2020年7月17日(金)、ウェルネスライフジャパンによるOYATSUオンラインシンポジウム「テレワークで需要の拡大が予想されるOYATSU市場 ~ニューノーマル時代の味と香りの最新情報~」が開催された。この中から、矢澤 一良氏(早稲田大学 ナノ・ライフ創新研究機構 規範科学総合研究所)による講演「美味しく・楽しく・機能性を付与した機能性OYATSUのこれから」を取り上げる。
近年、高カロリー・低栄養に
慢性的な栄養素不足は、フレイル(虚弱)の連鎖、フレイルスパイラルを引き起こす原因となることがわかっている。
栄養不足や低栄養は低カロリーだけでなく高カロリーでも栄養素バランスが悪いと起こる。そのため、近年の日本では、「高カロリーの低栄養」状態によるフレイルも問題となっている。
フレイルは高齢者だけでなく、若年者であっても起こりうる。高齢者の場合、筋力の低下(フレイル)→基礎代謝低下→疲労感の増加→社会的フレイル→活動量の低下→食欲の低下→慢性的な低栄養といった流れでフレイルの連鎖が起こりやすい。
若年層ではステイホームによる社会的フレイルがきっかけで、フレイルスパイラルが起こるケースがあると矢澤氏。
コロナ禍によるステイホームで自宅で食事をする人が増えているが、食事内容だけでなく、「食事の速さ・時間・食べる順番」などにも気を配ることがフレイル予防には必要という。
例えば、朝食の欠食は肥満の原因になることがわかっている。また食事の時間が早い、つまり「早食い」も、そうでない人と比較して肥満度が上がることがわかっている。
食べるタイミングについては「時計遺伝子」の研究が進み、脂肪を合成する遺伝子が夜に活性が進むため晩ご飯・夕ご飯の内容は考えるべきだ、ということもわかってきている。
機能性おやつ、食育への新たな提言
おやつ(間食)については、よくないものというイメージを持っている人も多いが、近年の研究では、上手に間食を取り入れている人の方が「血糖値スパイク」を起こしにくいことがわかってきている。
食べる順番についても、野菜などの食物繊維や豆類などのタンパク質を最初に摂取した方が、全く同じ内容の食事であっても、血糖値の上昇が抑制されることもわかっている。
こうした、さまざまな食に関する研究が進む中で、矢澤氏らは「機能性おやつ」を食育への新たな提言とし、その普及に取り組んでいる。
平成17年度に厚労省が発表した「食事バランスガイド」にも「おやつ」は掲載され、菓子・嗜好飲料は生活の中で「必要な楽しみ」としてとらえられ、食事全体の中で適度に摂る必要がある、コマを回すひものようなもの、と位置付けられた。
機能性おやつ、世界にOYATSUとして広めたい
食事には栄養機能である「一次機能」、感覚機能である「2次機能」、そして生体を調整する「三次機能」がある。「美味しく食べる、楽しく食べる」といった「二次機能」であり「五感栄養」は心、身にリラクゼーションを与える。結果、体内の免疫や循環器系の血行促進に繋がるため、心身の健康維持にも欠かせない。
そしてこの「二次機能や五感栄養」に特に働きかける食事がまさに「おやつ」なのではないか、と矢澤氏は話す。
海外ではおやつを「ヘルシースナッキング」と表現することもある。これはまさに「機能性おやつ」のイメージで、日本には優れた「機能性おやつ」がたくさんある。これを世界にOYATSUとして広めたい、と矢澤氏は展望を語る。
特に機能性おやつは、子どもにとって大切な補食の役割を担う。成人にとっては生活習慣病を予防するような存在であるべきである。
55.6%がほぼ毎日間食
FCD研究所という機関が行った「1500人に聞く【機能性おやつ】」という調査によると、1500人のうち55.6%がほぼ毎日間食をしていると回答、間食をしている人たちの70%が良いことをしていると回答している。
また間食の効果として「ストレス解消」「リフレッシュと気分転換」「小腹を満たす」などが挙がっている。
しかし、間食に罪悪感を感じている人も61%程いて、「肥満の原因になるのでは」「カロリーの過剰摂取なのでは」という不安を抱いているという。
世代ごとに必要な機能性おやつを選ぶ
いずれにせよ間食の問題点は「機能性おやつ」を選び、正しい食べ方をすれば解消できる、と矢澤氏。そこで「機能性おやつプロジェクト」を推進、具体的には以下のような各世代に応じたおやつを推奨しているという。
- 妊産婦~胎児栄養と母体栄養の補充になるおやつ
- 幼児と児童~脳や体の成長に必要な成分を強化するおやつ
- 子どもたち~部活や塾の効果を上げるおやつ
- 青年~活動的な体と精神をサポートするおやつ
- OL~小腹を満たす美容系おやつ
- 働き盛り、主婦~バランスを考えたメタボ&ロコモ対策おやつ
- 高齢者~生活習慣病認知症予防おやつ
このように、世代ごとに必要な機能性おやつを選ぶこと、またおやつのカロリーを200kcal程度に抑えることなども、正しいおやつの食べ方として周知していきたいとした。
また、おやつを食べるときに紅茶を飲むこともおすすめしたいという。紅茶には歯周病予防効果、脂質の吸収抑制作用、インフルエンザ感染予防(機能性成分テアフラビン)、口臭予防、抗ストレス効果などが確認されていて、おやつとの相性が抜群だと紹介。
これから世界に日本の素晴らしいOYATSUをぜひ広めていきたい、と語った。