2021年1月20日(水)、web配信による「食事健康サミット2020~新しい感染症に負けないための日本型食生活の活用」から、石田裕美氏(女子栄養大学栄養学部教授)の講演「感染症予防と食事」を取り上げる。
コロナで米の需要が減っている
新型コロナウイルスの感染拡大により、さまざまな行動が制限される中、成人は運動不足による体重増加が課題となっている。小・中・高生も部活動などの制限で昼夜逆転の生活になっている傾向が問題視されている。
多くの日本人のライフスタイルの変更が余儀なくされ、それに伴い健康状態も当然大きな影響を受けていると石田氏。
食生活については、昨年は在宅期間があったにも関わらず米の消費量が減少している。2021年の米の需要は693万tと見込まれ、前年よりさらに30万tと大きく減少することが予測されている。
コロナで米の需要が減る背景は、外食や給食での米の消費が減っていることが大きな要因と考えられる。
一方、昨年はホットケーキミックスが前年度約245%、小麦粉約210%、パスタ170%、インスタント麺約158%、と売り上げを伸ばしており、おそらく今年も好調に推移しそうだという。
感染症対策、食事・休養・運動のバランス
感染症に打ち勝つには免疫力に影響する因子を調べ、それをプラスに働かせることが必要である。具体的には栄養バランスの良い食事、十分な休養、ストレス減らし、適度な運動となる。
しかし、コロナによる在宅で、身体の疲れが減っているにもかかわらず、オンライン授業やテレワークで頭だけ、あるいは目だけ疲労し、心配や不安が原因となり不眠も問題になっている。
健康や免疫を維持する上で、過度なストレスをかけない生活は大事であるが、人との交流や外出や会話を伴う食事も禁止され大きなストレスになっている、と石田氏。
コロナによる新生活様式でエネルギー消費量の減少
感染症予防と栄養状態でいえば、ウイルスの侵入に対し、免疫機能が適切に働くことが必要であり、加えて「適正体重」を維持することが大切である。
戦後、日本人のエネルギー摂取量は増加していたが1970年後半からは減少している。しかし、男性において肥満が増え続けている。
現在、日本人男性の肥満は約33%(40代~50代に多い)、女性の肥満者は約20%程度で横ばいだが、エネルギー摂取量が減っているにもかかわらず肥満が増えている。
これは、エネルギー消費量の減少、つまり不活動が問題であり、コロナによる新しい生活様式でもエネルギー消費量の減少はさらに深刻な課題となるだろうと、石田氏。
目標とするBMI値は年齢によって多少異なるが、18.5~24.9と考え、自分が最も活動しやすい体重を見つけておくべきであろう。
自分の適正BMI値を日々、少なくとも週に1~2回は計測し、それを維持する食事を自ら考え実践すること、最も重要な「予防食」のあり方ではないか。
主食・副菜の揃った食事、総死亡リスクが低い
さらに、エネルギーのバランスや摂取量だけでなく、栄養素のバランスも考えるべき、と石田氏。
エネルギーを作り出す栄養素(3大栄養素)のバランスを適正に保ち、ビタミン・ミネラルを過不足なく摂取するには、1日2回以上、できれば3回の「ご飯食」が役立つ。
理想のエネルギーバランスは炭水化物が全体の50~60%、脂質が全体の20~30%、タンパク質が13~20%だが、1960年代と比較すると、穀物エネルギーによる炭水化物の摂取比率が40%を切っている。
2回のご飯をもう一口多めに摂る、あるいは茶碗1杯のご飯を1日3回摂るなどして欲しい、また実際に自分の使用しているお茶碗1杯で何gのご飯が摂れているのかも調べて欲しい、と石田氏。
特に、高齢者は同じものを食べ続けることで栄養素の偏りが起こりやすいが、主食、副菜の揃った食事の回数が多い人ほどエネルギータンパク質や各種ビタミンミネラルの摂取状態も理想的で、総死亡リスクが低い。
さらに循環器疾患、脳血管疾患による死亡リスクが低いという調査結果もあり、筋肉量が多く身体機能が高く、歩行速度低下リスクも有意に抑制されている傾向にある。
感染症予防に、健康維持の栄養的な質が整った食事
また、栄養バランスのとれた食事を健康のためだけではなく「美味しく楽しく食べる」ことが何よりも大事。コロナにより「共に食べる(共食)」や「楽しく食べる」ことが損なわれつつあり、ここをどう乗り越えていくか考えていくべき、と石田氏。
感染症予防の食事とは、健康を維持できる栄養的な質が整っている食事、継続的に無理なく実践できる食事であり、それについて一人ひとり考えてほしいとまとめた。