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2024.2.5プレシジョン栄養学と精神栄養学〜こころを健やかにするムードフード〜第5回 ヘルスフードアカデミックサロン

2024年2月19日(月)〜3月4日(月)オンラインにて、食品開発展プレゼンフォートナイト2024冬が開催された。ここでは(一財)生産開発科学研究所による「アスタキサンチンその研究史、自然界での機能、注目される生理活性」を取り上げる。

有限会社健康栄養評価センター 代表取締役 柿野賢一

健康日本21では「こころの健康」についても触れている。それによれば、こころの健康とはいきいきと自分らしく生きるための重要な条件であり、個人の生活の質に多大な影響を与えるものだ。そしてこころの健康状態には、個人の資質や能力・身体の状態・社会や経済状況、住居や職場の環境・対人関係など実に多くの要因が関係しており、さらにこころの健康状態と体の健康状態は非常に密接に関連していることもわかっている。最近は、心理的なストレスを抱えていると感染症になりやすいことや、心臓病にかかりやすい性格や行動パターンがあることもわかっている。こころの健康を保つには「適度な運動・食事・栄養・休養(十分な睡眠)」は不可欠で、またある程度はストレスとも上手に付き合う必要がある。心身の健康を維持する上で、食事や栄養は大切なファクターであるが「何を摂取したら良い」、という短絡的な話もできない、と柿野氏。

超高齢化社会を迎えた日本では、平均寿命と健康寿命の乖離をなくすことが喫緊の課題とされる。健康状態が急激に下降するタイミングは一般的に定年後の65歳〜75歳あたりで、この年代で健康寿命が終わっていくことが多いことから、この年代の心身への影響や介入を考える必要があると考えられている。特に、定年後に起こりうる心身の変化として最も注視しなければならいのが「心のフレイル」だと柿野氏は指摘。

フレイルに統一した評価基準はないが、一般的な指標として用いられる「Friedのフレイル評価」によれば、「主観的疲労感」というのが掲げられている。定年を迎えたあたりから感じやすくなる「疲労感」「やる気の低下」といった主観的な変化は、フレイルが起こりはじめている可能性の指針になりうるかもしれないという。いずれにせよ最新の研究では、高齢者の健康余命について、生活習慣病よりもフレイルが関与していることが明らかとしている。メタボや生活習慣病予防も重要ではあるが、まずは定年前後から起こり始めるフレイル予防の方が大事で、特に65歳〜74歳という前期高齢者の期間にフレイル予防することで健康寿命をより長く保てるのではないかと話した。実際、前期高齢者の期間にフレイルの中でもこころのフレイルが進行してしまうと、鬱や認知症発症のリスクが高まるという。しかも「健康」のフェーズから「フレイル」に移行する入り口は「こころのフレイル」であることが多い。これは定年を迎え人との関わりが減少し、外出の機会が減ることが関係していると考えられている。実際、コロナの間にフレイルが早まったとか、週一回以下の外出では物忘れが増えるといったデータも紹介。とはいえこの時期のフレイルは可逆域で、「健康」のフェーズに戻ることは十分可能だ。この「フレイルの入り口」でなんらかの介入を行い「健康」のフェーズに戻すためにも「ムードフード」という選択肢が有効ではないかと説明。 そもそも食品にはこころの健康に有効に作用する成分が多数存在することが知られているが、不安や緊張を和らげたり睡眠の質を高めたりする効果が期待できる成分を含有する食品を「ムードフード」という。人気のある機能性表示食品の「ムードフード」の主なものとして「疲労感の軽減」「睡眠サポート」などがあるが、他にもフレイル対策になるものとして「オーラルケア系」「歩行・筋肉の維持系」「認知機能系」などがある。フレイルの初期を判定する指標に「主観的疲労」があるが、一時的な体調のネガティブな変化の改善をサポートするものとしてこれらの機能性表示食品を活用するのは有効ではないか?と柿野氏。実際、ムードフードのニーズは高まっていて、機能性表示食品の開始3年目には46商品であったが、6年目には139件、9年目には560件(全7000件)と機能性表示食品全体の中で「ムードフード」の割合が伸びているという。ムードフードで機能性表示食品の届出にチャレンジする場合は、何よりも学会や複数の研究者による学術論文や日本人においての妥当性が得られることが必要である、と柿野氏。またムードフードの届出における課題としては、主要アウトカムが一つに絞れないケースが多いことと指摘。ムードフードの社会的ニーズは高く、また、機能性表示としても独自性を持たせやすく、競合と差別化を図りやすいというメリットもある。だからこそできる限り主要アウトカムを絞り、エビデンスを明確にし、また自覚症状による判定の場合は特に確固たるSR(システマティックレビュー)やエビデンスを用いることで「科学的根拠不十分・撤回」とならないように準備する必要があるだろう、と話した。

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