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2022.8.30炎症による老化の抑制におやつの活用~国際おやつ(OYATSU)研究会セミナー

2022年8月30日(火)、web配信により国際おやつ(OYATSU)研究会「第15回OYATSUで考える炎症抑制と健康長寿」が開催された。この中から、丸山光生氏(国立長寿医療研究センター研究所 ジェロサイエンス研究所センターセンター長)の講演を取り上げる。

20世紀前半、医薬として食を考える研究は急速に衰退


私たちは急速な高齢化社会を生きている。アンチエイジングやアンチエイジングの科学についてはここ数十年で格段に研究が進んでいるように感じるが、実は老化の研究は人類の歴史とともにある。

例えば、神話と科学、植物と癒し、食物と医薬などの考えは古代より研究されていた。19世紀から現代にかけ、確かに人間の寿命は急速に伸びている。

それでも人類の歴史を振り返れば、人間の寿命は50年とされていた時代の方が圧倒的に長い。

老化の研究や老化から逃れるためにしてきた知恵は昔からあり、医食同源という考えもずっと存在していた。ところが20世紀前半に医薬として食を考える研究は急速に衰退してしまった、と丸山氏。

我々人間は、生まれてから死ぬまで「食べる」「食べたい」という「食べる力」によって生きることができる。

食べたいと思わなくなったらそれは「生きる力」の欠如であり、しかも食料が豊になった現代では「ただ食べる」ではなく「正しく食べる」ことを意識しなければ健康を維持できないというところまで来ている。

2005年、5年毎に改訂の「食育基本法」スタート

日本では2005年から5年ごとに改訂される「食育基本法」がスタートした。そこでは「食事バランスガイド」という健康な食生活を実現するためのそれぞれの栄養素の摂取目安や摂り方が一眼で理解できる指針も公開されている。

現在公開されている第4次食育基本法やバランスガイドでは健康推進のための食育だけでなく、社会・文化・環境、といったSDGsの観点とも連携する指針が策定・公開されている。

この最新版を踏まえても、その内容、つまり健康的な食生活とは紀元前1000年前から言われていることとほとんど変わっていないのではないか、と丸山氏は指摘。

ただし、食事バランスガイドの最新版にはこれまで考えられてこなかった「シニア世代のバランスガイド」が新たに加わり、主食と主菜部分の比重が少し異なり、食べることと同じくらいに運動が重要であることや、水分摂取量にも意識を向けることなど、成人とは若干異なる指針が追加されている。

また、このバランスガイドには日本初文化とされる「おやつ」についても触れられている。健康な食生活がコマであるなら、おやつはそれを回す紐で、いわゆる「楽しみ」であるだけでなく「補食」や「食べ過ぎ防止」のためにも必要不可欠と考えられるようになっている、と丸山氏。

ストレス緩和におやつの果たす役割

おやつが日本ではじまったのは江戸時代とされるが、現代はおやつが大量生産される時代である。おやつに何を選び、どのように食べるかを研究することは老化の研究と並行する、と丸山氏。しかもシニア世代にとって、おやつは他者との「コミュニケーション」の役割も担う大切ツールである。

世界的な基準で見れば、日本人は肥満を含む太り過ぎの割合は少なく、運動についても不足傾向ではなく、平均より少し多い部類に入る。

ただし糖尿病の有病率は低めだが「低い部類」ではないなど、食事・運動のいずれにおいてもまだまだ改善の余地がある。

この改善点におやつを上手に介入させることが良いのではないか、と丸山氏は提案。しかも健康寿命の延伸や老化の制御には「環境(ストレス)」が関与する部分が大きく、ストレス緩和にもおやつが果たす役割は大きい。

健康寿命の延伸、国の課題の一つ


健康寿命の延伸が国の課題の一つになっているが、日本人の百寿者の97%は何らかの病気を持っており、それでも各自病気と上手に付き合いながら生活を楽しんでいるということも近年わかっている。

特に、加齢とともに起こるさまざまな老化現象の一つで、健康寿命に大きく関わるものに「免疫力の低下」があるが、免疫力を維持するにも「規則正しい生活習慣」「十分な急速と睡眠」「適度な緊張感」「自分の免疫に自信を持つ」という4つの鍵があり、この4つは健康寿命を高めることと一致している。

病気はかかる人とかからない人がいるが、老化は誰にも避けられる減少で、老化そのものを予防したり治療することはまだまだ難しい。

しかしそのスピードを緩やかにすることや正しく介入することは可能であり、老化は「楽しめる」時代に突入しはじめている。

老化の抑制効果がある食品成分

食品の機能性研究も格段に進んでいる。老化の抑制効果がある2つの食品成分の最新研究について報告。

一つ目が「水溶性大豆イソフラボン」。マウス試験で、大豆イソフラボンには自然加齢マウスの腸内細菌叢を変化させ、加齢に伴うAkkermansia muciniphila菌(アッカーマンシア菌:2004年に発見された優れた腸内の善玉菌)の減少を抑制させる効果が見られた。

また腸内環境が整うことで、加齢に伴い増加するさまざまな炎症系サイトカインの発現を抑制する作用も見られ、老化抑制に水溶性大豆イソフラボンは有効であることが示唆された。

また2つ目が「KW乳酸菌」。こちらもマウスでの試験や研究だが、加齢に伴うダメージの産物である活性酸素、脂肪酸、コレステロールなどによる慢性的な炎症反応が長期の摂取で抑制されることが示唆され、特にマウスでは目の老化に対するKW乳酸菌の効果検証が行われている。

おやつで機能性成分を上手に摂る

こうした機能性成分を上手に摂ることにおやつを関連させることは意義があるのではないか、と丸山氏。

近年の老化研究では、健康長寿を実現するために必要な要素として、中でも「健康行動」「人間関係」「高い幸せ感」「ポジティブ思考」は欠かせない要素である。

おやつも含め「美味しいものを食べたい」「美味しいものを食べる」という欲求と行動を上手に満たすことは「健康行動」「人間関係」「高い幸せ感」「ポジティブ思考」の根幹となる。

またいくつになっても「正しい食生活」「適度な運動」「適度な休息」を介入させることで、体は良い方に変わるため、どのタイミングからでも基本を大切にし続けることが重要だ、とまとめた。

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