胎児の神経管障害や発育に関与。米国では穀類製品に添加・強化を義務付け
葉酸(ビタミンB群)は、緑葉野菜、オレンジなどの果物、豆類などに多く含まれます。 胎児の発育や神経管障害に関わる栄養素で、米国では国を上げて摂取を奨励しています。
米国で葉酸摂取の重要性が一般に知られるようになったのは1970年代。妊娠適齢期あるいは妊娠中の女性で葉酸が欠乏すると、胎児の発達が阻害され、脊椎披裂(spina bifida)を始めとする神経管障害(NTD)が引き起こされる可能性が明らかになりました。
胎児の中枢神経組織の発達は妊娠1ヶ月内に進み、その間に起こる何らかの障害によってNTDが生じるため、専門家らは「妊娠初期、あるいは妊娠前から女性は葉酸を摂取するべき」と主張。葉酸を1日400マイクログラム摂ることでNTDの50~70%は防げるとし、米政府は葉酸摂取を奨励し、1998年1月以降はパン類、小麦粉、パスタなど全ての穀類製品に葉酸を添加・強化することを義務付けました。
その後、トロント大学の研究グループが、葉酸の食品添加 キャンペーンの開始(1997年)前後で、神経芽細胞腫の発生率を調べたところ、キャン ペーン開始前に神経芽細胞腫発生率が10000出産あたり1.57件だったのに対し、 開始後では10000あたり0.62件に減少していることが判りました(Clinical Pharmacology & Therapeutics’03/9月号)。
また、ハーバード大学の研究者グループが8万人以上を対象にした「看護婦調査」で、葉酸を 多量に、少なくとも15年間摂った被験者は、結腸がんに罹る危険性が75%減少 したという報告もあります。
この他、ニューオリンズの研究グループが、 1971年から1975年の間に1万人を対象に行った栄養調査で、食事から葉酸を最 も多く摂取したグループは葉酸の摂取が少ないグループに比べ卒中発作を起こ す危険性が21%少ないことが判ったと報告しています。
また、体内で重要な働きを行うアミノ酸の一種、ホモシステインが増えると心臓や血管に障害を与えることが様々な研究で明らかになっていますが、葉酸やB6、B12が ホモシステイン濃度の低下に役立つことが報告されています。