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2025.2.25日本栄養・食糧学会関東支部 第27回健康栄養シンポジウム「フレイル対策で拓く 健やかな未来」日本栄養・食糧学会関東支部 第27回健康栄養シンポジウム「フレイル対策で拓く 健やかな未来」

2025年2月15日(土)、オンラインにて第27回健康栄養シンポジウム「フレイル対策で拓く 健やかな未来」が開催された。日本人の超高齢化が進むなかで近年提唱された新たな概念である「フレイル」を理解し、産官学民連携のまちづくりの中でフレイル予防やフレイル対策を具体的に実践していくことが求められている。ここでは東京都健康長寿医療センター研究所 本川 佳子氏の「高齢期の栄養と口腔機能の関わり」を取り上げる。

「高齢期の栄養と口腔機能の関わり」
東京都健康長寿医療センター研究所 本川 佳子

オーラルフレイルとは、ここ数年よく聞かれるようになっている言葉であるが「口腔機能の低下により食事や会話に支障をきたす状態」を指している。口腔機能が低下すると栄養摂取まで不十分になり、結果として全身の健康に悪影響を及ぼすことも知られるようになっている。特に高齢者にとっては、自立した生活を維持するためにオーラルフレイルを予防すること、つまり口腔管理が重要となることがさまざまなところで訴求されるようになっている。

そもそも口の機能である咀嚼や嚥下は食事を摂取する際に重要な役割を果たす。従って口腔機能の低下は直接的に栄養状態に影響を与える。令和3年頃から「リハビリと栄養」だけでなく「口腔管理」が自立支援やフレイルの重度化予防において不可欠であるという認識が活発になり、医師・歯科・管理栄養士・歯科衛生士・リハビリ専門職などさまざまな専門家による連携も求められている。

フレイルとは、加齢に伴う心身の機能低下が進行する状態であり、放置すると要介護状態になってしまう。日本の高齢者において「プレフレイル」の割合は40.8%、「フレイル」の割合は8.7%と報告されているが、プレフレイルの状態であれば「健康」の状態に戻すことは十分可能で、積極的に介入や予防することが求められている。近年は高齢者の肥満か痩せ、特に低栄養の傾向にある人ほどフレイルリスクが高いこともわかっている。新たな食事栄養摂取基準では65歳以上の高齢者は、摂取エネルギーの15〜20%をタンパク質に充てるべきとされている。これは高齢期において蛋白同化抵抗性(若年者に比べて高齢者では筋タンパク質の合成反応(同化反応)が減弱することが示されており)が起こりやすいため、タンパク質を不足させないことによってフレイルが予防できると考えられている。

さらに近年の研究では、タンパク質だけでなくビタミンD、ビタミンE、ビタミンC、葉酸などの栄養素もフレイル予防に重要なことがわかってきており、食品摂取の多様性が高い人ほど健康度が高く、フレイル度が低いことが明らかになっているという。一人暮らしの高齢者などは食品摂取の多様性が失われがちだが、例えば、目玉焼きにベーコンやソーセージを追加する、コーヒーに牛乳を加えるなどの「ちょい足し」をするだけでも、食品摂取の多様性スコアを上げることができる、と本川氏。また、買い物に行きにくいエリアに居住している人や、近隣にスーパーがない人は、保存性の高い食品や冷凍野菜、缶詰の利用も効果的だという。何より、食品摂取の多様性が少ない人ほど、咀嚼機能が低い傾向にあることもわかってきており、咀嚼回数が低い傾向にある人は、魚介類や肉類、緑黄色野菜の摂取量が少なく、穀類に頼った食生活をしていることがわかってきているという。咀嚼機能の低下は全身のサルコペニアとも関連しているという。

オーラルフレイルの評価は、残存歯数、咀嚼能力、舌圧、滑舌、食事の困難さ、むせやすさなどの指標によって行われてきたが、この指標は専門家の介入が必要なものだった。しかし2024年春からは、5つの問診だけで客観的に自己評価ができるようになっている。具体的には「自分の歯が何本あるか(20本以上か以下か)」「半年前と比べて固いものが食べにくいかどうか」「お茶や汁物等でむせることがあるか」「口の渇きが気になるか」「普段の会話で言葉をはっきりと発音できないことがあるか」という5つのチェックで2つ以上当てはまるとオーラルフレイルの可能性があると考えて良いという。 もし該当する場合は、適正な体重やBMI値、体脂肪を維持するだけでなく、舌圧、咀嚼、滑舌などのトレーニングを加え、さらに、多様性のある食品摂取を意識することそのものがオーラルフレイルの予防に役立つという。また、入れ歯を使用する際などに、栄養指導や口腔指導を加えることもフレイル度を抑えることに役立つという。また、食生活の改善は達成感が感じられにくいという課題がある。「今日はお肉を食べた」「魚を食べた」「ブロッコリーを食べた」と多様性をクリアしても、それが即時的な変化には繋がらない。そのため、食品摂取の多様性をモニタリングできるアプリなどを利用することで、日々のモチベーションを高めることなども加えてほしい、と話した。

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