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2019.6.11「超」高齢化社会における健康・医療システムの在り方~薬健研シンポジウム

2019年6月11日(火)、主婦会館プラザエフにて「薬業健康食品研究会 令和元年度シンポジウム」が開催された。この中から、 江崎 禎英氏(厚生労働省医務局 統括調整官 兼 内閣官房健康・医療戦略室 次長)の講演「健康・医療システムの在り方~疾患の性質変化を踏まえて」を取り上げる。

現行の社会保障制度に問題

江崎氏は、私たちは必要以上に「高齢化」を問題視し、とらわれすぎている、と指摘する。

日本は「超」高齢化社会を迎えているが、世界でも「超」高齢化なのが日本、イタリア、ドイツ。

2060年に高齢化率35%を超える日本は、「超々」高齢化社会になると予測されている。

とはいえ、65歳以上の人口は今後横ばいで、高齢化の問題は高齢者の増加より、若年層の減少にあることをまずは理解してほしい、と江崎氏。

また、現在の制度にも問題がある。現行の社会保障制度はバブル経済以前に作られた「19世紀型」のもので、21世紀の今にはマッチしないという。

高齢者の定義、再定義を

しかし、例えば高齢者の定義を65歳ではなく75歳以上、あるいは85歳以上に再定義し直すだけで、高齢者を支える層の割合は増え、現行の制度でも十分まかなえる、と江崎氏。

「70代になっても働くなんて」という声も聞こえてくるが、内閣府の高齢者調査によると、現在、男女ともに80歳近くまでは、大半の高齢者が身体的に健康な状態を維持しているという。

誰もが健康で長生きすることを望み、それが可能になれば、社会は必然的に高齢化する。

かつては栄養不足・飢餓・不衛生・戦争などによる感染症や怪我によって命を落とす人がほとんどであった。しかし、高齢化社会を迎えている先進国では、飢餓や感染症で命を落とす人はほとんどいない、と江崎氏。

高齢者の多くが「尊敬」を望んでいる

疾病の原因は食べ過ぎや偏食、運動不足、ストレス、老化であり、疾患の性質が大きく変わっている。このことを踏まえた治療法や治療薬の開発が必要であろう。

生活習慣病のウエイトが高まる中、予防や進行抑制の医療システムの確立が求められる。具体的には、生活習慣型・老化型の疾病の原因は感染症と異なりマルチファクターである。

治療は完結するものではなく継続性が求められる。病名がついてから治療ではなく、病名がつく前から生活指導を行うといった医療に移行する必要がある。

また、介護についても認識を変える必要がある。これまでは「お年寄りは弱いもの、支えられるべきもの」という認識であったが、これからは高齢者自身が「最後まで自立した生活を営め、尊敬される」存在を目指すべきであろう。

実際、多くの高齢者の「欲しいもの」が「お金」や「健康」より「尊敬」であるという調査結果もある。常に自身の存在意義を確認できるような活動や取り組みがこれからの高齢者に求められる、と江崎氏。

目指すは「ハイブリッド型社会の構築」

そのために、社会は高齢者が積極的に参加したくなるようなサービスを創出する必要がある。60歳以下の人が「高齢者」を支えるだけでなく、60歳以上の人が、より「高齢」の人々を支えるような役割も必要となろう。

これから理想とされるのは「ハイブリッド型社会の構築」。生産年齢を15~64歳、第二の社会活動期を65歳以降とした場合、まずは、生産年齢期については今後「健康意識の普及・浸透」「会社員が健康管理に取り組みやすい環境整備」「社会が健康経営を評価する仕組み」「健康関連サービス付き保険商品の開発」などが必要となる。

そして、第二の社会活動期を迎えた世代(現在の高齢者)は「緩やかな経済活動への参加が可能となる機会の創出」「自立や存在意義のモチベーションが保てるコミュニティの創出」「軽度の認知症でもできる仕事の創出」など「お年寄りを笑顔にすること」が可能な場がもっと多く創出できれば、生涯現役社会の実現は不可能ではない、と江崎氏。

一周目で人生が終わることを前提とした社会システム、経済システムのままでは高齢化はネガティブであろう。

しかし、子育てや誰かを扶養することから解放される二周目の人生こそ、自分と社会のためにすべてのエネルギーを注げる人生の本番だと思って楽しむ思考に個人も社会も変わっていけば、高齢化は極めてポジティブではないだろうか、と江崎氏はまとめた。

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