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2023.8.3大豆が拓く持続可能な未来USSECサステナビリティシンポジウム2023

2023年6月28日(水)、食のサステナビリティに対する社会的な関心が高まる中、プラントベースの食材として大豆に注目が集まっている。伝統的な大豆製品に加え、大豆肉や大豆乳など、日本の大豆文化の多様性や価値観についても世界的な関心が寄せられている。ここでは世界大豆機能研究会 栄養科学・研究ディレクターのマーク・メシーナ博士による特別講演「すべての年齢層の人々に有益な大豆食品」を取り上げる。

すべての年齢層の人々に有益な大豆食品 世界大豆機能研究会 栄養科学・研究ディレクター マーク・メシーナ博士

大豆食品はすべての年齢層にとって有益であることがわかってきている、とマーク博士。まず大豆の栄養素についてであるが、他の豆類と比較しても脂質が多く含まれていることやタンパク質が豊富であることが大きなアドバンテージであると説明。他の豆類と異なり、大豆や大豆製品だけで必要なタンパク質や脂質を摂取することが可能で、これはまさに、2050年までに世界人口が100億人を突破し深刻な食糧不足が起こることが予測されているが、この問題への解決の糸口になるのではないかと話す。そもそも大豆は他の豆類に比べ生産量が多く(約4倍)、タンパク質・脂質、中でも必須脂肪酸が含まれ、カロリー密度が非常に高い食材だ。しかも大豆の生産の過程において特別な飼料は必要なく、持続可能な栽培が可能で、環境負荷が極めて低い地球にやさしいサステナブルな植物であることも特筆すべきだ、とマーク氏。実際、22種類の動物性タンパク質・植物性タンパク質の温室効果ガス排出量を比較すると大豆が最も環境負荷をかけずに効率的にタンパク質を生産できるという。

大豆タンパク質の「質も」非常に高く、アミノ酸スコアは満点に近い100で、体内への吸収率も95%以上と非常に高い。何より大豆にはいくつのも機能性が報告されている。まずは血中コレステロール低下作用だろう。1967年にこの研究成果が報告されて以来、コレステロール低下作用に関する数多くの研究が行われているが、1999年にFDAも正式に「大豆タンパク質が血中コレステロールを低下させる」ことを認め、ヘルスクレームとして活用されるようになっている。コレステロールを低下させる医薬品と比較すれば、大豆のそれは低くなるが、それでも成人のLDLコレステロールを3〜4%下げる効果があることがわかっている。LDLコレステロールが1%低下すれば心臓病のリスクは2%低下するとされるので、決して小さい数字ではないだろう。また大豆タンパク質で筋力が上がることも確認されている。過去15年くらいまではホエイプロテインの方が筋肉作りに適していると考えられてきたが、大豆タンパク質を摂取することでも動物性タンパク質同様に筋力強化が可能だという研究報告が多数でてきており、今すべての高齢者の多い国でサルコペニアが問題になっているが、大豆食品でサルコペニアの発症を遅らせる・予防することができるという見解が強まっている。イソフラボンが豊富であることもメリットだ。日本の高齢者は1日あたり平均30〜40mgのイソフラボンを摂取しているとされるが、米国やヨーロッパでは3〜5mg程度の摂取量しかなく、これは他の先進国と比較して日本では乳がんや前立腺がんの罹患者が低めで抑えられていることと関係していると示唆されていると説明。イソフラボンとは天然に存在する植物性化合物で、大豆以外にも非常に微量であるが含まれているが、大豆には非常に豊富に含まれている。イソフラボンは植物性エストロゲンとされ、ホルモンのエストロゲンとは当然異なるが「皮膚の状態を改善する」「動脈硬化を改善する」「更年期症状を軽減する」「認知機能を改善させる」など、特に高齢者において多くのメリットが報告されている。皮膚のしわやたるみなどのエイジングサインは自然現象といえるが、大豆イソフラボンと皮膚の関係に注目した研究では、日本で8週間の介入試験が行われていて、57人の閉経後の女性を対象に8週間豆乳を摂取させたところ(イソフラボン含有量は40mg)、肌の乾燥・弾力・ざらつき・色素沈着などを優位な改善効果があることが示された。しかし豆乳の摂取を中止して4週間経つとすべての値が元に戻ったという報告があり、継続的な摂取がカギとなっているのではないかと話す。マーク氏が所属する世界大豆栄養研究所でも米国人の閉経後の女性を対象に、6ヶ月の大豆タンパク質摂取介入試験を行なっており、1つのグループは毎日25gの大豆タンパク質(イソフラボン含有量は50mg)、もう一つのグループは25gのカゼイン(牛乳に含まれる乳タンパク)を摂取してもらったところ、現在まだ試験を継続中であるが、大豆に非常に有益な効果があることが示唆されていると話す。おそらくイソフラボンが皮膚や筋肉のコラーゲン合成に関係しているのではないかと話した。 日本や中国など大豆製品を日常的に接種しているアジアの国において、乳がんの発生率はヨーロッパや米国に比べて低く、日本人女性の中で比較しても「週に1回しか大豆製品を摂取していない女性」と「毎日大豆製品を摂取している女性」では「毎日摂取している女性」の方が乳がん発症のリスクが低く、イソフラボンは乳がんのリスク軽減に役立つと結論づけられている。ただし、乳がんのリスクをイソフラボンによって最大限に軽減させるには、人生の非常に早期の段階で大豆を摂取し続ける必要があるということも示唆されているという。もちろん成人以降の摂取に効果がないということではなく、最大の効果を得るために、なるべく早い年齢(10代)から大豆製品を摂取し続ける方が効果的だということだ。大豆製品の摂取について、かつて乳がんとすでに診断された人や治療した人の予後を悪化させる可能性については「あるかもしれない」とされていたが、今はイソフラボンとエストロゲンは全く異なる分子であり、科学的にそのような根拠はないこともわかっている。むしろ乳がん患者や手術をした人にも安全だと結論づけられており、近年は再発を減らす可能性があることも示唆されているという。大豆タンパク質の摂取目標量としては1日15〜25gを目標としてほしいと話す。特に伝統的な大豆加工食品は、古くからある食品であるが現代的な利点を備えているのでぜひ活用すべきだとまとめた。

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