尿路感染症の防止で注目の果実。ヨーロッパを中心に、民間療法で使用
クランベリーはベリー(小さな食用果実)の仲間で、ビルベリーと同属です。主に北米の湿地地帯に育ち、小さなピンクの花を咲かせ、6月から7月にかけて赤黒い実をつけます。クランベリーの実の88%は水分で、食物繊維が豊富。また、フラボノイド、カテキン、ビタミンCなどを含みます。
クランベリーは、ヨーロッパを中心に、血液浄化とともに腎臓結石や膀胱結石を防ぐ果実として知られ、民間療法として用られてきた歴史があります。本格的な研究は1840年代で、ドイツの研究者がクランベリーをよく食べる人の尿には馬尿酸と呼ばれる物資が含まれていることを発見し、尿路感染との関連性に着目したのが始まりといわれています。
現在でも尿路感染症を再発した患者への対応など、膀胱のバクテリア感染の防止に、クランベリーが役立つとされています。
米国では、尿路感染症患者はかなりの数を占め、年間で5千万人以上が治療を受けているといわれます。特に女性は罹りやすく20%が少なくとも一度は罹ったことがあり、そのうちの80%が再発に苦しめられているといわれます。
原因は大腸菌が、尿道の壁の細胞内膜に粘着し感染を引き起こすためで、これまでの研究で、クランベリーに大腸菌の細胞内膜への粘着を防ぐ働きがあることが報告されています。
ハーバード大学が、平均年齢79歳の女性で、尿路感染症を再発している153人を対象に、グループの半数に毎日クランベリージュース300mlを6ヶ月間与え、残りの半数にクランベリージュースを含まない同色の飲み物を与えたところ、クランベリージュース・グループでは別のグループに比べ、感染を引き起こす割合が58%少なかったと報告しています。
他にも、The Journal of the American Medical Association誌’02/6月19日号に掲載された記事によると、ニュージャージー州立大学とミシガン大学の研究グループが、クランベリージュース240mlを与える前後に健康体被験者から尿サンプルを採取したところ、ジュースを与える前は、大腸菌が細胞に付着していたが、ジュースを与えた後では、抗生物質に耐性のある大腸菌の尿道細胞への付着を79%防いだことが分かったと報告しています。
この他、クランベリージュースには「善玉」コレステロール値の向上に役立つという研究報告もあります(Canadian Cardiovascular Society学会)。Laval大学研究グループが、18歳から70歳までの少々太りすぎの男性で、LDL(「悪玉」コレステロール)値が高いが薬剤治療を受けていない30人を対象に、クランベリージュースカクテルを12週間与えたところ、HDL(「善玉」コレステロール)値が8%上昇したことが分かったといいます。