2019年4月17日~19日、東京ビッグサイトにて「第22回 ファベックス展」が開催された。同展示会セミナーより、川合裕之氏(㈱ラベルバンク 代表取締役)の講演「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント」を取り上げる。
表示の実務において気をつけること
新年度の部署移動で初めて「食品表示実務」に取り組む人も少なくない。実務経験が長い担当者でも思いがけないミスをしがち、と川合氏。
表示の実務において大切なポイントは大きく3つ。「商品の名称を正しく理解し、名称が変わったら規則が変わることを知る」「強調表示をする時ほど、不当表示に気をつける」「表示方法だけでなく、実際の商品との整合性に注意する」。
この3つを踏まえた上で、「規則に則った表示がされ、表示と実際の商品が正確に対応」していれば「正しい表示」ということになる。
しかし実際は、表示と実際の商品が対応していないケースが多い。例えば、「ドレッシング」というのは食用植物油脂が含まれる調味料のことである。
しかし、「ノンオイル」を謳い、指定された食用植物油が使用されていないものは「ノンオイルドレッシング」ではなく「ドレッシング風調味料」という名称になる。
商品に「ノンオイルドレッシング」と書くことは可能だが、食品表示にそれを記載するとミスになる。
アレルギー表示、強調表示には十分な注意を
また商品の「名称」によって製造・原材料が定義され、必要な表示項目や禁止表示の規則が大きく異なる。そのため、まずは販売する商品の名称を正しく定義することが大切である。
名称と商品名が異なる例の代表として「ノンオイルドレッシング」の他に、一般的に「マヨネーズ」と呼ばれている商品の多くも実は「サラダクリーミードレッシング」という名称である。これらは「表示と実際の商品が対応していない」ケースとなる。
他にも「天然」「無添加」「低カロリー」「○○不使用」といったような表記をする場合は、それが本当に商品と一致しているか、正確に確認する必要がある。
最近は糖質制限ブームで「砂糖不使用」「小麦粉不使用」といった表示も増えているが、製造過程で「砂糖不使用」だからといって、原材料に砂糖が含まれていないことを意味するわけではない。
「小麦不使用」だからといって「小麦アレルゲンフリー」ということでもない。そのため、特にアレルギー表示の対象が関与する場合は、これらの強調表示に十分な注意を払う必要がある。
もし、食品表示でミスをしてしまった場合、どのような損失が起こるのか、それについても事前に理解しておくべきである。
例えば、主原料以外の記載順序の間違いや栄養成分の強調表示があるにも関わらず栄養表示値が記載されていないといった単純な表記のミスであれば、「表示内容の修正」で済む。
パッケージを変えることになるので、数千万円規模の出費になるかもしれない。が、起こりうる損失としては一番リカバーできるところ、と河合氏。
「詐欺」と思われるケース
一方、「ノンオイル」の表記がありながらも脂質の基準値を満たしていないといったミスの場合、商品特徴を削除するか、商品のレシピを変えるか、何れにせよ販売計画を根底から変えることになり、大掛かりな損失となる。
また「名称」の不一致や変更などによって、使用基準を超えた添加物量が含まれているといった確認ミスを起こしたまま販売した場合は、販売が不可になり、自主回収を迫られる。
そして最も避けたいミスが「〇〇産」と強調しながら異なる産地の原料を使用していた場合や、「健康に良い」といった曖昧な表記をして合理的根拠がない場合、措置命令や報道、謝罪広告といった対応に追い込まれるパターンだ。
これは消費者にとって「ミス」ではなく「詐欺」と思われるケースもあり、大きく信頼を失い、損失も大きい。
また、アレルギー表示のミスをして健康被害を出してしまった場合も、なかなかリカバーが難しい。
消費者は、「原料原産地表示」に強い関心
このように表示ミスによって生じる損失をあらかじめ想定しておくと、強調表示によるミスとアレルギー表示によるミスだけは絶対に避けるべきであることが社内で共有できるのではないか。
また、食品表示の中でも、消費者は原材料や含有材料の配合量より、「原料原産地表示」に強い関心を持っている。そのため、ここも正しい表示を心がけてほしい、と河合氏。
チェックポイントとしては、対象原材料が適切であるか、対象原材料が本当に○○産・○○製造と表示できるか、表示の根拠が合理的かどうか、を必ず確認すべきだという。
根拠資料については農水省のホームページでも詳しいマニュアルを確認できるようになっている。それを確認し「原料原産地表示」においても「表示と実際の商品が対応しているかどうか」を正確に確認してほしいとまとめた。