自己申告によるものや化学的分析によるものがあるが、大規模な調査になるほど「食事思い出し法」や「食事記録法」のような記憶に基づく調査が用いられるという。最近は記録アプリが用いられることもあるが、アプリでどれくらい正確に食事内容を調べられるかを2020年に国内で調査したところ、アプリによって摂取カロリー等の推定値の差が大きく、正確とは言えないものもあったと指摘。また1日のエネルギー摂取量も一人の人間で大きく異なる(日間変動)ため、日間変動を取り除くためには、長期間の複数調査をするのが望ましい、と話す。

日本における食事調査に「国民健康・栄養調査」がある。健康増進法に基づき毎年11月に実施されるものだ。この調査も完璧ではなく、調査期間は1日、調査単位は個人でなく「世帯」であるため、この調査から個人の習慣的摂取量を把握するのは難しい。これとは別に「日本人の習慣的食事摂取量の調査」というものがあり、この調査では32都道府県に住む1〜79歳の日本人4450人を対象に2016年〜2020年の各季節に2日間ずつ、28種類の栄養PDFとの摂取量を日本人の食事摂取基準と比較する調査を行った、と解説。

この調査で分かったことは日本人集団における習慣的摂取量は、ほとんどの栄養素において不適切で、多量栄養素(タンパク質、食物繊維、飽和脂肪酸など)と微量栄養素(ビタミンA、C、B1、B12、カルシウム、鉄、カリウムなど)については、すべての年齢層・性において摂取不足の割合が高かったという。また、参加者の29〜88%がカルシウムの摂取不足で、89%がナトリウムの過剰摂取であること、不適切な栄養摂取が特に若年成人と青年で顕著だったことなどを報告。特に、飽和脂肪酸については参加者の21%が目標量の上限値を超えていたが、現時点で飽和脂肪酸の健康への影響について世界的に結論が出ていないそうだ。また、現在の飽和脂肪酸の目標量は、日本人集団の摂取量の中央値に基づいて設定されているものだという。食物繊維は、先行研究と比較して摂取不足が少なかったが、これは食物繊維の摂取量が増えたのではなく、日本食品表示成分表の改訂による可能性が影響している可能性が高く、これからも継続的モニタリングが必要だとした。カルシウムは日本だけでなく、米国や中国でも摂取不足で、本研究でも性別や年齢に関係なく参加者の29~88%がカルシウム摂取不足と結論づけられたという。日本人は牛乳から最も多くカルシウムを摂っているが、日本人の成人の牛乳の摂取量は米国人と比べてかなり少ない。ナトリウムの過剰摂取はかなり多く、WHOの推奨量(5g /日)のほぼ2倍で、日本人は醤油などの調味料から多く摂っていることがわかっていると説明。

近年、世界では「超加工食品と健康に関する研究と政策」が広がりはじめているという。超加工食品の定義は明確に定められていないが「大部分または全部が食品由来の物質と添加物から作られた調合食品であり、そのままの第一群食品はほとんど含まれていない食品」とされ、「清涼飲料・包装された菓子やスナック・肉加工品・冷凍調理食品」などが含まれる。現在、西ヨーロッパを除く全地域で超加工食品の売り上げが伸びていて、研究によれば「超加工食品の摂取量が多いほど、食事の栄養学的な質が低いこと」が示唆されているという。また「超加工食品の大量摂取は、過体重や肥満、心血管疾患や脳血管疾患、メタボリックシンドローム、うつ病、死亡率の潜在的な危険因子になること」や「ブラジルやカナダ、ニュージーランド、イスラエルなど複数の国で、超加工食品の摂取量を減らすことが推奨」されているという。とはいえ、超加工食品の中にはシリアルなど重要な栄養素の摂取源になっているものもあり、また利便性が高く有益性を否定できない食品であることから、個人が未加工あるいは最小限の加工の食品を意識して増やすしかない、と指摘。 また、食事を「食習慣」まで広げて考えると、日本人は西ヨーロッパ10カ国の人々と比べて、「朝食」と「夕食」からエネルギーの摂取量が多く「間食」からのエネルギー摂取が少ないことや、3食の欠食が少なく間食の回数も少ない、など、良い食習慣といえるポイントがあると解説。食事の内容だけでなく、取り方や食べ方も「日本食」の一部であり、栄養素だけに固執することなく、全体を捉える、というのが最新のトレンドだという。日本人の食事の質は特別高いわけではないが、食事を食習慣や摂取方法など全体として捉え包括的に質を上げていくことが望ましいのではないか、とまとめた。

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