特定非営利活動法人日本食品機能研究会は、2007年7月29日(日)に、東京・丸ビルホールで「健康フォーラム2007」を開催しました。今回のフォーラムは、同研究会が昨年内閣府からNPO法人としての認証を得てから最初のビッグイベントで、「食による免疫力向上とアンチエイジング」をテーマに、各分野の第一線で活躍する4人の講師を招聘しました。当日は医療関係者と一般聴講者を合わせて約400名の参加があり、成功裏に終了しました。
「抗炎症とアンチエイジング―炎症を抑えれば老化は防げる」遠藤雄三氏(浜松医科大学講師・医学博士)
遠藤雄三氏は、アンチエイジングに重要な炎症抑制について講演。
人体の加齢現象の基本的な要因である①長期にわたる微弱活性酸素障害と②グリケーション糖化(ブドウ糖によるタンパク質の糖化)の要因は食べ物と機能性食品の選び方によって食い止めることができるはず、としました。
とくに、微弱性酸素障害の主たる要因である慢性炎症に伴う老化現象に関し、活性酸素は生体内のさまざまな分子に反応して分子構造を破壊する力があり、たとえばDNAが活性酸素によって障害され続けると遺伝子異常を引き起こしてがんの発生にかかわり、慢性炎症が発がん促進因子といえる、と解説しました。
食べ物によるからだのリフォームと適切な機能性食品の選び方が重要
血管内で弱い慢性炎症が起こり続けると、血管内皮細胞の炎症が局所に血栓を引き起こしたり、動脈硬化を促進して、虚血性心疾患、脳血管障害や深部静脈血栓症を引き起こすことになろうと警告。米ぬかアラビノキシラン誘導体の生体防御作用の動物試験データを引き合いに、抗炎症によるアンチエイジングのためには、食べ物によるからだのリフォームと適切な機能性食品の選び方が重要であると結論付けました。
「健康長寿の秘訣―腸内細菌と機能性食品」
光岡知足氏(東京大学名誉教授・農学博士)
光岡知足氏は、健康長寿に係る腸内細菌や機能性食品について講演。
腸内フローラの構成は腸内代謝に反映して、宿主の栄養、薬効、生理機能、老化、発がん、免疫、感染などに極めて大きな影響を及ぼすとし、腸内に有用菌優勢有害菌劣勢のフローラバランスを維持することは、疾病予防、健康維持・増進につながると解説しました。
腸内有害菌によって生成される腐敗産物、細菌毒素、発がん物質、二次胆汁酸などの有害物質は、腸内自体に直接障害を与えるとともに、一部は吸収されて、長い間には肝、膵、心、腎、脳、生殖器など各種臓器に障害を与え、発がん、動脈硬化、高血圧、肝臓障害、自己免疫病、免疫能の低下など、生活習慣病の原因となっている可能性が高いとしました。
腸内フローラのバランスは、がんや生活習慣病予防、体調調節に極めて重要
また、そうした発見がきっかけとなって、腸内フローラのバランスを制御することが、がんを含む生活習慣病の予防をはじめ、体調調節に極めて重要であることが明らかになり、この機構を利用した機能性食品が次つぎと開発されるようになった、と、機能性食品への期待を寄せました。
機能性食品については、その作用機構から、プロバイオティクス、プレバイオティクス、バイオジェニックスの三つに分類して解説しました。
光岡氏は、健康長寿を全うするには、まず食生活が基本であり、各人の体質・健康状態に合わせて何を、どれだけ、どのように摂ったらよいかを知った上で、機能性食品を適正に選び、利用することが大切である、と強調しました。
「健康診断義務化時代の未病のがん対策とは」
福生吉裕氏((財)博慈会老人病研究所所長・医学博士)
福生吉裕氏は、がんの未病対策について講演。
2008年4月から実施される健康診断の義務化に伴い、これは代表的な未病であるメタボリックシンドロームにターゲットを絞った感があり、逆にC型肝炎や大腸検査が手薄になり、がんの早期発見が見逃されるのではないかと懸念。未病のがんの対策について解説しました。
丸山ワクチンの成分であるアラビノマンナン(アラビノース+マンノース)は、結核菌から抽出した多糖類であり、これはアラビノキシラン(アラビノース+キシロース)同様に免疫活性が強いことを強調。
一方、がんが自覚症状が出るまで成長するには、通常細胞内レベルでの異常が生じてから10年から20年はかかり、この時期にがんを発見し抑制することが重要で、自覚症状が出る移転がんでは手遅れのケースが多いとしました。
未病のがん対策として、遺伝子に障害を与える、ウイルス、カビ、たばこ、発がん物質を含んだ食物等のイニシエーションと、その傷口を広げる、たばこ、食塩、脂肪酸、フリーラディカル、変性酸化物質、最終糖化産物(AGE)等のプロモーションといった日常生活で頻繁に接触しているものからいかに身を守るかが大切であると強調しました。
「免疫力向上における機能性食品の評価―25年にわたる私の研究の評価」
マンドゥ・ゴーナム氏(UCLA/Drew医科大学教授・理学博士)
マンドゥ・ゴーナム氏は、免疫力向上に関与する機能性食品および評価について講演。
加齢による免疫不全の結果は、感染症、がん、及び自己免疫病の増加として現われ、免疫不全は明らかに多因子問題であり、上記の疾患には免疫力の喪失が大きく関与しているという現実から、25年間にわたり様々な生活反応修飾物質(BRM)の免疫増強能を検討し、明らかになった作用機序を披露しました。
研究の結果、いくつかのBRMが免疫賦活作用を示すことが判明したが、それらは毒性や作用持続時間が異なっていたため、研究の対象を毒性のない機能性食品に変更。
結果、米ぬかアラビノキシラン誘導体について次のような評価が得られた。①ヒトのNK活性を1~2週間で増強させ、反応性の低下は見られなかった、②T細胞とB細胞の増殖を高め、IFN―γの産生を増大、③がん細胞のアポトーシスを誘導、以上のことから、ゴーナム氏は、毒性を示さず長期的に免疫増強作用を及ぼす理想的なBRMが、加齢プロセスの逆行や減速のためにぜひとも必要である、と結論付けました。